※長野県下水内郡豊田村在住のりんご農家・神田茂貞さん(36歳)が、月々の農事を綴ります。
3月になって、暖かい日が続き、植物にもだんだん変化が見られるようになりました。この時期にブドウの枝を切ると、切り口から水が出ます。根が活動し、休眠から覚めた証拠です。寒い休眠期に剪定(せんてい)を終了させた枝からは水は出ません。本当に不思議なものです。
ももの枝は、芽を膨らませはじめます。芽から葉が出る前に第1回目の防除となります。この防除は、ももの縮葉病(しゅくようびょう・葉が収縮した状態で、本来の葉の役割を果たさない葉となる病気)や黒星病(くろほしびょう・果実に黒点がいくつかみえ、商品価値が低下してしまう病気)を対象とした防除で、わが家では石灰硫黄合剤(石灰と硫黄の合剤で、多硫化カルシウムを主成分とした赤褐色の液状薬剤)を使用しています。
春先の防除は、風のない早朝のうちに行いたいのですが、気温が低いと散布液が凍ってしまうため、しかたなく暖かい日中に散布します。ただし、風が出てきたら十分な効果が得られないため、散布を中止します。自然が相手なので、この時期から適期を逃さないように準備をして、早めの散布を心掛けます。
りんごも樹液が動き出して、終盤を迎える剪定作業にも変化が見られます。寒い時期にはノコギリカスがあまりつかず、ついても雪でこするとカスが取れ、順調に作業ができるのですが、この時期に枝を切ると、カスがつきやすいので、作業スピードが極端に落ちます。無理をして切ると、ノコギリが折れたり、切り口が凹凸になり、フラン病(樹皮が腐る病気で、リンゴ栽培の最大の敵)になりやすいため、私はハンドスプレーに水を入れ、カスがつかないようふきつけながら、剪定をしています。
また妻は、剪定した枝の片付けに毎日精を出していますが、これも一苦労で、腰を曲げて枝を拾っていく作業は、実際とてもきついものです。愚痴を言わず片付ける妻に感謝しています。(ありがとう)^^;
そんな妻の楽しみは、週2〜3回出かける近所の温泉。温泉で体が温まると、気持ちも温まり、人に優しくなりますからね。これが夫婦円満な秘訣かな?そうそう、もうひとつ楽しみがあります。雪どけのこの時期は、りんご畑にふきのとうが顔を出すのです。作業をひと休みし、ふきを採り、春の香りを味わって、晩酌にはふきづくしで一杯。これは最高で〜す。
▽長野県の気候・春の特徴(長野地方気象台)