岩垂さんの農事録
[岩垂さんの農事録]

オレさまの安曇野 風雲 農事録 連載第31回

連載※長野県安曇野市三郷(みさと)地区で、農家家業をついでリンゴを作りはじめて8年目となる岩垂和明さん(42歳)が、幾多の押し寄せる誘惑や困難を乗り越えて時として風雲急を告げる月々の農事を綴ります。




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今年のサンつがるです


シトシトシトシト・・・・
ザァザァシトシト・・・・


その降りようと言ったら
まるで梅雨空のよう。


お盆が明けて、
8月も終わりに近づき、
いよいよりんご(サンつがる)の
収穫の季節となりました。


ところが、ここにきて、連日の雨空。


仕事はしにくいし、
日照時間は短いし・・・


振り返ってみると、
ここ数年は残暑が厳しく、
りんごが日焼けしてしまうなど
その暑さが大きな悩みでした。


しかし、
今年は一転、
雨の多さと日照の無さが
悩ましい。


むしろ、暑い太陽が恋しいよ。。。


sun.gif

自然というものは、
なかなか思うようにいきません。


そう言えば、
たまに雨が止んだその瞬間、
ここぞとばかりに
セミが一斉に鳴きはじめます。


きっと、雨ばかり続いて、
彼らもなかなか
鳴くことができないのでしょう。


セミ君たちも
大変なんだろうな。




月に摘果が終わってからお盆頃までの間、りんご農家は比較的暇な時期に入ります。もっとも、その時期を待っていたかのように、研修やら懇親会やらと色々なイベントの予定が入って来るので、畑仕事以外で忙しくなるのですが・・・

農業者だからできるボランティア

今年はこの農閑期のイベントのひとつとして、JAの青壮年部の仲間を募って栄村にボランティアに行ってきました。栄村は、東北の震災に続いて発生した長野県北部地震で、大きな被害を受けた地域になります。仕事の内容は、栄村復興イベントの一環で被災地の小学生たちに蕎麦を撒いて育てさせ、元気になってもらおうという企画のお手伝い。

事前に聞いていた話では、

「5アールぐらいの土地に蕎麦を撒くだけです。」

ということだったので、

「果たして1日手伝うだけの仕事があるのだろうか?」

と、要らぬ心配をしていたのでした。

ところが、実際に現地に行ってみると、、、

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「え、ここに撒くのですか?」

そこは畑というよりは荒廃地。

ここを午後までに畑にして欲しいとのこと。

(@_@)


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で、まずは、草刈りから。

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そして耕運。。。

ここで乗用のトラクターがあれば楽なのだが、しかぁし、このとき与えられたのはオレたちが見たこともないような年季の入った耕運機。

仕事を開始したときには本当にどうなることかと心配したものの、そこはそれ、まかりなりにも農家の集団。(ま、ほとんどのメンバーが果樹専門ですけど・・・)

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途中機械が止まることもあったが、なんとか手なずけ、

メンバーが蜂に刺されるトラブルもなにくそ、根性でがんばりぬき、(もちろんちゃんと薬もつけました。^^;)

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キレイに整地。

午後には小学生が来て、蕎麦が撒ける状態とあいなりました。

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専用の機械を使って蕎麦の種まき

最後にみんなで記念写真。

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はい、チーズ!

これで栄村を少しは盛り上げられたかな!?

僕らの行った栄村は、まだまだ復興の途中です。

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一見普通に見えても、、

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水路の幅が狭くなっている、、、

つまり、右の土地がスライドして左に寄ったのだ。

被災地のために我々ひとりひとりができることは限られるかもしれません。

ただ、現地はまだまだ復興の途中だということ忘れないこと。まずはそのことが大切なんじゃないかと感じた、そんな一日でもありました。


うちのりんごの話を少し

て、りんごの話をしましょう。

りんごで代表的な早生(わせ)の品種と言えば、8月下旬から収穫になる「つがる」が有名ですが、最近ではつがるに先行して8月の上旬から収穫できる「極早生(ごくわせ)」の品種も色々と研究されています。最近注目されているものでいくと、山形県で育成されたファーストレディ、青森県で育成された恋空(こいぞら)、そして長野県で育成された夏明(なつあかり)等々。

ウチでも、夏明を試験的に栽培中。

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これが夏明。小玉だけど味は良いデス

これらの品種、うまく栽培できるようになったとしても、一般に出回るにはもうしばらく時間がかかることでしょう。ただ、個人的にはこの時期(お盆前)に収穫ってのはちょっとねぇ。(摘果が終わったころにすぐ収穫になるので、夏にまったく休みがなくなってしまうのだ・・・--;)


不検出に胸なでおろすも

日、安曇野市内のりんご栽培園でも放射能測定が行われ、「不検出」という結果が出ました。

とりあえず今のところ、安曇野のりんごの出荷には問題はありません。

考えてみると、大震災があり、東京電力福島第一発電所の事故に見舞われてる今年は、手塩にかけて生産した農畜産物が放射能汚染によって出荷できなくなってしまった農家や、風評被害によって買ってもらえない農家、地震や津波の被害で作付けすらできなかった農家がとても多くいるわけです。

そういう人たちのことを思うと、長雨続きで思うような品質のものができなかったことぐらいは、大したことじゃないのかもしれません。

少なくとも、売ることができる農産物があるのだから。

色々と苦労も多い今年のりんごですが、この地でりんごが生産でき、そしてそのりんごを売ることができるということは、それだけで幸せなことです。

そう、天気などにくさらずに、残りの収穫をがんばろう。。。


来月はどうなっているのか

期予報によると、この長雨の後には残暑が戻ってくるとも言われています。

まだ暑さに対する準備もしておいた方が良いかもしれません。

果たして来月はどうなっていることやら・・・

ということで、

今月も読んでいただきありがとうございました。オレとみなさんの来月が良い日々を送れているように祈りつつ、今月はこの辺で。


P.S. 8月初旬にあったゲリラ豪雨で地区の浄水場が濁ってしまい、水道から泥水が出る異常事態となりました。結局数日間給水車対応になり、水が出ないことがいかに不便なことかを身を持って知る良い経験となったのでした。

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バックナンバー

● オレさまの安曇野 風雲 農事録 #30 - #1


あわせて読みたい

● I'm a farmer!(岩垂和明さんの個人ブログ)

この記事を書いた人

長野県安曇野市三郷(みさと)地区で、農家家業をついでリンゴを作りはじめて8年目となる岩垂和明さん(44歳)が、幾多の押し寄せる誘惑や困難を乗り越えて時として風雲急を告げる月々の農事を綴ります。

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