ひたむきに頑張る人は、理屈抜きに男前!
信州の農業を担う次世代のリーダーとして歩み始めた若者たちのライフスタイルとは!?
志を持って農業に情熱を注ぐ、『若手男前農家』のオンとオフのありのままの姿をシリーズでご紹介します。
"大事なことは覚悟と情熱。
この想いは必ず人に伝わり、かけがえのない出会いとなり、道が広がります。
まずは自分のやりたいことを真剣に考えて。もちろん伝えることも大切ですよ(笑)"
5人目の「男前」は、長野県東部に位置する佐久市横根で、トマト・ズッキーニを生産している坂下理人(さかした・りひと)さん(34歳)。Iターンで神奈川県から長野県佐久市に移住し、就農6年目です。「あれっ、夏野菜農家さん? 今は冬ですけど・・・」とお思いでしょうが、今回は、冬だからこそ! なんです。夏野菜生産者ならではの冬の作業や過ごし方、気になりませんか? さらには信州、そして日本の魅力について盛りだくさんに伺いました。新規就農を目指す皆さんも必見です!
「冬の畑ってどうなってるの?」の疑問にお答えすべく、トマトとズッキーニ畑へ。まずは、長さ50メートル程のトマト栽培用のビニールハウス2棟へ。中はやわらかい土と空がよく見える天井!? いえ、パイプと空です。
「今日は雨で作業ができないけれど、ここに越冬作物のスナップエンドウを植えます。空?・・・ああ、積雪被害対策でシートは外したんです。これでハウスを守らないと」
積雪の重みでハウス倒壊とならないよう、準備万端。スナップエンドウは春先の収穫を目指し、限られた面積の畑で、手間暇かけて収量アップを図る作戦です。
ビニールシートを剥いだトマト畑。冬場はスナップエンドウを育てる
すぐお隣、2.4ヘクタールのズッキー二畑には、何やら萌葱色の草が・・・。
「これはライ麦ですよ。冬場、こうして寒さに強いライ麦を栽培し、春には一緒に畑にすき混んで肥料(緑肥)にします」
堆肥ではなく緑肥。これは土づくりの一環で、もともとの土と微生物とで、害虫の発生を抑えるんだそうです。「余計なものは入れず、何より土のバランスを守ることが大切」とのこと。冬も大事な時、こうして次の年へ繋いでいくんですね。
ライ麦の上に立つ理人さん
でもやっぱり、夏の繁忙期に比べるとグッと時間に余裕のある冬。ほかに何か活動でも? と伺うと、「この時期は勉強会が多いですね。年々回数も増え、40回程のほとんどが冬場に集中しますから。いろいろな生産者同士、技術や経験の切磋琢磨が参考になるし、楽しい」と教えてくれました。
人懐っこい笑顔で、丁寧に説明してくれた坂下さん。冒頭でも触れましたが、実はIターンで、なんとお父様の赴任先ドイツ生まれの神奈川育ち。大学卒業後は、外資系製薬会社へ就職、と完全なる都会っ子でした。好きな仕事とはいえ、営業職のために転勤や残業なども多く、家族と過ごす時間の少ない上司や先輩の姿を見て「何か違うな・・・」と感じるようになったそうです。3年勤めた後に、夢だった世界一周の旅に。
ボリビア アマゾン支流
インド バラナシ
ボリビア ウユニ塩湖
ボリビア アマゾン支流
カリブ海、南米、中東、インド、アラスカなど1年かけて40カ国を巡り、これまでの世界観が変わったそうです。何より、日本の良さも再発見したとか。帰国して一番思ったことは「日本に感謝」。日本人の仕事や人に対する真面目さ、誠実さに触れ、「日本に生まれて良かったなぁ」と実感したそうです。
さらに、何がやりたいのか、どうしたいのかを模索した結果、「自分らしく生きたい」と、自然豊かな地で暮らすために農業を志すようになりました。
ズッキーニを収穫する理人さん。リヒトはドイツ語で光の意味
一文字一文字丁寧に書いてくださいました
山梨県の農業法人で1年、その後、長野県里親制度を利用して佐久市での研修を経て、3年目に佐久市に移住し、有機栽培での就農準備を始めました。
「情報もインフラも少ない中で、新規就農者を支えてくれたキャリアのある先輩方にも感謝です。いい出会いがあって今がある。個性的な(!?)方も多いけど、本当にパイオニアですよ」
また、新規就農者支援組織「信州ぷ組※」の仲間も大切な存在で、「これからは恩返しです。自然の原理と向き合い、仲間と同じビジョンを描くネットワークを主体的につくりたい」と、熱い想いを伝えてくれました。
「信州ぷ組」での勉強会にて
夏期アルバイトの皆さんと
もちろん、当初の苦労は言うに及ばず。それでも妥協せずに工夫・挑戦してきたから今があるのでしょう。
「レールに頼らず、縁と恩と我が道を信じて生きていく」
その名の通り、光(リヒト)の道へ!!
