ひと口食べればもう虜。至福のひと時、そして贅沢感を味わえる魅惑の粒。この罪つくりな美味しさにハマッてしまった人も多いはず。この粒の正体は今注目のブドウ「ナガノパープル」。食べたことのある人も、毎年この登場が楽しみな人も、そしてまだこの未知との遭遇を果たしていない人も、今年は是非とも召しがっていただきたい今大人気のブドウは「今年のナガノパープルは、とびきり美味しく出来あがりました」と生産者さんも太鼓判です!
現在、最盛期を迎えているナガノパープル。収穫前のものを袋を外して見せてもらえば― 目の前に現れた黒い塊は想像以上に大きくて、しかも緑色の細い軸にはパンパンに張った大きな粒がビッチリと密着し、ずっしりと重そうじゃありませんか。それにしてもこのひと粒の大きさといったら・・・500円玉くらいはゆうにあります。
「今年のナガノパープル、出来はいいよ〜」
今年の陽気は、暑さに加えて雨が少なく日照時間が多かったことで、例年以上に甘味がのって粒も大き目ということです。だから今年のナガノパープルは絶対に食べ得!ではないでしょうか。ちなみに、甘さを示す糖度は通常ならだいたい18〜21度とされるなか、今年は9月頭の段階で既に21度となっていたとのことで、期待は膨らみます。とはいえ、ナガノパープルはただ甘いばかりでなく酸味を併せ持ち、爽やかな甘さが特徴です。
そんな今年の出来の良さに、安堵の表情を見せながら喜びもひとしおなのは、県北部のJA須高ぶどう部会小布施支部 生産部長の吉澤修(おさむ)さん。吉澤さんが暮らす小布施町、そしてお隣の須坂市や高山村を管内とするJA須高は、昼夜の寒暖差が大きいこと、そして年間700〜800ミリという県内でも降水量の少ない気候風土がブドウ栽培に適していて、長野県でも有数のブドウの産地です。なかでも巨峰は日本一の生産量を誇り、全国の9割以上を生産しています。吉澤さんを始め多くの生産者が巨峰栽培を手掛けるなか、今からおよそ10年前、突如として姿を現したのがナガノパープルでした。
長野県果樹試験所(須坂市)が育成し、平成16年に品種登録となったこのナガノパープルは、種が無く、しかも皮ごと食べられるといった、今でこそこの特徴をもつブドウは幾つかありますが、その当時としては全国初の存在でした。そして吉澤さんもその頃から栽培を始めたといいますから、今年で栽培歴も9年目を迎えます。
吉澤さんは昨年「長野県園芸特産振興展第44回うまいくだものコンクール『ナガノパープルの部』において県知事賞を受賞した、いわば長野県一おいしいナガノパープルを作る生産者でもあり、技術面で周りから頼りにされるスペシャリストです。
そんな吉澤さんがこの栽培で一番こだわっていることをうかがえば「味です!」と即座にキッパリ答えが返ってきました。そんな納得のいく味にするためには「葉っぱ1枚に対して、ブドウ1粒というのが理想なんです」と話します。「葉っぱが太陽の光りをたっぷりと浴び、その光合成によって一枚の葉っぱが粒のひとつに働きかけ、味の良い甘いひと粒ひと粒に仕上がるのです」と。
ひと枝に着ける房の数を通常の割合より少なく抑えることや、摘粒作業によって30〜35粒ほどに調整することも、ひと粒ひと粒に行き渡る栄養(味)を良くしていくのに欠かせない作業なのだそうです。また、ひとたび風が吹けば軽い葉っぱなどはすぐに重なり合ってしまうものですから、葉の向きを整え、余計な枝葉や新芽等を取り除きながら枝をちょうどよい位置で固定するといった地道な木の仕立て作業も必要になってきます。
こういった作業を根気よく行うことによって、自由奔放、好き勝手に枝葉を伸ばすツル性植物のブドウの木が、吉澤さんの園ではなんと整然として美しく育っているじゃありませんか。あの手ごわい枝やツル、葉っぱはどれも手なずけられている様子で大人しく皆同じ方向に伸びています。まさにひと粒ひと粒に愛情の注がれ、それが集まってできた房がおいしさの結晶に見えました。
ところでこのナガノパープルは「巨峰」と「リザマ−ド」を掛け合わせたもので、食べる側にとって美味しいのは嬉しいことなのですが、生産者にとっては、裂果(粒が割れ易い)しやすいなど、生産者泣かせのブドウです。しかも裂果する時期は、収穫間際に起こるというのですから・・・。
けれどそんな特徴も、長年の巨峰栽培で培ったノウハウを活かしながら克服し、忙しい時はお手伝いさんを呼んで作業を手伝ってもらうといいますが、通常は奥様の悦美さんと二人で作業をしています。腕を長時間上げながら木を仕立てる地道な作業などは、想像しただけでも大変そうですが、「収穫の喜びがあるからブドウづくりはちっとも苦にならないの」とさらりと笑って話すとても頼もしい奥様とともに二人三脚で長野県が誇るナガノパープル作りを支えているのです。
22日は「ぶどうまつり」
そのおいしさに全国各地で着実にファンを増やし「いつから出る(販売される)の?」と県外からも多く問い合わせをいただくナガノパープルですが、そんな人々の声に応え是非たくさん召し上がって欲しいと年々生産量を増やし、JA須高では今年一箱4キロ換算で48,000ケースを目標にしているそうです。もともと地元須坂市で開発されたこの長野県のオリジナル品種はJA須高管内で現在県内生産の7割を占め、またJA須高のぶどう部会員が1,010軒いるなか、350軒ほどの農家が栽培しています。さらに周辺の中野市や千曲市、長野市などブドウ栽培が盛んな県北部一帯でもこのナガノパープルの栽培が今盛んにおこなわれいているところです。このナガノパ―プル、栽培されているのは長野県だけですので、信州にお越しの際にお土産にいかがでしょうか。
柔らかな歯応えの皮を持ち、皮を剥かずに食べられるナガノパープルは、種もありませんから、お子様でも心配をせず、安心して召し上がれます。また須坂市や小布施町など地元の小学校では、これが食育事業の一環として給食に出されるというのですから、羨ましいかぎりですね。
ところで、ナガノパープルも食べたいが、もっといろいろな種類のブドウもたくさん食べたい!という好奇心旺盛な欲張りな方にお知らせです。今月22日の土曜日「すこう ぶどうまつり2012」が開催されます。当日限りでお買い得な各種ブドウが販売されるほか、先着200名には「食べきりブドウ」がプレゼントされるとのこと。またぶどうの粒当てクイズや時間を区切ってのブドウの試食など、様々なお楽しみ企画が盛りだくさんです。もちろん大切な方への発送も可能。「天候に恵まれた当たり年。特に今年は自信があるナガノパープルを、是非食べてみてください」と吉澤さん。
JA須高のナガノパープルは、10月中旬まで出荷が行われ全国に発送されていきます。
◇JA須高 ブドウ祭りに関する情報
日時:平成24年9月22日(土曜日)9:00〜16:00
会場:A・コープすこう店 アグリス特設会場
住所:須坂市高畑1080−1
電話:026−248−8888
祭りに関する問合せ先:JA須高 営農生活部
電話:026−245−0153