北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。
皆様、明けましておめでとうございます。令和元年はどんな年でしたでしょうか?
私は毎年一年を振り返ると、「何事も無く普通に作物が出来た年」というのは就農してから一度も無かったなと思います。強い霜が来たり、高温が続いたり、害虫の大量発生、長雨、干ばつ、台風etc、、、何かしらの自然災害があり、それを克服しながら収穫をしてきました。なので、異常気象は当たり前の考えのもと「天候が順調にいけば沢山取れてラッキー」な作り方はやめて、異常気象を前提とした「量は少なくなるけど強い作物」の作り方に転換していきたいと思います。
でも自然災害は来ない方がいい!
今年がそれぞれにとって良い年であることを心より祈っております。
年末年始休業も終わり、通常運転をされている方が殆どでしょうか。「一年の計は元旦にあり」と言う言葉があります。しかし農家の場合、元旦に計画を立てていては間に合わないので、作付け計画は状況を見て常に更新していきます。令和2年の麦圃場にはすでに麦まきが完了しているので、12月には水稲の圃場内訳を仮決定して種の手配をします。令和2年は長野県のオリジナル品種のお米「風さやか」の作付面積を増やすことにしました。本当は新しく作りたい品種が沢山あるのですが、管理が恐ろしく煩雑になるので品種を増やすのは断念しました。
現在22haの耕作面積ですが、180枚以上の田んぼがあります。その全てに作物を振り分け、前作も考慮した上で1枚毎肥料設計や農薬設計をしなければならないので頭が痛くなります。自作のエクセルの集計表もアップデートを重ねてだいぶ使いやすくなりました。日々改善。日々改善。
雪が積もった圃場に「今度はここからの風景が最高だな」等と来年の風景に想いを馳せます。そんな飼い主を見てコマ♂は不思議そうな顔。
よく、米農家は冬場何しているの?という質問をされます。これは本当に各農家で様々ですね。冬採れる品目の作付け、といった農家らしい仕事以外に、よく聞くのは酒蔵、スキー場、高速道路の雪搔き、建設作業員、といったところでしょうか。冬はずっと遊んで暮らすという人もいますが(笑)
そして私の家の場合はというと「機械整備」をしています。土地利用型の農家は機械が必需品なので家には沢山の機械があります。これを全て機械メーカーに修理に出したら少なくとも200万円以上取られるでしょう。
この修理代で一番高いのは「技術料」という手間賃なんですよね。この技術料の部分を自分でやるのが我が家のスタイル!
基本的にはメーカーには部品だけ発注して、取り付け交換は自分でやります。これをすると年間のメンテナンス代金を約3分の1以下に抑えることが出来ます。当然素人にはできないものもあるので、そういったところは機械屋さんにお願いしますが。
ちなみに上の写真はコンバインのこき胴(穂から籾を脱穀する部分)の部品なのですが、片減りするので気を付けていないとちぎれてしまいます。なので摩耗したものは冬場に裏返しにしてやると倍の長さ使えるようになります。簡単なことですが数が多いので機械屋さんに頼むと技術料をかなり取られることになるでしょう。
とにかくマニュアルにあるメンテナンス項目は全部見ます。場合によってはメーカー専用の修理マニュアルも見ながら機械修理をしています。
冬場の品目を作るという手もあるのですが、大雪が降るとハウスが潰れる可能性もありますし、冬だけの品目で100万以上の利益を出すのは大変。出稼ぎは自分の家のことが何もできなくなってしまうので避けたい。そうすると必然的に機械メンテナンスをして経費を削減するというのが一番しっくりくるんですよね。昔から機械いじりが好きだったので抵抗もありませんし、何より自分で修理すると壊れそうな場所も分かります。そうするとシーズン中にそこを気にしながら作業をすることが出来るので、壊れる前に気づくことが出来るのです。これが一番大きいメリットと言ってもいいでしょう。壊れてからでは遅いので。
でも最近は農機具もハイテク化してきていて、電気系統の故障は専用のパソコンをUSBで接続して診断しなければ分からないのでお手上げ状態です。最新の機械は難しい"(-""-)"
