突然ですが、クイズです。こちら何だかわかりますか? うどん? きしめん? 麺類にも見えますが・・・。ヒントは「水に戻す」「海苔巻きといえば?」。 そう、もうお分かりですねっ♪ 正解は「かんぴょう」なんです!
今回は、北安曇郡池田町会染内鎌(ないがま)地区に、江戸時代から伝わる伝統的な特産品「内鎌かんぴょう」のおいしさの秘密を紐解きます。 まずは、「かんぴょうって何から作るの?」と言う声にお応えしましょう。「内鎌のかんぴょうを守る会」会長の太田洋介さんに畑を案内していただくと、青々とした葉や太く立派なつるから、細長い形の「ユウガオ」が顔をのぞかせていました。雨上がりの午後、白い産毛にはじかれた雨粒がキラキラしています。
「内鎌のかんぴょうを守る会」会長の太田洋介さん
この「ユウガオ」こそ、かんぴょうの正体! この白い果肉を、皮をむくように薄く長く切って乾燥させたものがかんぴょうです。この地の「内鎌ゆうがお」は、江戸時代から育てられていて、信州の伝統野菜にも認定されています。ベストサイズは約30cm。大きくし過ぎると皮が硬くなってしまうそうで、種を取る用以外は若採りがいいそうです。最盛期は6月から8月中旬。夜の温度がぐっと下がるお盆以降はなかなか大きく育たないそうです(取材当日は、ほぼラストの収穫でした)。その後を追うように、6月下旬から8月下旬にかけてかんぴょう作りが行われます。
いざ、今日のメインイベントでもあるかんぴょう作りの作業場へ。太田会長はじめ、手挽きのプロが4人。職人技で一つひとつ丁寧にスライスします。と、その前に、まず作業の流れを伝授しましょう。 1. 無農薬「内鎌ゆうがお」は、朝採りするべし(みずみずしく味がギュッとしまる) 2. 1日お日様にあて、皮を少し軟らかくするべし(手挽きのため重要) 3. 作業は夕方、6、7cmの輪切りにカットするべし(この秘密は後ほど・・・) 4. 片刃の細長い床挽き包丁と挽き台で、ユウガオを転がすようにして挽くべし(出た~っ、これぞ秘密兵器!) 5. 剥かれたユウガオは一昼夜、自然乾燥するべし 6. その時、必ず菰(コモ)の上に並べるべし(ここにも秘密が・・・) 7. 乾燥したらサイズによって4~8本程度にまとめて、畳んで袋詰めにすべし 挽き台の上下に入っている赤茶色の切り込みに、(3)でカットされたユウガオがぴったりフィット。左手をユウガオにそっと添え、挽き台の上を包丁が音も立てず滑ると、みるみるうちに蛇腹状態に! その薄さたるや、1.5~2mm、向こうが透けて見えるほどです。
あまりにもスイスイ挽いていくので、「意外と簡単? できそうかな」と思ってしまう編集部員。そんな顔を横目に、「皮と果肉を絶妙な圧で水平に転がし、細い刃で剥くには、上手く挽くまで3年」と太田会長。これぞ職人技☆ 大変、失礼いたしました!
さらに、挽き台をよく見ると斜めに格子状のスジがあります。「この上を転がすことで、アクがとれるんだよ。こっちが昔の道具」と、大層年季の入った以前の道具も見せてくれました。アクとりまでこなす優れものとはいえ、機械化は考えませんでしたか? と尋ねると、「手挽きにこだわりたい。味が違うよ。歯触りって言うんかなぁ。道具は今のも昔からのを再現して作ったんだよ。新しく作ってもコレでないとね」。
左:現在使用中の包丁と挽き台 右:昔ながらの挽き台
続いては、手挽きのプロに続いて、干しのプロが現れました。この日はあいにくの曇天でしたので、隣接するハウス内へ。そこには腰の高さほどにズラっと並んだ藁の台が。そこへ先程スライスしたかんぴょうを、一枚一枚丁寧に等間隔で干していきます。この菰(コモ)にも秘密あり! 菰は粗く手織りすることで、より乾燥させやすくなるため、毎年冬場に守る会のメンバーで稲藁を織り上げるそうです。この時から既に、かんぴょう作りは始まっているのですね。ちなみに、白色(クリーム色)のかんぴょうが上質、とのことです。
前日干したもの
取材当日のものを菰(コモ)に並べる
さて、目の前にずらりと勢ぞろいしたのは、「かんぴょう」が主役の創作料理。太田会長の奥様、三枝子さんがこの日のために用意してくれました。中でも『キムチ漬け』『豚肉としいたけの黒酢炒め』は三枝子さん考案のお料理。絶妙な歯触りと優しい風味(食味)がそれぞれの味にマッチしてたまりません☆ さっと洗い戻して(あまり長く戻し過ぎず)シャキシャキ感を楽しむことがポイント♪ 地元では味噌汁の具としてもよく登場するそうですよ。 他にも、初めての食感といえる『塩チップス』や優しい季節の味の『ジャガイモとナスの煮物』、そして王道の『かんぴょうの煮つけ』と、かんぴょうのフルコースに驚き、大興奮! 特に醤油とみりんの煮つけのやわらかい歯触り、上品な甘さと滋味は一生忘れられない味となりました。ごちそうさまでした!!
歯触りが心地よい、かんぴょうキムチ
煮しめはこれまでに食べたことのない美味しさ
江戸時代から続く歴史ある「内鎌かんぴょう」も、生産者の高齢化などで、一時は生産者が5名ほどまでに減ってしまった時もあったと太田会長。代々受け継いできたものを若い人にも知ってほしい、食べてほしい、つなげたいと、「内鎌のかんぴょうを守る会」を立ち上げ、現在では30名ほどになったと言います。地元で愛され、口コミでも広がり、今や遠くから買い求めに訪れるお客さんも多いとか。「内鎌かんぴょう」には、手作り・手挽き・自然乾燥の伝統をかたくなに守るメンバーの思いがギュッとつまっています。
信州伝統野菜の他にも北アルプス山麓ブランド品として認められた認定証
地元のコンビニや道の駅でも販売
朝な夕なに北アルプスを仰ぎ見る山紫水明の地、池田町で育ち、手間ひま惜しまず、こだわって作られた「内鎌かんぴょう」。ぜひ一度お試しあれ!
「内鎌かんぴょう」は、JA大北の直売コーナーが充実している「ファミリーマートJA大北会染店」や、道の駅「池田町ハーブセンター」で購入できます。毎年秋頃には完売してしまうこともあるとか! ご購入希望の方はお早めにどうぞ。ご一緒に、『内鎌かんぴょうのレシピ本』もいかがですか? 目からうろこのアイディア料理が満載です。
『内鎌かんぴょうのレシピ本』(350円)。 地元のお母さんから出されたアイディア満載のレシピは、40種類にも及ぶ
■関連リンク JA大北 ファミリーマートJA大北会染店 道の駅「池田町ハーブセンター」
こちらは 2015.09.01 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
まちゃ
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