信州は、季節ごとに旬の果物が味わえるフルーツ王国。梅雨どきの今頃は、ちょっと酸味のある「プラム(日本すもも)」がおすすめです。長野県の北部の中野市や山ノ内町を中心に、プラムの出荷が始まっています。品種の豊富なプラムの中でも、先陣を切って店頭に並ぶのは「大石早生(おおいしわせ)」。やさしい甘さとジューシーな果汁、ほどよい酸味がさわやかです。
中野市の生産者、丸山耕治さん(46歳)を訪ねると、収穫の真っ最中でした。 「例年は7月10日過ぎからの収穫ですが、今年は冬の積雪が少なく、春の気温が高かったので生育が早く、収穫も10日ほど早めです」と、汗を拭きふき話してくださいました。
丸山耕治さん。リンゴの栽培もしています
丸山さんが栽培するプラムの圃場は約60a。そのうち約7割は「大石早生」。果実のてっぺんが少し尖っていて、桃に似た形をしているのが特徴です。 多くのプラムは、輸送途中での果実の傷みに配慮し、少し早めに収穫して追熟させるのだそうですが、丸山さんのプラムは果樹に実った状態で赤くする"樹上完熟"を基本としています。 標高550mエリアにある丸山さんの圃場には、同じ中野市エリアでも標高の高い地域だからこその利点があるのだそうです。プラムは熟すと果肉が柔らかくなるのですが「標高が高い分、実が熟しても果肉が硬くしっかりとしているようです。私の仕事は、『おいしい』と言ってくださる消費者のみなさんの言葉が何よりの励みですから、できるだけおいしいものを届けたい、との思いで続けています」と、樹上完熟へのこだわりを語ります。
樹上で熟すプラム
さらに、気温が低い早朝4時頃から収穫を始めるのも「おいしいプラムのため」。気温が上昇すると果肉の温度も上がり、傷んだり腐ったりしやすくなるためです。冷涼な朝方の時間帯に収穫のピークを置くことで、果肉の温度をできるだけ低く保ち、出荷しているのだそうです。 収穫期ならではの苦労は多く「朝方は果実が青いから収穫は明日にしようと思っていても、夕方には赤くなっていることもあるんですよ」。プラム栽培の作業は、冬期間の枝の剪定や、春の開花期の受粉、摘果など多忙ですが、最も忙しいのが収穫期。「果実の成長は待ってくれませんから、時間との勝負です」と、片手で2~3個ずつ収穫する手は忙しく働き、収穫カゴは次々といっぱいになりました。
収穫を終えたプラムは、圃場から車で2~3分の作業小屋で出荷の準備を行います。奥様の房子さんとともにパックに詰め、その日のうちに選果場へと運び、翌日には店頭へと並べられるのだそうです。
ピーク時は1日2000〜3000パック近く作るのだそう。1パックは約400gなので、収量の多さにも驚きます
平成26年の農林水産省の統計によると、長野県のプラムの収穫量は山梨県に次いで2位。全国シェアは15.5%を占めています。 プラムのトップバッター「大石早生」が終わると、「紅りょうぜん」→「菅野中生(かんのなかて)」→「ソルダム」→「貴陽(きよう)」→「太陽」→「秋姫」と多彩な品種が続きます。生産量では「大石早生」が最も多く作られている品種です。
ちなみに「すもも」は中国原産の「プラム(日本すもも)」と、ヨーロッパから渡ってきた「プルーン(西洋すもも)」とに分けられています。 プラムは奈良時代に日本に渡ってきたとされ、古事記や日本書紀などにも登場することから、古くから親しまれてきたとされています。
プラムの酸味は主にリンゴ酸。そのほかにクエン酸も多く含まれており、疲労回復の効果に期待できます。またペクチンなどの食物繊維も豊富なため、整腸作用にも期待できます。さらに、体内からナトリウムを排出する役割があるカリウムも多く含むため、高血圧の予防にも期待できそうです。
丸山さんのおすすめの食べ方は「氷水で冷やし(冷蔵庫でもOK)、生で皮ごと食べるのが一番!」。 購入時に果実が青い場合は常温に置いて追熟させると、果実全体が赤くなるので、それから冷やして食べると良いでしょう。 また、プラムにはブドウなどと同じように果実の表面に薄く付くブル-ム(果粉)があります。これは消毒ではなく、果物が作り出す天然の物質。ブルームがあると、よく熟していて新鮮な証拠でもあるので、軽く洗ってそのまま食べることができます。
生食以外の食し方では、ケーキやタルトのトッピングのほか、ジャムやコンポート、またシャーベットやスムージーなども夏ならではの涼しげな食べ方です。 暑い夏こそ、さわやかな酸味が効いたプラム。ぜひ食べてみてください。
こちらは 2016.07.12 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
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