ところで皆さん年末はどのように過ごしますか?我が家の年越しはしめ飾りを作るところから始まります。 一年の感謝を込めて下手くそでも心を込めて手作りで作るのがポリシーです。
家や作業場の全てに飾るしめ飾りを作るには一日では足りませんが、これも仕事の内。藁はもちろん自家圃場のものを、松や笹も地元のものを使います。
先ずは藁の下準備から。ハカマと呼ばれる外皮を取ってきれいにします。
その後水を吸わせて藁をたたいて加工しやすくします。あとは丁寧に藁を取っては折り、取っては折りの繰り返し。そうするとハイ!「杯」の完成。
ここに松竹梅と米などで飾り付けをするとさらに縁起も見栄えも良くなります。
しめ飾りは歳神様を迎え入れる準備としての意味があります。この歳神様は米と繋がりが深いようです。しめ飾りに藁を多く使うのにも理由があるのでしょうか。稲の花言葉は「神聖」という話もしました。新年の幕開けは神聖な気持ちで福を呼び込みたいものです。
もう一つ我が家の恒例の年末イベントになっているのが親戚ご近所皆揃っての「餅つき」。昔ながらの臼を使ってヨイショー!ヨイショー!!子供からお爺さんまで交代でつきます。最初は親戚だけでやっていましたが、子供のつながりや地域のつながりの中、いつの間にか大所帯になっていました。この日は準備からほろ酔い気分。
ふかしたてのもち米はそのまま食べてもホントに美味い!!!黙って食べさせてたら餅になる前に終わります。
餅つきが終われば子供たちは外で凧揚げなどをして元気よく遊び、おっさん達は薪ストーブの横で熱燗飲みながら深い話をするのです。
我が子達も良い顔してます(^^♪ 思いっきり凧揚げが出来る環境はおとーちゃんがずっと守ってやるからな!
大人は薪ストーブの上で燗をつけながら炙ったするめとお漬物で地域の未来を語るのでした。
そういえば、些細なことですが、令和2年1月1日から親から事業を引き継ぎまして、私が代表として経営していくことになりました。俗に言う「事業承継」というやつです。やることは変わりません。代表として先祖から引き継いだ地域の農地をより良い形で後世に引き継げるように頑張ります。守るもよし、変わるもよし、大事なのは自分で決めたことを正しくする力。家族経営から雇用経営への転換期が迫ってきています。経営者として農業を魅力ある産業にしていきたいです。
今回はおつまみというか分りませんが、酒に合うこと間違いなしのこの一品!
信州と言えば!年越しと言えばこれ!
「信州そば」
写真は年末にいただいた手打ちのもの。31日になると何人ものそば打ち名人が生そばを届けてくれます。今年は4人のそばを食べ比べました。地粉の比率から切り方も違えば粉の挽き方も違う。だけど全部美味しい!!!
薬味はねぎと八幡屋磯五郎の七味。今年は本わさびまでつけてくれました。わさびは少し砂糖を入れると風味が増します。すっているだけで目が痛くなるほど新鮮なわさびでしたが、不思議と辛みは少なく香り高いわさびでした。
静岡から来た姉の旦那も「これを食べたらもう向こうではお金払ってそばは食べられない」という程。そば打ち職人達も年々腕を磨いている様子です。子供も夕飯の後にも関わらずズゾズゾズゾ食べてしまいました。
写真を撮り忘れましたが、最後のそば湯も至福です。なんと幸せな年越しなのでしょう。
年越しでなくとも信州のそばは美味しいですけどね(^^)
最後に豆知識。信州そばを掲げる店は沢山あります。中には海外産の粉を使って機械打ちという店もあります。なんのあてもなく信州でそば屋さんを探そうと思ったら「信州そば切りの店」の認定店を探してみましょう。「信州そば切りの店」はざっくり言うと「そば粉は長野県産のみで、つなぎの割合は30%以下で、そば打ちの全ての工程が手作業で行われている店」です。当然認定店以外にも美味しいお店はありますが、お店探しの一つのフィルターとして絞り込むにはお勧めの制度です。
薬味フェチとしては薬味にこだわっている店が好きですね。皆さんも何度も長野県に足を運んでお気に入りのそば屋を見つけてみてはいかがでしょうか。
いつも長くなってしまいます。今回はこの辺で。それでは皆様今年も宜しくお願い致します。
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