緑黄色の優美な姿。そばに近づいただけでも、口の中に甘みが広がってきそうです。このたわわになっているブドウはロザリオビアンコといいます。イタリアなどヨーロッパで「白いブドウ」と呼ばれるロザキと、マスカット・オブ・アレキサンドリアという名門の純欧州品種2種を交配して育成されたもので、1987年に山梨県で登録されました。
8年もののブドウの木
ロザリオビアンコは、糖度が21度を超えるほど高くなるものもあり、その官能的な甘みが人気です。今回はJAちくまのブドウ部会で副部会長を務める酒井隆義(さかい たかよし)さん――写真――の園地を訪ねて、このロザリオビアンコのお話をうかがってきました。ロザリオビアンコの栽培を始めて8年目。収穫できるようになってから3〜4年が経過したそうです。「土地が良いのか8年目にしては太く良く育っている」と酒井さんは語ります。今年の秋には1.2〜1.5トンほどの収穫量を見込んでいます。
作業は昨年の秋にはじまっていた
一年を通しての栽培のサイクルは、昨年のうちに、冬を無事に越せるよう幹にワラを巻くところからはじまります。その後、年が明けてから剪定(せんてい)、房切りなどの作業を行い、収穫期の重量が550〜600グラムになるよう粒の数を揃えていきます。
今現在(8月下旬)は、7月にかけた袋がかぶさっている状態。今週中には天井を覆っている枝葉のうち余計な部分を切り落とし、あわせて地面に白い反射シートを敷くという作業を行います。
これは、太陽の光がより多くあたるようにするためです。作業を行う目安は、緑の枝が黄色に変わる頃。「早すぎても、遅すぎてもダメ。作業には適切なタイミングがあるので、それを逃さないよう心がけています」と酒井さん。9月15日頃には袋も外し、10日間ほどブドウの実いっぱいに太陽の光を浴びせます(ちなみに左下の写真のロザリオビアンコは袋を外したものを撮影させていただきました)。
収穫は9月の25日頃でしょうか。糖度19度を合格点として収穫し、出荷を行うそうです。昨年の秋からはじまった一連の作業がまさに実を結ぶ瞬間がもうすぐそこまで来ているのですね。
正しいときに正しい作業を
「今後は適切な設備投資を行い、作業効率を上げることを目標にしています。作業効率を上げることで、適期を逃さず作業ができるし、機械化により働いてもらう皆さんの苦労も少なくなります」と酒井さんは話してくれました。データの収集と分析もしっかり行い、勘に頼らず数値で判断できる農業を行いたいと。「農業というと天候一つに一喜一憂してしまうところがありますが、データからなにをすべきでなにをすべきでないのかが判断できれば、肩の荷がひとつおりるし、平均的に良いものを作り出せると思います」
JAちくまでは、今年のロザリオビアンコ出荷量を8トン(4キロ×2000ケース)と計画しています。昨年は6.4トン(同1600ケース)を出荷しました。JA管内のブドウ栽培の中心はやはり巨峰ですが、今後はロザリオビアンコをはじめ消費者の皆さんの嗜好にあった品種の生産に取り組む計画です。
さて、このロザリオビアンコ、種こそあるものの皮が薄いので皮ごとでもおいしく食べられます。極めて高い糖度がもたらす上品な甘みを、来月にはぜひ体験してみてください。