畜産物・酪農

おいしい牛肉はその牧場を見てから選びたい

shinshu_premiere_beef.jpg国内には数々の美味しいブランド牛があります。もちろん長野県だって、牛肉の美味しさでは負けていません。とはいえ長野県の牛肉の美味しさの認知度は今ひとつ、といったところでしょうか。そんなこともあって、今年3月、長野県では独自に「牛肉のおいしさの基準」というものを設け、現在県内にある10程の銘柄牛について、そのおいしさの基準を満たして特別に美味しいと判定された、品質の良い牛肉をPRする取り組みをはじめました。

今回の県による基準を見事通過した信州が誇るべき牛肉は「信州プレミアム牛肉」という名称で呼ばれています。ではどうやって美味しさの基準を決めたかといえば、"どこで生まれたか""何を食べていたか""誰に育てられたか"等について、健全に育てられたことが確認された農場から出荷された黒毛和種であり、格付等級(ジューシー感や香りに影響を与える肉と肉の間の脂肪「サシ」の度合い)と、脂肪の風味や口溶けに影響を与える旨味成分のオレイン酸の含有率、この両方が、定めた基準の数値を満たすものであるということが条件とされています。

happycow_1.jpg

取り組みははじめられたばかりで、最高級とされる「信州プレミアム牛肉」の認定を受けた生産者の数はまださほど多くはない状況にありますけれど、そのなかより今回は「以前から安定して良質な牛肉を生産している」と紹介をうけた中信・塩尻市片丘の竹淵牧場を訪れることにしました。

性格が穏やかでゆったりとした牛たち
竹淵牧場は松本平が一望できる高台にあり、晴れた日にはアルプス連邦の眺めが素晴らしく、通り抜ける爽やかな風を感じられる清々しい場所にありました。オーナーであり信州のカウボーイである竹渕浩(たけぶちひろし)さんは、20代でサラリーマンを辞め、家業の酪農をはじめてから30年以上になるそうで、当初は10頭だった牛も今では140頭にもなっています。

happycow_2.jpg

その牛たるや、圧倒されて思わず後ずさりしてしまう程の迫力。聞けば重量は平均800キロ。ただし彼らは年齢にしてまだ2歳半といいます。しかし体格に似つかわしくなく、みんなおとなしくてゆったりとした動きをする、性格がとても穏やかな牛たちなのでした。よく見るとみんなとても幸せそうな顔をしています、実はこのことが肉質に影響を与えるのです。竹渕さんは言います。

happycow_3.jpg

「外部からのストレスを極力与えないよう、ふかふかの気持ちのいい木屑などを敷いたベットを作り、風通しが良く嫌な臭いがしない清潔な環境の中で、食事と休息をたっぷり取って、毎日をゆったりとした気分で過ごせるように整えてやること」

happycow_4.jpg

牧場の最大の腕の見せ所
これにより美味しい肉質へと組織づくられることになるのです。しかし美味しい牛肉は、「血統によってすでに6〜7割がた味が決まってくる」と竹渕さんは教えてくれました。そこに餌や環境という要素を足して最大限の美味しさを引き出すのが竹渕さんの腕の見せ所になるのです。

美味しい牛肉となる要素として欠かせない餌は、竹渕さんが独自に配合を考えたものですが、麦やモロコシを主食として、まず子牛のうちは胃づくりのために牧草や大豆の皮を加えたものを、成長して18ヶ月目からは肉に旨みを出すための米ぬか等を加えるといいます。その他に肉の味が良くなるもの、さらに、毎日たくさんの餌を食べ続ける牛の胃を保護するためのもの、という3段階で成長に合わせて毎日朝と晩、1日10キロを与え続けるのです。

「病気になったりだとか、栄養成分のアンバランスによる発育への影響が起きないように、とにかく餌やりには大変に気を使う」と言う竹渕さんですが、ここで肥育されている牛は、地元周辺の木曽をはじめ県外などから約8ヵ月令(その時の体重はすでに270キロ)の時に競り落とされ竹淵牧場へとやって来た、いわば育った環境が様々な牛たち。

当然ケンカも起こるわけで、ケンカに負けた牛や、気の弱い牛などは、力の強い元気な牛が食事をした後でようやく餌にありつけることとなり、餌が十分に食べられなかったりだとか、また、あまり餌を食べようとしない場合もあるらしく、

