岩垂さんの農事録
[岩垂さんの農事録]

オレさまの安曇野 風雲 農事録 連載第3回

連載※長野県安曇野市三郷(みさと)地区で、農家家業をついでリンゴを作りはじめて5年目になる岩垂和明さん(40歳)が、月々の農事を綴ります。



こんちは! 岩垂です。

一気に暖かくなってきましたね。

りんごも、ほら、

appleflowers_41709.jpg

こんな感じに。。。(4月17日撮影)

りんごの花が咲くのも、
いつもより早くなりそうな気配です。

kazu_iwadare_cattoonized_middle.jpg

スポーツの話から
ところで、プロ野球もJリーグも開幕した今日この頃、今回はオレもスポーツの話から景気よく話をスタートさせようと思っていたのです。。。

が、、、

緊急事態発生!!!

どうなる、オレ。。。

オレは、4月19日(日曜日)に開催の「長野マラソン」にエントリーしていました。フルマラソンに挑戦するのはこれが2回目。前回は数年前に走ったホノルルマラソン。このときのタイムは4時間ちょっとだったから、今回は4時間切るのが目標だったんですよね。

仕事が一段落した昨年12月から準備をはじめ、ウェアやパンツ、時計なども買い揃え、最近では状態もそこそこな感じで仕上がってきておりました。

ところが、いよいよ10日間前となった先日、事件が発生!


オレがその日やっていたのは
この日やっていたのは高接ぎ(たかつぎ)という接ぎ木(つぎき)の作業。これは、りんご木の枝を途中から切り落とし、その枝の先に別の品種の枝を接ぎ木することで、一気に別の品種にしてしまうっていう技術です。

takatsugi.jpg

写真わかりますか? 切った枝の先に、細い枝が付けてあるのが。

普通、新しい品種を作るには、新しいりんごの苗を植えてそれを何年もかけて育てなくては採算がとれるほどのりんごは採れません。しかし、この方法だと3、4年もすれば別の品種が採れるようになるのです。


作業中の事故
で、話を戻すと、その高接ぎの作業中に鋸を使っていたところ、誤って鋸が右手の中指に刺さってしまったのでした。(>_<)

でも、仕事しているとその程度の怪我はありがちのこと。そのときも、その場は放っておいて、家に帰ってからちょっと消毒して絆創膏貼っておいたんですが・・・

これが甘かった。

その日は大したことなかったんですよ。でも次の日の夜、熱が出てね。風邪かな? なんて思って1日寝て過ごし、だけど、熱だけじゃなく指もどんどん腫れていって2倍ほどのの太さになり、

結局怪我をしてから3日後に医者へ行きました。

医者には「何で早く来ないの?」って言われつつ、結構面倒なことになって、しばらく毎日通院する羽目に。。。

kega.jpg

しばらくは仕事もできず、残りの接ぎ木は全部オヤジ任せ。

すまねぇ! オヤジ。m(__)m

ということで、マラソンどころではなくなってしまったわけです。

今回の長野マラソンは、7年に1度の善行寺の御開帳とも重なり、また、あの高橋尚子さんも来るってことで、楽しみにしてたんだけどなぁ・・・(:_;)


りんごとオレの関係
さて、オレの場合は傷口からバイ菌が入りしかも少し対応が遅れたがために面倒なことになってしまったわけですが、りんごの場合も同じことが言えます。

先日、りんごの木を一本一本チェックしていたときのこと、

「ん???」

whatsup.jpg

りんごの幹の色が微妙に赤くなっているのがわかりますか?

端を少し削ってみると、、、

youaresick.jpg

「あぁ、やっぱり。」

腐ってきています。

これは腐乱病(ふらんびょう)と言う病気で、腐乱病菌という菌によって感染します。こいつを放っておくと病気が木全体に広がってしまうばかりか、周りの木々にまで伝染してしまうので厄介です。

そこで、
見つけたら即、外科手術。

knifebox.jpg knife.jpg

これを使って患部切除。

surgery.jpg

思ったより進行していました。かなり削ってしまったな、かわいそうに。

afteroperation.jpg

患部保護のための塗布剤を塗って終了。

百姓はときに医者にもなるのです。(^−^)


りんご農家には心配が絶えないころ
さてさて、このりんごの花が咲く頃は、りんご農家にとっては心配が絶えない時期でもあります。

その原因は「霜」、つまり低温状態です。氷点下2、3度以下になってくると厳しいですね、花や幼果がやられてしまうので。

そこで登場するのがこれ。

antifrostfan.jpg

いやぁ、よく聞かれるんですよね。
「りんご畑にあるあの扇風機、なに?」って。

これは「防霜ファン」と言って、1年のうちで霜の害のありそうなこの季節だけ使うものです。サーモスタットによって寒くなると自動的にファンが回り、下にたまった寒い空気を循環させて霜の害を防ぐというもの。

でもね、効果のほどは???

「ホントに効いてんのかな?」(^^ゞ

けして、暑い日に涼しくするとか、風力発電するためにあるわけではありませんのであしからず。

結局のところ、りんごなんてもんは自然が育ててくれるもの。

ただし、放っておくと自然のストレス(気候とか病気や害虫など)が強すぎて思うように育ってくれないものだから、そのストレスを少しだけ緩和して育ちやすくしてあげるのが、りんご農家の仕事なんですよね。

でも、うまいりんごを作るにはそのストレスも少しは必要なわけで、その辺のさじ加減が難しいんだよな。

来月はいよいよ激忙しいシーズンに入ります。
早く指を治さなくちゃね。

ということで、今回はこんな感じで。

Take it easy! (^^)/

この記事を書いた人

長野県安曇野市三郷(みさと)地区で、農家家業をついでリンゴを作りはじめて8年目となる岩垂和明さん(44歳)が、幾多の押し寄せる誘惑や困難を乗り越えて時として風雲急を告げる月々の農事を綴ります。

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