「菌食」という言葉を知ってますか? 当ブログマガジンでは何度か取りあげていますのでご存じの方もおられるかもしれません。「菌食」とは、きのこだけでなく、カビやバクテリアの発酵を利用したみそ汁、ぬかみそ漬け、納豆、チーズ、日本酒、醸造酢も含めた食物の採り方をいいます。
近年「菌食論」が時を経て再び注目されているのです。「菌食論」は食の洋風化に伴って、菌食が減ってきたことによる日本人の体質形成(ガン体質化)を危惧して、菌学研究の大御所といわれた今関六也(いまぜきろくや)氏(1904-1991)が唱えたものです。これを受けて最近では宮崎大学名誉教授である河内進策氏が、きのこをもっと食生活に取り入れて健康生活を送ることを提唱され、菜食者(ベジタリアン)に対して、きのこを積極的に食べることを心がけている人を、マイコファジストと呼びました。
人間がバランスよく摂ることが望ましいとされる三つの栄養素があります。それは糖質、タンパク質、ミネラル・ビタミンです。これらは、植物、動物、菌類という3つの生物を通して摂取することが望ましいとされます。つまり、野菜、肉・魚だけでではなく、「菌食」によって三つの栄養素(科学的三要素)をバランスよく補うことが好ましいのです。
今回はJA全農長野発行『信州のそ菜』6月号に掲載された(社)長野県農村工業研究所(長野県須坂市)所長・西澤賢一氏の記事「きのこ栽培指標から『きのこの機能性』」を参考・引用しつつ、きのこの"機能性"について紹介しましょう。
"機能性"とはどのような働きのことか?
食品の機能には3つの機能があります。ひとつ目の機能(一次機能)は、栄養素を人の体へ供給する役割(栄養的価値)です。糖質、脂質、タンパク質、ビタミン・ミネラルなどがこれにあたります。ふたつ目の機能(二次機能)は、嗜好特性などのおいしさを示す感覚機能です。肉質、水分、香りなどがこれにあたります。
そして注目したいのが3つ目の機能(三次機能)です。これは人の体に及ぼす生体調節作用、いわゆる機能性といわれます。免疫の活性化、生体の内部環境を一定の状態に保つ働きを維持する機能(生体恒常性の維持)、疾病回復機能、生活習慣病の予防と改善などがこれにあたります。われわれの体にきのこが効くか効かないか、効くのならどう効くのかの鍵を握っている部分です。
(社)長野県農村工業研究所などが取り組み、報告してきた主なきのこの機能について、記事のなかで次のように説明されています。
1、抗腫瘍活性(こうしゅようかっせい)
食用きのこには、制がん作用、発がん防止作用、がん移転
抑制効果があります。この機能は長野県主要きのこである
エノキタケ、ブナシメジ(やまびこしめじ)について、池
川先生をはじめ、国立がんセンター研究所、JA全農長野、
JA長野県厚生連北信総合病院、(社)長野県農村工業研
究所などで実証され、その効果が確認されています。
2、抗アレルギー作用
きのこを摂取することにより、アレルギー体質が改善され
る可能性があります。(社)長野県農村工業研究所が県立
静岡大学薬学部との共同研究で検証されました。
3、血流改善作用
きのこの血液流動性に及ぼす影響について(社)長野県農
村工業研究所、長野県衛生公害研究所、JA中野市がなど
が共同で研究を行った結果、血流改善作用が確認されまし
た。検証はナメコ、やまびこしめじ、エノキタケで行った
ところ、ナメコが最も高い効果を示し、次いでやまびこし
めじ、エノキタケが血流の改善を促す効果があると実証さ
れています。
4、その他
そのほか、ヤマブシダケにはアルツハイマー病の予防や治
療に有効的な神経成長因子(NGF)の合成を促す物質が
存在すること、シイタケにはコレステロールを下げる働き
があることなど、きのこの機能性については多数の報告が
出されています。
西澤賢一氏は記事の締めくくりに、「大切なことは、きのこは薬ではなくあくまでも農産物(食品)であることを前提に、さまざまな情報を適切に理解し、食を通じて自分で健康管理を行うことである。まさに"菌食のすすめ"である」と述べておられます。
この情報を理解され、みなさまの生活に「菌食」を意識的に取り入れて、ぜひ毎日の健康維持にお役立てください。
関連サイト:
・社団法人 長野県農村工業研究所(長野県須坂市)
・マイコファジスト 菌食ではじめよう健康生活!(信州きのこマイスター協会)
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