「みんながきちんと餌を食べて、健康で同じ大きさに育つように」と、そんな様子をこの肥育作業を行なう竹渕さん一家の奥様と息子さんを含む3人は注意深く観察をしながら、大切に育てられて、牛たちはここで約21ヶ月の時を過ごし、(トータル約30ヶ月令(2歳半))になった頃ようやく出荷の時期が訪れるのです。

fartherandson.jpg

多くの人にこの牛肉を食べてほしい
実は、竹渕さんが育てた黒毛和牛は、畜産共進会において過去に農林水産大臣賞を2度も受賞していますが、そんな父親の姿を見つめながら自らも信州のカウボーイとなり今年で牛の飼育を手伝いはじめて3年目となる息子の洋平さんは、言います。

「(餌を食べない牛もいるので)とにかくみんな(牛)に餌を食べさせるのが大変。だけどいい状態の肉質になった時や、お客さんに『美味しかった!』と言われた時は嬉しいし、とてもやりがいを感じる」

しかし「もっと大勢の人がこの牛肉を食べて美味しさを知り、消費が伸びればいいのだけれど・・・」と、今は将来を夢みる前に先行きの不安を感じる方が大きいと言います。

牧場が和牛直売所を開設した
bekoya.jpg「まずは県内の皆さんにこの牛肉を食べてもらいたい」そう話す父親の浩さんは、3年前、牛舎の近くに和牛直売所「べこや」を開設しました。この直売所は毎月第4金・土・日曜日に開かれ、竹渕さんの牛舎で育てた黒毛和牛の肉が販売されるのですが、「待ってました!」とばかりにその3日間で140人程がこの直売所を訪れ、竹渕さんのお肉を買い求めていくほどの人気ぶりで、「もっと直売所の開催日を多くして」という声もあがっています。

eat_beef.jpg肉は、口に入れると実にやわらかく、脂肪の甘味と肉汁がじゅわじゅわ〜と口いっぱいに溢れて、これぞまさに至福のひと時。しかしあっという間に肉は口から消えて無くなり、そこには甘みと旨みの肉の余韻だけが残るのでした。たっぷりと入っている霜降りの状態のわりには以外にも実にあっさりとした味わいで、脂っぽく感じません。この美味しさを求めて、遠く東京の八王子などから買いに来るお得意さまもいるのだとか。

「でももうこれからは、息子に任せた」と父親の浩さんは淡々として言いますが、なんでも、若い農家の衆の集まりがあるとかで、その仲間と話し合いながら若者が築くこれからの農業に期待を寄せていると、父親は息子さんを信頼しています。

信州プレミアム牛肉を食べてみて
信州の豊かな風土の中で育まれた長野県が誇る「信州プレミアム牛肉」。プレミアムなだけあってお値段もなかなかですが、特別な日にはその場を一層記憶に刻まれるものに盛り立ててくれることとなるでしょう。今のところ数量もあまりないため、生産者とその取扱店は限られており手軽に何処ででも買うことができる牛肉とはなっていませんが、県公式ホームページを参考にして各店にお問い合わせのうえ、あなたも信州牛肉の美味しさを確かめてみてください。

竹淵牧場和牛直売所「べこや」
営業:毎月第4金・土・日曜日
時間10:00〜売り切れまで
住所:長野県塩尻市片丘北熊井8587−3
電話 0263−54−2924
アクセス 中央道 塩尻ICより車で5分(県畜産試験場近く)

参考サイト

● ウェブサイト信州 長野県公式ホームページ 信州プレミアム牛肉のページ 取扱店(販売店・飲食店)情報

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

1242745200000

関連記事

信州リンゴの新しい味わい方『毎日アップル』
果物

信州リンゴの新しい味わい方『毎日アップル』

長野県民は1年間に25万頭の豚肉を食べる
畜産物・酪農

長野県民は1年間に25万頭の豚肉を食べる

りんごの王様の出番がやってきました
果物

りんごの王様の出番がやってきました

酪農家のやさしさがおいしい牛乳をつくります
畜産物・酪農

酪農家のやさしさがおいしい牛乳をつくります

新着記事