「ナツハゼ」と聞いて、この名前だけでピンとくる方は、野山に精通している方か、健康に深いこだわりがある方といえるでしょう。「長野県のおいしい食べ方編集部」は、このすこし耳馴れない植物の実体を探るべく、ちょうど収穫期を迎えているという噂を便りに、長野県の北部にある信濃町(野尻湖や小林一茶生誕の地などで有名)にある佐藤農園に出かけました。そこはのどかな田園と里山が広がる風景に癒される場所で、斑尾(まだらお)山へと続く山際の畑には、数百本もの枝を広げた背の低いナツハゼの木が広がっていました。
それはブルーベリーの親戚
ナツハゼとは、ブルーベリーと同じツツジ科スノキ属の植物で、漢字では「夏櫨」という字を書きます。成長すれば高さにして2〜3mになる落葉低木樹です。5〜6月には釣鐘(つりがね)状の赤みをおびたかわいい花を咲かせる木ですが、取材した時には、既に一部紅葉した葉っぱと1cm弱の黒色の小さな実がびっしりついた姿でした。
収穫時期を迎えたナツハゼの畑では、佐藤農園の佐藤洋子さんとちょうど帰省中の娘さんのお二人が出迎えてくれました。通常佐藤さんはご主人とお二人で、ブルーベリーやルバーブも栽培され、信濃町インター近くの道の駅やジャム製造会社などへ販売をされています。
ナツハゼって、どのようなものなんですか?
この辺りでは、ちょうど実が「ぶんぶくちゃがま」に似ているところから「ぶんぶく」と呼ばれてるんですよ。木によって葉の色づき、実の大きさも違って、最近では庭木として人気が出てきて、園芸店でも苗木が販売されています。
なるほどだから「ぶんぶくベリー」ですか。やや赤みのある実もありますが、黒い色が宝石のようですね。ところで栽培のきっかけは?
きれいでしょう? 黒い真珠なんて呼ばれるんです。栽培は、父が20年以上前から山から移植し育ててきた農園を4年前に受け継ぎ、現在にいたっています。ここは標高が660mになるんですが、主人は、ここの標高が栽培に一番適していると話しています。他ではあまり栽培されていないようですが、作られている場所の標高は高めみたいです。
ところでナツハゼの利用法は? どうやって食べるのが一番いいのでしょうか?
皮がやや厚めなこともあり、生食される方はあまりいません。ジャムにするのがいいかと思いますが、リキュール漬けにすると見事なまでに鮮やかな赤紫色のお酒ができるんです。最近は軽井沢の料理人さんからも、食前酒やデザート用などに引き合いも出てきています。私は染物をするのですが、ブルーベリーよりも濃い紫色が出るので、すてきなマフラーもできるんです。
スグリに似た懐かしい味
生食される人はあまりいないといわれながらも、とりあえずひと粒口の中へ入れてみると、「プチッ」と皮の中から果汁があふれ出て、甘酸っぱいやや渋みもあるスグリに近いような懐かしい味。酸味が苦手でない方なら十分いける味です。ジャムにしたものはブルーベリーのような味で、ヨーグルトやケーキなどとの相性は抜群です。
栽培されて苦労やこだわりは何です?
毎年収量を増やしており、昨年は200kgほど収穫できました。でも今年は、6月頃の低温が原因でしょうか、半分くらいになるかもしれません。ここは豪雪地帯で、冬場の雪囲いが大変なのですが、ブルーベリーに比べ枝が細くても山のものだからでしょうか、雪で枝が折れても樹液で折れた部分がふさがり、枯れずに再生し、実がつく強さがあるんです。鳥獣被害もブルーベリーに比べるとほとんどありません。そんな強さとこだわりもあって農薬や肥料は使わずに栽培しています。
最後に消費者の皆さんへのアピールポイントをお願いします。
まずポリフェノールがとても多く含まれており、身体によいことです。特に外国産でなく日本で自生している純国産の品種というところがよいところだと思っています。さらに発色が良いので色んな料理への応用が期待できる注目の実ですので、ぜひ使って食べてほしいですね。
ポリフェノールの多さで注目集める
ナツハゼの実は、目の疲労回復や血液浄化作用などに効果があるとされるアントシアニン等ポリフェノールがブルーベリーの2〜3倍も含まれているといわれ、活性酸素を消去する働きが高いといわれます。今後ますます注目されるようになる純国産の食材といえるでしょう。
ナツハゼの実。あまり馴染みない植物ですがその秘めた生命力の凄さの一端を今回は知ることができました。佐藤さんもじょじょに生産量を増やす計画で、今後さらなる楽しみがふくらみます。佐藤農園でも収穫と販売は通常なら10月末まで行われているのですが、本年は異常気象の影響もあり、早めに終了するかもしれないとのことですので、興味のある方はお早めに連絡をしてみてはいかがでしょうか。
ナツハゼの実を購入ご希望の方は、佐藤農園までご連絡を。送料実費にて、宅配便で販売しています。
ナツハゼの実購入希望の方へ:
佐藤夏はぜ農園
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