春の足音が聞こえたら、ハウスの中は桃満開

桃

摘花作業をする剛弘さん(手前)と章さん

信州も春の足音が聞こえ、歩みはゆっくりですが春に近づいています。3月3日の「桃の節句」も近いですが、この時期に桃の花? そもそも「桃の節句」は古来中国の上巳の節句が由来とされています。もともとは旧暦3月の最初の巳の日(上巳の日)に行われ、脱皮をする巳にちなみ心身を祓い清める行事であり、また、女の子の健やかな幸せを祈る祭りでありました。本来は3月下旬から4月に行われていましたので、桃の節句は旧暦の3月3日とされ、そのまま今の暦に合わせたことから、現在では1カ月以上も早く行われています。信州では、月遅れの4月3日に桃の節句を行う地域もありますが、それでも桃の花は咲きません。
ところが、桃の節句に桃の花を愛でる話題があるというではありませんか。さっそく、果樹栽培の盛んな北信濃へ行ってきました。

雪国で始まった家族みんなの桃仕事

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桃ハウスの周りは雪が残るブドウ畑と高社山

ご紹介するのは、家族4人でブドウ1.8ha、リンゴ15aなどを栽培する専業農家の湯本剛弘(75)さんの桃ハウス。近くに高社山を望み、夜間瀬川が流れ、ブドウやリンゴ、サクランボなどの果樹園が広がる県北部の中野市竹原にやってきました。
お邪魔したのは、2月18日。桃ハウスの周りには1月中旬に降った雪が1m以上残っていました。しかし、ハウスの中は20度前後に保たれ、満開の桃の花がお出迎え。妻の佐久江さん(71)とお嫁さんの奈々子さん(45)が、他品種の桃の花粉をつける受粉作業をしていました。息子の章さん(48)は、遅れた木の摘花作業中です。

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受粉作業をする佐久江さんと奈々子さん

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一つひとつの花に花粉をつける

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ミツバチも働き手

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摘花する章さん

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摘花前(上)と後

湯本家の桃のハウスは7.5aで、早生桃3品種(日川白鳳、紅国見、秘味黄金桃)を栽培しています。中野市内のハウス桃の栽培は、約30年前から始まり、現在、湯本さんちのハウス桃の樹は3代目。桃の樹の寿命(良い果実がなる期間)は約25年といわれるのに対し、ハウス桃の樹の寿命は15年程と短いのです。「樹の植え替えが難しいから栽培当初は10軒あった農家も、今はこのハウスだけになってしまった」と剛弘さんは教えてくれました。

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満開の桃

デジタルとアナログ、両方で温度管理

ハウス桃栽培で一番気をつけていることを尋ねたところ、「温度管理」と即答。温度管理を徹底している証拠をハウスの中に発見しました。なぜか、デジタル温度計と昔ながらの温度計が設置されています。加温機は自動的に作動するのですが、気温だけでなく地温も測定し、自らの経験とデーターを基に温度管理をしているそうです。

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最新温度計を活用

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昔ながらの温度計も活躍

「日中のハウス内の気温は、22~23度が適温なのですが、それ以上に上昇してしまうと良い品質の桃ができないから、温度管理が一番難しい」と、湯本さん。路地栽培の環境に近い状態にハウス内を保つため、温度チェックが重要であることを示してくれました。

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加温機

「今年のハウス桃は、1月8日から始めたが、大雪に見舞われ、ハウスを潰さないようにと例年より温度を高くした。そのことで、開花が進むのではないかと心配したが、無事開花までたどりつけてよかった」
「桃の花は、温度をかけると15日程で開花するが、1カ月以上かけて開花させないと桃(製品)にはならない」
剛弘さんと章さん親子は、大雪の苦労話を交えながら話してれました。ハウス桃が出荷されるのは、5月の連休明けから5月いっぱいだそうです。

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ハウスの散水はこのパイプから

ベビーリーフもすくすく育つ

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桃ハウスで家庭菜園を楽しむ女性たち

満開の花に受粉作業をしながら「冬の間はハウスの中は温かいので、ボチボチ作業するにはいいんだよ」と佐久江さん。雪でも雨でも関係なく作業でき、家の前なので、すぐに家の中に逃げ込めるからありがたい、とも言っていました。そんなハウスの中には、女性2人が栽培している家庭菜園が。「近年家族に好評なのが、ベビーリーフなので、毎年作っています」といいながら、仲良くベビーリーフを摘む佐久江さんと奈々子さん。湯本家の食卓には、冬でも自家製野菜が並びます。

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作業の合間のおやつに桃のシロップ漬け

いつもは、農作業の合間のお休みは、自宅に戻るのですが、今回は特別に桃の花の下で、佐久江さん手づくりの黄金桃のシロップ漬でひと休み、編集部員もちゃっかりいただきました。温かいハウスの中でいただく、冷えた黄金桃のシロップ漬は、とてもおいしかったです。レシピは、編集部員のつぶやきでご紹介させていただきますので、しばらくお待ちください。

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

この記事を書いた人

さくら

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