月が変わって2月ともなると、果樹農家では「剪定(せんてい)」の時期を迎えます。
剪定は品目や品種によって方法は異なるのですが、基本的には、樹の勢いに応じた収穫量の確保をし、陽が当たって、防除が容易で、作業がしやすい樹形にしていきます。また、病害虫により樹体の確保が困難である場合は、剪定前に間伐(かんばつ)などをふくむ枝の処理を行います。
わが家の剪定は、まずプラム、そしてもも、ブドウ(巨峰)、最後にりんごの順番です。
プラムやももは、胴枯れ(木の幹の中心部が空洞になって立ち枯れしてしまうこと)が心配なために、太枝については20〜30cmを残して切除します。巨峰は、他の品目以上に間伐を基本に枝を整え、空間を十分確保することが大切。成園(せいえん・定植後10年以上で、10a あたり3〜4本程度、園内満遍なく枝があり、最も充実していて働き盛りの園地のこと)は間引き剪定とし、枝の移動で空間をうめるように整枝します。特に樹勢に応じた剪定量(剪定で切り落とした枝の量、間伐は除く)には気を使い、切り過ぎることがないように注意が必要です。どうしても空間の確保ができない場合は、間引きせずに棚の下へ枝をおろして、結実を確保した後に切除します。
ブドウは休眠のこの時期に剪定を終了させなくてはなりません。りんごについては、わが家では10箇所の園地があり、品種の特性もあるため、とりあえずはつがる、王林、そして中生種(紅玉やジョナゴールドなど)の混植園から剪定しはじめます。晩生種の中心にいるふじは、特に整枝・剪定の技術の違いで、良品果実の生産に大きな差がでるものですから、基本だけでなく、樹間の距離や樹高や花芽の確保にも入念に気を使います。そこが私のこだわりでもあり、完熟品生産には欠くことのできない技術なのです。
人にそれぞれ個性があるように、ふじにも個性というものがありまして、同一方法で形にはめることは、個性を伸ばすことにはなりません。同じふじはふたつとないのです。それぞれの樹の本来持つ力をどれだけ引き出し、維持するか。樹勢の見方ひとつでも、とかく全体の見た目で判断しがちですが、主枝の先端の枝からはじまり、成り枝部位の枝の太さ、長さ、充実した花芽の数それぞれが樹勢の判断材料となります。わたしの師は「樹の声を感じ、それぞれにこたえることが剪定である。枝ごとに剪定は変える」とおっしゃいました。生きものと向きあう剪定は、本当に奥が深いもので、日々が勉強です。
そうやってわが家の剪定が終了すると、仲間と共に共同剪定もします。これもまた勉強で、夕方になるとはじまる酒の席は、私のエネルギーの源であり、明日への活力であったりもします。\(^O^)/