「弐七農園は、農業を通して、ひとびととその暮らしをゆたかにすることを目指します。」
こちら、つい最近決めました、うちの農園の経営理念でございます。
単純すぎる気もいたしますが、これを弐七農園の普遍的で譲れない価値観として、今後歩んでいきたいと思っております。
続きまして、弐七農園の経営ビジョン、つまり目指す理想の農園や社会の姿がこちら。
「弐七農園は、安曇野市三郷小倉のもつ魅力的で多様な価値観をリスペクトしながら、世の中の人が楽しめる農業経営に挑みつづけます。そして園長と家族がいちばん楽しみます。」
突然どうしたのかとお思いかもしれませんが、実は一昨年から25回にわたりお読みいただきました古田然の農事録、今回で最終回と相成りました。
最後にどんなことをお伝えしようかと考えておりましたが、ちょうど農業コンサル百一姓さんのセミナーで、経営理念・ビジョンについて考える機会がございましたので、今後どんなことを目指しているのかをお話しして幕を引こうと思います。
経営開始から2年の間、理念も定めずにやっていたのかと思われてしまうでしょうが、心の中には想いはございました。それを改めてまとめる機会を得たので、これを機に定めてしまい、農事録の最終回に(自分のブログより先に!)公開してしまおうと思ったのでございます。
いつも以上に暑苦しい内容になってしまいますが、最後ですしお付き合いいただけましたら幸いでございます。
どうも通常は、企業の普遍的な価値観である経営理念を決めてから、理想像としての経営ビジョンを描くようなのでございます。しかし、先に自分たちのなりたい姿や作り上げたい世の中の姿が浮かんでおりましたので、ビジョンを考えてから、そのコアの部分を掘り出す感じで理念を作りました。
ですので、経営ビジョンに沿ってお話ししていくことにいたしましょう。
「安曇野市三郷小倉のもつ魅力的で多様な価値観をリスペクトしながら」
三郷小倉は、古田家が畑と居を構える地域。農業を営み、生きていく場所でございます。俺が農業を始めたのは、"内側から地域を元気にする生き方がしたい"から。いろいろな縁(この農事録が一番大きな縁でしょうけれど!)と、りんごに導かれて住み着いた、大好きな小倉の農地や人を守るために、感謝の想いを持って営農していきたいと考えています。
小倉に感謝したいのは、「自分を受け入れてくれた地域だから」ということよりも、自分の価値観を大きく変えて、進歩させてくれたからでございます。
農業とは違うことを大学で学び、海外経験もあり、それでいて農業をやろう! と脱サラして小倉で農業を学びはじめたとき、大変恥ずかしい話ではありますけれど、(そして想像に難くないことに、)どこか驕りがあったのだと思います。「外の世界を知っている優秀な俺の力で、衰退する農村を復活させてやろう」的な。ああ黒歴史。
小倉の仲間たち
しかし、実際に暮らし始めると、そこにいたのは本当に尊敬できる、素敵な先輩や仲間たちでございました。しかも、以前の立場の自分だったら友人になれたとは思えない、この際ぶっちゃけますと「距離を置いていたタイプ」の人たちが、本当にアツい想いを持って小倉で生活し、営農していたのでございます。
このとき、それまでは広いと思っていた自分の価値観・多様性に殻があることに気づき、同時にそれが割れていくのを感じました。
この気付きを得られたことが、自分の大きな進歩だと感じ、小倉や仲間に本当に感謝しています。
田舎というのは、人口が少なく、隣人と接する機会も大きいので、価値観の同じ人だけで交友関係をつくることが難しく、面倒に感じてしまう人が多いようですが、逆に捉えれば、異なる価値観の人と自然と触れ合い許容し合う土壌があるとも言えます。
田舎の農村だから閉鎖的だ、という固定観念から抜け出し、一歩踏み込んでみれば、そこには多様性理解のヒント、さらには平和へのヒントがあると考えています。そんなあたりを、弐七農園の経営を通じて体現できたらと考えているのでございます。
「世の中の人が楽しめる農業経営」
オーナーとその家族
世の中の人とは、様々な人という意味。様々な価値観・立場の人の笑顔につながる農業ができたらと思っております。
大きな軸として二つ。
りんごやジュースといった顔の見える商品、オーナーや弐七祭などで、"弐七農園を楽しんでもらいたい"という想いがひとつ目でございます。
りんごの品種の違いが楽しい。畑が気持ちいい。という、自分が地域に関わる手段としてりんごづくりを選んだきっかけを、他の人にも味わっていただきたいと思っております。
農事録でもご紹介しておりますが、オーナーや弐七祭の記事をご覧いただければと思います。
そしてもうひとつの軸が、"誰でもおいしいりんごを手に入れられるよう、しっかりと流通させる"ことでございます。
突然ですが大好きな映画のワンシーンをご紹介いたします。『ゴッドファーザー PART II』で理不尽に職を失った若き日のヴィト(デニーロ)が、帰宅してテーブルに洋梨をひとつ置くシーン。残念ながらりんごではないのですが、果物は小さな幸せをくれるものだ、としみじみ感じ、なぜだか大好きなのでございます。(気になる方は、「PART I」から「PART III」まで観ましょう。)
まあ今は飽食の時代なので、このシーンのようにはいかないでしょうけれど、意志を持って弐七農園のりんごを買う人以外にも、小さな幸せを手軽に味わってもらえる世の中を守りたいもの。
そのためには、しっかりと市場に流通させること。名産地である小倉のりんご畑を、自分の農園以外も守っていくために、JAの流通力を維持できるよう、仲間とともに出荷や提言(くじけない!)などで貢献していきたいと思っております。
「園長と家族がいちばん楽しみます」
これまでお話ししてきたように、農業やりんご、地域の楽しさを味わってもらうことで、ひとびととその暮らしをゆたかにしていけたら、と考えておりますが、そもそも農園やりんごに触れてもらうきっかけが無いと始まりません。
どうアピールするかですが、何かの魅力を伝えようと思った時、「魅力があるよ! 来て!」と呼びかけるよりも、世間ではつまらないと思われているコトや場所を楽しんでいれば、不思議がって興味を持つ人が現れる。謳い文句を並べて勧誘するよりも、自ら楽しむことが人を呼び込む近道だ、と考えています。
この考えは、数年前に作家の倉本聰氏が「天岩戸方式」と呼んでラジオで話していて、「俺と同じこと考えとる!」と思ったもの。
先にご紹介した二つのキーワードも、アピールするよりも、自分たち家族が楽しむのが第一だと思い、ビジョンの最後に付け加えておきました。
「弐七農園は、農業を通して、ひとびととその暮らしをゆたかにすることを目指します。」
坊。もうすぐ2歳
「弐七農園は、安曇野市三郷小倉のもつ魅力的で多様な価値観をリスペクトしながら、世の中の人が楽しめる農業経営に挑みつづけます。そして園長と家族がいちばん楽しみます。」
この経営理念と経営ビジョンを大切に、これからも農業経営を楽しんで頑張ります!
弐七祭にて
さて次回からは、尊敬する友人米農家の農事録が始まるような気配がしています。(調整中ですが)
想いがアツい漢なので、すごく楽しみ。
うちの独立記念として、藁細工の宝船も自ら作ってくれました。素敵な贈り物!! こりゃ未来は明るいね。
みなさんも次回以降をお楽しみに。
日々の畑・りんごの様子やもろもろは、ブログ「りんご屋さん 弐七農園」もご覧ください。
webショップもご覧ください。
では、またどこかでお会いいたしましょう。
2年間、ありがとうございました。
弐七農園 園長 古田然