日本有数、いな、世界有数の豪雪地帯でもある信州最北部。ここ飯山市は、豪雪と時に戦い、時に寄り添って生きてきた地でもあります。 今回は、この雪どけ水が肝とも言われる花の話題です。飯山といえば雪国のイメージですが、早春のスズランを皮切りにヒペリカムにソリダコ、シンホリカルポス、うつぎやムシカリなど、四季折々、いろいろな種類の花や枝ものを育てる花の産地でもあるんですよ。(その数、年間70品目、1000種類にも!!)
飯山のシンボルとも言える菜の花が終わり、緑が色濃くなった5月。この時期まさに主役とも言える、シャクヤクが収穫間近と聞いて、池田俊昭さんの畑にお邪魔しました。 ・・・ところが、ざんね~ん! まだ咲いていません(涙)。これは、蕾のまま出荷することで、全国のお店にシャクヤクが並んでから、皆様のお宅に届くまでの輸送時間を考慮してのこと。ご勘弁を!
ちなみに蕾が開くとこちらの通り。
写真提供:JA北信州みゆき
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と、美しい女性の姿にもたとえられるシャクヤクは、豪華にして上品な花ですよね~♪
生産者の池田俊昭さん
スズランや生け花用の花木の出荷中
信州は全国トップクラスのシャクヤク産地であり、中野市や上田市などでも生産が盛んです。飯山での栽培の歴史は古く、冬場のきのこ栽培に次ぐ品目として、50年以上前から露地中心に栽培されてきました。JA北信州みゆきではシャクヤク部会70名の生産者さんにより、今年(2016年)5月15日には、13種類もの品種のシャクヤクが初出荷となりました。飯山地域のシャクヤクの特徴としては、ここならではの「雪どけ水」「千曲川の堆積」が、地力や茎丈などに大きな影響を与えているということ。長く太くしっかりした茎に育つには、水が大事なんだとか。「おかげさまで市場からの評価も高く、はりあいになる」と池田さん。
ところで、シャクヤクってどんな風に成長するのでしょう。 シャクヤクのひと株からは、40本以上の茎が生えます。伸び始めの頃は、栄養と水分を凝縮させるためにある程度の「間引き」が重要です。
間引き作業中
間引き後のひと株
次の作業には「花摘み(芽摘み)」があります。もともと1本に5、6個の蕾がつくシャクヤク。その中心の大きな蕾を残して、他をすべて取り除きます。これもひとつの蕾に栄養をたっぷりと集中させて、大きく美しく育てるための大事な作業です。
手早く丁寧に芽摘みをする池田さん
芽摘み前
芽摘み後
早速、池田さんに教えていただきながら、片手で蕾の頭をポキッと折ります。茎や中心の蕾を傷つけないように脇の蕾だけを。すぐに折れるものの、慎重かつ丁寧さを要します。畑じゅうとなると、それはそれはコツコツ地道な手仕事です。「ひとつの美しい花を咲かせるための手間は惜しまない。手伝ってくれる女性陣にも感謝」と笑う池田さんの手には、あっという間にいくつもの蕾が・・・。ベテランならではのスピードも重要でした。気づけば手がべとべとに! 「え~っ、ナニコレ?」とあせる編集部員に、「あぁ、これは花を守る蜜だよ、蜜。甘いよ」と池田さん。ただし花摘み作業には不便なので、通常は水をまいて洗い落としてから摘むのだそう。
収穫直前には来年の準備も必要です。この時点で一株30本ほどの茎ですが、すべての花を咲かせてしまうと、それだけでもかなりのエネルギーが必要となり、株が弱ってしまうので、出荷以外の蕾を落としてしまうのです。池田さん曰く「頭を飛ばす」作業。少しもったいないようにも思えますが、来年も美しい花を咲かせる工夫なんです。
来年のため「頭を飛ばす」
ちなみに、花屋さんでシャクヤクの切花を買ったものの、蕾が咲かないまま終わってしまった・・・、なぁんていう経験のある方いませんか? JA北信州みゆきでは「開花するシャクヤク」をテーマに「シャクヤクを豪華に咲かせる研究会」を立ち上げています。それまで、各生産者さんの経験値に頼るところが大きかった切り前のタイミングなどを、分析・マニュアル化し、より経験値を高める努力をしています。「咲かせる確率、日本一」を目指して。 また、咲かない原因のひとつとして、先ほど花摘みでも登場した「蜜」も関係してるとか。蕾を水で洗うか濡れタオルでそっとふき取ると、より咲きやすいそうですよ。どうぞ、お試しあれ!!
確実に咲かせるため蕾を水洗いする
濡れタオルで拭いても
美しい山々に豪雪が生む水脈、日本最長の千曲川(信濃川)など、豊かな自然風土がもたらす恵みをたっぷり受けて育ったシャクヤク。この大輪が咲く日をどうぞお楽しみに! 感動ものです☆
収穫まであと4、5日のシャクヤク
JA北信州みゆき
こちらは 2016.06.14 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
まちゃ
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