冬の風物詩ともいえる「ながいも」の掘り取りがピークを迎えています。冷たい風の吹くなかの作業はつらいものがありますが、掘り取ったりっぱな「ながいも」をしみじみ見ると、そんなつらさや疲れも吹っ飛んでしまうほとの見事なもの。昔から「夏の麦飯、とろろ飯」といわれてきたように、日本の美味しいものの代名詞に使われるほど「ながいも」は貴重なものだったのです。
信州では古くから栽培
今では、青森県と北海道が圧倒的なシェアを占める「ながいも」ですが、長野県での栽培の歴史は古く、松代藩真田十万石の時代より自家用栽培の形跡があって、明治時代にはすでに県下各地で主に自家用として作られていたようです。戦後になると、北信州千曲川沿岸の沖積地帯(砂地)で、販売用のながいもの栽培が本格化しました。さらに昭和40年以降になると、畑の深いところを効率的に耕せるトレンチャーが導入されて、東筑摩郡山形村をはじめとする県内の火山灰土壌の各地区でも急速に栽培面積が広がりました。
ながいもはヤムいも
ながいもは、「ヤマノイモ科ヤマノイモ属」の植物で、原産地は東南アジアの森林地帯。他にも偏平な形が特徴の「いちょういも」(関東ではやまといもとも呼ぶ)、ゴツゴツとしたこぶしの形をしている「つくねいも」、細長く山野に自生している「じねんじょう(自然薯)」などがあります。とにかくヤマノイモには種類が多く、どれも東南アジアやポリネシアの人たちが聖なる食べものとしているタロイモの一種で、日本列島では縄文時代から栽培されています。英語ではヤマノイモ全般を「Yam(ヤム)」といいますが、「うまい! おいしい!」をあらわす「ヤミー(Yummy)」とも、きっとどこかで関係あるのかもしれませんね。(Yum はマヤ文明の基礎となった聖なるトウモロコシの神さまのことだともいわれます)
収穫期のながいも畑
|
|
信州ながいもの歴史
長野県のおもなながいも産地は、中信の山形村と北信の松代地区。松代は、善光寺平の西に位置し、その昔、武田信玄と上杉謙信の川中島合戦の場として有名なところ。南北に千曲川の清流が流れ、暴れ川として古くから地元住民を苦しめましたが、水害のたびに肥沃な土壌がもたらされました。ここに、昭和5年頃、先駆者の手によりながいもが作付けされ、全国シェアがナンバーワンになるまで生産が拡大しました。昭和40年頃には、なんと全国で松代産のながいもが6割を占め、昭和47年には、県下で100万ケースを越える長いもが出荷となっています。
しかし、そのころからさまざまな病気(褐色腐敗病、ウィルス症など)が大きな問題となってきました。ながいもの一大産地であった千曲川沿岸は、この病気や青森県での生産拡大による価格の下落により年々生産量も減少し、他野菜や果樹類への品目転換が盛んに行われるようになっていきます。この結果、今では、長野市松代(JAグリーン長野管内)が唯一の産地として残りました。その松代でも、アスパラや巨峰への転換が盛んに行われましたが、岩野地区ではまだ、ながいも畑を見渡すことができます。
一方の山形村(JA松本ハイランド管内)では、昭和43年に10万ケース、53年に20万ケース、平成3年には30万ケース出荷と順調に生産量も伸びて、今でも作柄の良し悪しがあっても年間に30〜35万ケースの出荷を保っています。山形村はもともと種用のながいもの産地であり、その原種イモの確保と維持・繁殖が可能でした。これがウィルス症蔓延などの幾多の困難を乗り越えられてきた大きな要因と思われます。
火山灰土の赤土からできる山形村のながいもは、甘味があって特に粘り気がよいのが特徴。千曲川沿岸(松代地区)沖積地帯(砂地)のながいもも甘くて、粘りはあるのですが、山形村産に比べるとサラッとしたながいもを楽しむことができます。
畑にあふれる土の香
