キノコ

いつものエノキタケが違って見えますように

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冬の食卓の主役といえば鍋料理です。この鍋料理にひんぱんに登場する食材であるのが「エノキタケ」。で、問題は、これが一体どんな様子で栽培されているのかを、みなさんはご存知ですか? 日本で一番エノキタケの栽培が盛んな長野県の北部に位置する中野市から、今回はエノキタケの栽培の様子を密着レポートします。就農してから17年、ご実家でエノキタケの栽培をはじめてからは約35年になる山本淳一(やまもとじゅんいち)さんの施設を見学させてもらいました。山本さんは若手農業者を牽引するJA長野県青年部協議会でも活躍中です。それでは今夜の料理メニューに欠かせないエノキタケが、あなたに、いつもと違って見えますように。

成長に合わせた気配りが大切
キノコの栽培は空気の管理と衛星面での管理に特に気を遣います。空気の管理とは温度や湿度、そして空気中の二酸化炭素濃度の調整のことです。エノキタケの栽培施設には小部屋がいくつもあり、各部屋ごと成長に合わせた空調管理が行われます。栽培のはじめは温度15度、湿度95度、菌が繁殖しやすいように小部屋は暗くしてあります。

きのこの栽培には農薬は使いません
エノキタケはポットの中で育ちます。中には「培地(ばいち)」と言われるトウモロコシの芯を粉にしたものや米ぬか、ふすまなどの栄養素が入っており、ずっしりとした重みがあります(写真右)。ここにエノキタケの菌が入れられ、栄養素がたっぷり入ったいわばベットで育てられることになります。ちなみに左のポットは既にエノキタケを育ち終えたものです。すっかり栄養分が抜け、ポットの重量も軽くなっています。

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エノキタケの栽培に限らず、キノコ栽培には農薬はまったく使いません。他の雑菌が入らぬようにするのは必須の作業です。

芽が出るまでは気が抜けない
5日もすると培地の入ったポットの表面が白くなってきます。ここから温度を少し下げて室内の空気を循環させるようにします。エノキタケの栽培で山本さんが最もポイントとおっしゃるのは「芽だし」の作業。キノコ栽培は芽が出る様子で8割方、出来の良し悪しが決まるからです。

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5日目。培地の入ったポットの表面が白くなりました

「芽だし」の状態が良ければ、ひとまずキノコの成長が約束されたといってもいいのです。芽がニョキッと培地から顔を出すまでは他の雑菌などに特に弱いので、神経をつかうといいます。またエノキタケの菌から芽がでるまでは、同時に空調管理にもよりいっそう注意するといいます。

芽が出てからはゆっくりと育てる
こちらがめでたく芽が出たエノキタケ。「ちっちゃい!」と思わず目を凝らしてしまうほど、小さなエノキタケの芽が顔を出しています。

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こちらは栽培開始から12日目。ここからは部屋全体に光を当てる「抑制」という作業に入ります。成長途中なのに「なぜ抑制を?」と不思議ですが、これは縦に伸びてゆく性質のエノキタケをゆっくり成長させることで、身を横に太らせてあげるためです。

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だいぶ芽が大きくなってきた20日目、ポットの口の周りにロウを全体的にしみこませた紙を巻いていきます。近頃はより収益性を高めるためにビニール製の物を使う生産者も増えているのですが、きのこの品質保持の観点からすると紙製のほうが良いようです。したがって山本さんは今も紙製の巻紙を使用しています。芽がキレイに縦に揃って伸びてゆくように、支えてあげるのですね。ロウを使う理由はエノキタケ自体がほぼ水分で出来ているので、普通の紙では濡れてしまうため、破水効果のある紙が必要なのです。

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ここまでくればエノキタケがさらに自分の体を横に太らせるために、ぐっと温度と湿度を下げます。かなりひんやりする部屋で、出荷をまちます。出荷はおおよそ栽培開始から25日目。山本さんの栽培施設にエノキタケの菌が入ったポットが運び込まれる前に、まずJA中野市の培養センターにて21日ほど栽培期間がかけられるので、実際のエノキタケの栽培期間は46日目ほどになります。

環境に素直に反応して育つエノキタケ
エノキタケの収穫もちょっと意外な方法です。エノキタケの"頭"ではなく、"わき腹"をわしづかみにし、そのまま「パキッ」と横に折るのです。じつは収穫直後のエノキタケは一本一本が面白いくらい「パキッ」と折れるのです。

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山本さんの施設では、この後200gずつ小分けにし、袋詰めにしていきます。紙を巻く作業から、収穫、袋詰めまでほとんどの作業がここで行われます。一部屋に400ケース、合計6,000本のポットがずらり。一ケースの重量は腕もしびれるかなりの重さです。これを毎日人手で運び入れる作業はかなりの労力がかかります。

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エノキタケを見たら思い出して
中野市のエノキタケ栽培は年中行われていますが、やはり寒さの厳しいこの時期が最盛期。体にいい健康食材としても注目されているエノキタケはこのように栽培されています。エノキタケが周囲の環境に素直に反応して育つ姿を知っていただければ、当たり前のように店頭に並んでいるエノキタケへの親しみが湧いてくるかもしれません。


合わせて読みたい:

 ・体に良く効く「えのき氷」はこうやって作る
 ・菌食者になろう マイコファジスト・ガイド
 ・プロジェクトEーーエノキタケ誕生秘話


メニュー情報:

 ・JANakanoshi/クックパッド (JA中野市販売営業室がインターネットの人気料理サイト「COOKPAD」でキノコレシピを公開中。現在までのレシピ総数は137!)


関連サイト:

 ・JA中野市ホームページ

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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