アスパラガス栽培農家の1日
仙丈ケ岳をはじめとした南アルプスの山並みと泉澤さんのアスパラガスビニールハウス
東に仙丈ケ岳をはじめとした南アルプスの山並みを見据える伊那市西箕輪。住宅地の中に、泉澤幸雄さん(42)のアスパラガス畑がありました。
泉澤さんはビニールハウスで栽培する半促成栽培という方法で、就農と同時に取り組んで6年目。「(JAの)技術員や周りの先輩たちのアドバイスに従って育てているだけ」と謙遜するものの、JA上伊那管内でも有数の反収を誇る有望な担い手です。
訪ねた3月下旬は、例年なら春どりが始まるころ。今年は早めにビニールをかけたため「2週間ほど作業が早まっている」とのことでした。
「『アスパラガスが元気よく育つにはどうしたらいいか』で頭がいっぱい。自分でやろうと決めたことだから苦労とは思わない」と胸を張る泉澤幸雄さん
1日2回の収穫、とれたては直売所にも
訪ねた午前7時少し前、泉澤さんは温度調節作業の真っ最中でした。20分ほどで終えると朝の収穫。成長の速いアスパラガスは午前と午後、1日2回の収穫作業があります。この日の朝は1コンテナ(およそ50束、1束105g)、午後は3コンテナ近くの収穫がありました。朝の方が少ないのは、まだ、夜間の気温が低く、日中に比べて成長が鈍いため。春の収穫がピークとなる4月半ばになると、1日500~600束の収穫があり、長さ、太さをそろえ、結束するなど出荷作業と合わせて真夜中の2、3時からの作業になります。ちなみにこの日は5時からでした。
コンテナいっぱいの収穫
5月に入ると春どりは一段落。擬葉を繁茂させる「立茎」と呼ばれる作業に入ります。7月上旬からは、新たに株元から生えてくる若茎を収穫する夏秋どりがスタート。夏秋どりは気温が下がって成長が止まる10月ころまで続きます。
上:専用の選別機で太さ、長さをそろえる
左:店頭での持ちをよくするため、出荷前には15分ほど吸水させる作業も。生きのいいアスパラガスは漬け過ぎると、その間にも伸びてしまうという
右:出荷のための結束作業
収穫の合間を縫って直売所にも顔を出し、とれたてを並べる
来週はこのアスパラガスを手軽においしく味わうコツを、伊那市でうかがいます。
【アスパラガス】
地下茎で繁殖する多年草。食用にするのは地下茎から伸びてくる若茎(じゃっけい)という部分。穂先や茎の周りにある一段と緑が濃い三角形の部分が鱗片葉(りんぺんよう)と呼ばれる葉。ただし、この葉は葉緑素を持たないため、光合成はできない。代わって光合成を行い養分を作り出すのが鱗片葉の内側から生えてくる擬葉(ぎよう)と呼ばれる細い茎。若茎を収穫しないで成長させ、擬葉を繁茂させる立茎(りっけい)は翌年の収穫を左右する重要な作業。病気や虫の発生を防ぎ、十分に光合成ができるように細心の注意を払う。