収穫のピークをむかえた松代町岩野地区のながいも畑におじゃましました。昔はこの太くて長いながいもを掘り出すのがとっても大変な作業だったといいますが現在は、バックホーを使って、ご覧のとおり簡単に掘り出すことができるのです。このバックホーで、イモとイモの間を1メートルほど掘り、スコップで土を崩しながら傷つけないようにながいもを掘り出していきます。掘り出したばかりのながいもは土の香りでいっぱい。土を触れてみると、サラッとしていて石や礫がひとつも混ざっていません。そんな土壌で作られるながいもだからこそ、甘くて粘りのある美味しいながいもができるのでしょうね。
ながいもTIPS
切った切り口が変色しても問題なし ながいもを切ったりすったりして、空気に触れると酸化して褐色に変化することがありますが、食べるには何ら問題はありません。変色を防ぐには皮をむいたらすぐに酢水につけておくといいでしょう。
さわると手がかゆくなる?! 皮をむいたりすったりすると手がかゆくなる場合がありますが、これは皮付近に存在しているシュウ酸カルシウムの針状の結晶が壊されてバラバラになり、手や口などにささってかゆみが発生します。シュウ酸カルシウムは酸にとても弱いという性質をもっていますので、あらかじめ酢水につけてから料理するとかゆみは起こりません。かゆみが起こったときには、レモン汁をかゆくなっている部分につけたり、食酢を薄めたもので軽く洗い流すとかゆみがたちどころにおさまります。
すりこ木でもう一度擦る 生で食べられるイモはながいもだけといわれるぐらいで、普通はすりおろしたり短冊に切ったりして食べます。すりおろすときはおろし金(できれば金属製でないもの)ですったあとで、再度すり鉢とすりこ木でもう一度すると、なめらかで美味しくなります。
だから食べてくださいね
ながいもはヤマノイモのなかでは粘りが少なくサクサクとした歯ごたえが特徴で、デンプン分解酵素のアミラーゼやタンパク質、ミネラルを多く含みます。漢方では「山薬(さんやく)」といって、糖尿病や、滋養強壮に効くとされる「八味地黄丸(はちみじおうがん)」の成分でもあります。もちろん大人にとってだけ優れているのではなく、子どもの成長に必要なアミノ酸のアルギンも、ビタミンCやB群とともに含まれており、特に生食でのタンパク質の含有量は、野菜の中で一番です。それでは家族にヤミー!と喜ばれる「ながいもシェイク」のレシピをお教えしましょう。え? なに? ネバネバが気になる? 大丈夫ですよ! ほとんどネバネバしませんから。朝食やおやつにぴったりなんです。
一杯で栄養たっぷり!
「長いもシェイク」(4杯分)
材料
- 長いも...100g
- 牛乳...200cc
- ヨーグルト(プレーン)...大さじ2
- 砂糖...大さじ2〜3
- 季節のくだもの(リンゴ、イチゴ、キウイフルーツ、バナナなど)...適量
作り方
- 長いもは皮をむいて、2、3cm角に切る。
- くだものも一口大の大きさに切る。
- 材料を全部ミキサーに入れて、1、2分ミキシングして出来上がり。
信州松代ながいも祭り開催中
JAグリーン長野松代農業総合センター直売所で12月26日(月)まで信州松代ながいも祭りを開催しています。しゃきっと歯ごたえ、粘りが自慢の松代のながいもが大変お得なお値段で手にはいります。贈答にいかがでしょう。もちろんお持ち帰り限定お得な家庭用ながいももあります。他にもごぼう・にんじん・辛味大根の贈答や旬の野菜・くだもの・きのこなど特別価格で販売しております。11月23日(祝)は新米試食会&きのこ汁をサービスも。ぜひお立ち寄りください。
JAグリーン長野松代農業総合センター直売所
住所:長野市松代町東寺尾3588 地図
電話:026-278-9595
営業時間:AM8:45〜PM3:30
JA松本ハイランド農産物大収穫祭
ファーマーズガーデンやまがた・やまべで11月19日、20日と11月26日、27日に開催されます。新米と新ながいものとろろ汁が試食できます。詳しくは以下のウェブサイトへ。