縄文から続くエゴマの味を再発見しましょう

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その地域では大人から子供まで、今でも好んで食べているそうです。一般に"エゴマ"といわれるその作物は、場所によっては"イクサ"、"エクサ"、また東北地方では"ジュウネ"、"ジュンネン"など、さまざまな呼ばれ方をします。

このエゴマを地域の特産品としているのが、長野県北部の長野市鬼無里(きなさ)でした。ここは春、日本一の規模を誇る奥裾花園(おくすそばなえん)の水芭蕉、そして新緑の頃のブナ林、また先月には奥裾花渓谷の紅葉が辺り一帯を見事な景色に染めあげていた、そんな自然豊かなところですが、山間のこの場所では昔から畑作が中心で、その畑の一角で昔からエゴマの栽培が盛んにおこなわれてきたのです。

縄文時代からの栽培食料のひとつ
しかしこのエゴマ、主に自家用として栽培されることが多いために、あまり多くは出回りません。しかし日本列島における栽培の歴史はとても古く、発掘調査の結果から、5千500年前の縄文時代にはすでに栽培されていたことが判明しています。いわゆる「縄文クッキー」と呼ばれるクッキー状炭化物からも種子が検出されていることから、食用加工されていたことは間違いないと思われます。

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そして9世紀後半の平安時代末期に、当時の都であった京都の離宮八幡宮の宮司がエゴマの搾油機を考案して以来、灯油(ともしびあぶら)の主流になり、戦国時代までにはエゴマ油がもっぱら灯油として使われるようになっていったといいます。いうならばこの500年間ほどがエゴマ油のブーム時代ですね。しかしそれも江戸時代に入ると、菜種油の普及に伴ってエゴマ油の利用は急速に減少していき、明治以降は灯油としてのその名を記憶にとどめる人も少なくなっていきました。

エゴマの収穫にあわせて鬼無里へ
エゴマは穂から種がポロリと2、3粒こぼれ落ちると、それが収穫時期のサインということで、およそ4週間程前、収穫を行っている北澤叶地(きたざわやすくに)さんの畑を訪れました。

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畑に近づくと、ムワッとする独特のシソの匂いが鼻を刺激してきました。「とってもいい香りでしょう」そういってニコニコと微笑む北澤さんが「エゴマは"ゴマ"がついていても、ゴマとはまったく別のもので、シソ科の作物。しかもシソよりももっと香りが強いんですよ」と教えてくれました。さらに続けて、

「実はこの匂いのせいで、周囲の山からやってくるお腹を空かせた猿たちは、同じ畑に植えてあるネギやモロッコインゲンなどはごっそりと食い散らかしていくのだけれど、このエゴマだけは食べないできれいに残していくんだよ」

現在までこの山間の冷涼な気候の中で脈々とエゴマが栽培されている理由のひとつがそれだったのです。ちなみに北澤さんはエゴマを"エクサ"と呼びます。

egoma_2.jpg「昔この辺りではどこの家でもエクサを栽培していて、子供の頃からよく食べていたもんだ。今では栽培する人も減ったが、それでも今でも大人から子供までこの土地の人はみんなこのエクサが好きでそばやうどんに掛けてよく食べるよ」

シンプルな食べ方が一番おいしい
食べ方としては、エゴマをすり鉢で擦って水で延ばし、使う調味料は塩だけ、といういたってシンプルな味付け。その素朴な味わいを鬼無里の大人も子供も好み、一年中そばやうどんのタレとして食べるのですが、年末年始の来客には、このエゴマのタレをお雑煮に掛けたものでもてなすのです。

昔は油を絞っていたこともありましたが、たいして量が取れないことから今ではタレとして食されることのほうが多いエゴマです。しかし注目したいのはその効能でした。エゴマにはアルファ・リノレン酸という体に良い油が多く含まれており、血圧を下げ、血栓を解消し、血液の流れをよくする効果や、アレルギー症状、アトピー性皮膚炎等にも効果があると言われています。

エゴマの魅力に惹かれて目の前にあるエゴマがすぐにでも食べられると思ったのですが、実はこのエゴマ、収穫してから実際に口に入るまでに1ヶ月近くの時間を要するものだそうで、エゴマを刈り取ってから北澤さんにはとても多くの作業が待ち構えているのでした。

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エゴマが口に入るまで
まず、樹に付いた虫を振るい落としてからしばらく乾燥をさせたあと、穂を叩いて実を落とし、トウミ(唐箕)を使って枝葉と実を選り分け、実の部分を水に入れて付着していた砂や小石を取り除いたあと、最後に再び乾燥させるといった数々の作業が待ちかまえています。これら一連の収穫後にかかる手間のためか、「今ではエゴマを栽培する人も少なくなったなぁ」と、ポツリと北澤さんは言いました。

11月いっぱいなら手に入るかも
egomabook.jpg今、このエゴマは長野市鬼無里南町の農林産物直売所「ちょっくら」(電話026−256−2450)で11月の間は売り切れないかぎり販売されています。また直売所の近くではエゴマをおまんじゅうやクッキーなどにして販売もおこなわれています。そして今年は、市町村合併前の当時の鬼無里村で、村の生活改善グループにより編集製作されたエゴマのレシピ集の冊子もリメイクし「えごま〜簡単レシピ集」として復刻されて、長野市役所鬼無里支所(電話026−256−2211)などで300円で販売されています、そうしたレシピを参考に、エゴマ料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。

最後に「えごま〜簡単レシピ集」(発行 緑地振興研究機構)よりエゴマ調理の下準備方法を紹介しておきます。

エゴマ調理の下準備方法

1.フライパンにエゴマを入れて中火にかけ、2〜3粒跳ね出したら火を止める。
2.乾いたすり鉢で、軽くすり、鉢を傾けて外側に向け、軽く息を吹きかけて殻を飛ばす。

※殻を飛ばさずに、そのまま食べてもOKです。

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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