乗り越えたからこその達成感と、今年新たに家族が増えた幸福感、来年に向けての挑戦意欲あふれる男前なのでした。
※信州ぷ組
新規就農者による新規就農者のための相互支援グループ。長野県内で農業を始めたいと真剣に考えている新規就農者のために、新規就農の経験者だからこそできる支援活動を行っている。「信州ぷ組」の「ぷ」はプロジェクトから。
私たち農業者は地球の恩恵をいただいて仕事をしています。一地球市民として、現場で何ができるかを考えながら次世代にバトンタッチしなければなりません。畑を守り、持続可能な農業、次世代がやりたいと思える農業を目指します。
氏 名 | 坂下 理人(さかした・りひと)さん |
---|---|
年 齢 | 34歳 |
血液型 | AB型 |
経 歴 | 神奈川県川崎市出身。大学卒業後、外資系製薬会社へ就職。3年務めた後、夢だった世界一周へ。カリブ海、南米、中東、インド、アラスカなど1年かけて40カ国を巡る。帰国後、「自分らしくありたい」と自然豊かな地で農業を志す。研修時代の縁で佐久市に移住。ご両親も呼んで奥様と子供2人の6人家族 |
生産内容 | ミニトマト20a、ズッキーニ2.4ha |
趣味・特技 | 旅行 |
好きな食べ物 | トマト |
座右の銘 | 感謝 |
必須アイテム | トラクター |
【就農(起農)への道】
1年目は、山梨県の農業法人で研修
↓
長野県里親制度を利用して、佐久市のズッキーニ生産者、ミニトマト生産者のもとで修行
↓
3年目に佐久市で就農
【農地を探す】
農地を探すにあたり着目した点は主に3つ。
(1) 標高700メートル程
(2) 夏秋栽培ができる
(3) 用水が確保できる
トマトの選果機。右上から流れ4種類に分類
【栽培品種を選ぶ】
まずは自分の好きなものを作りたかったというミニトマトの品種は、アイコ・サンチェリーピュア・ピュアスイートミニと豊富。中でも苦労したのはピュアスイートミニ。今ではポットのまま定植する根域制限栽培により、実に栄養を届けることで糖度がアップ。旨味ものっておいしさ満点に。
トマトは、作りやすいことと初期投資費用が抑えられることから、新規就農者向きとも言われる。
管内のJA佐久浅間が、地域の特産品として早くからズッキーニの販売戦略を立てていたこともあり、生産販売の下地が十分にあった。また1日2回の収穫というメリットも。
【坂下さんからのメッセージ】
畑を守り、持続可能な農業、次世代がやりたいと思える農業を目指しています。同志も大歓迎! ちなみに、今年2014年の夏のアルバイトは全員女性でした♪ 細やかで根気のいる作業は、女性に向いているかもしれません。
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