厚生労働省が2013年2月末に発表した2010年都道府県別生命表で、長野県の平均寿命が男女ともに全国1位となりました。1990年の調査以来ずっと1位の座を守っている男性の平均寿命は80.88歳。そして今回は女性も87.18歳と、初めて1位になりました。日本一の長寿県となった長野県ですが、その秘密はいったいどこにあるのでしょうか?
いろいろな説が挙がっていますが、当編集部では、「『長野県のおいしい食べ方』の過去記事に、長寿の秘訣が隠されているのではないか?!」ということに気がつきました。ということで、今回は過去記事の中から長寿につながりが深い記事を厳選してご紹介いたします。
野菜の摂取量が多い!
過去記事をご紹介する前に、まずお伝えしておきたいことがあります。それは、「長野県は一人当たりの野菜摂取量が全国1位」であること。このことが長寿の秘訣ではないか、と言われています。その量は、1日あたり男性379g、女性353g(2006〜2010年)。しかも、地元で多くの野菜を作っているため、様々な種類の新鮮な"旬"の野菜を食べる機会が多いのもポイントです。旬の農産物には栄養素がたくさん含まれていますからね。
高齢者が生きがいを持てる!
高齢者が元気に生活できる、というのも健康で長生きする秘訣でしょう。長野県は、高齢者就業率も全国1位(2010年10月)。身体が動くうちは農作業を行う、という人が多く、やりがいを持って適度な運動をしていることがポイントのようです。
また、長野県は後期高齢者一人当たりの医療費が低いのも特徴です。
『長野県のおいしい食べ方』では、そんな元気なおじいちゃん、おばあちゃんに今までもたくさん登場していただきました。
・シリーズ「いつまでも若く」
県をあげての減塩運動
長野県民の健康を語るうえで忘れてはいけないのが、「県民減塩運動」です。長野県は昔から健康長寿県だったわけではありません。漬け物をつまみながら延々とお茶を飲むお茶飲みの習慣があるうえ、長野県の伝統的な食生活では塩魚や味の濃い味噌汁などが並び、塩分が多くなってしまうのです。脳卒中などの脳血管疾患による死亡率は50年ほど前には全国ワースト1位でした。
それを改善しようと取り組まれたのが県をあげての減塩運動でした。「漬け物の塩分濃度を減らす」「味噌汁は出汁を効かせて具だくさんにする」「塩ではなく香辛料や野菜で味にアクセントをつける」「ラーメンやうどんの汁は残す」など、無理せずできる減塩対策を啓発していったのです。
ただ、脳血管疾患による死亡率は現在でも比較的高め。県では新たな県民運動の展開も目指しているようです。
地域を盛り上げる発酵食品
健康を考える方にオススメなのが、信州の郷土食に多く見られる発酵食品です。味噌は信州の代表的な発酵食品で、生産量・消費量共に全国1位。漬物と同じく、塩分の取り過ぎに注意したい食品ですが、腸内免疫力をサポートする効果など、発酵食品が健康にいいことは様々な研究で明らかになっています。
さらに、信州にしかない特別な発酵食品「すんき漬け」が注目を集めています。木曽地方でつくられる漬物ですが、なんと塩を一切使いません。日本で唯一、食物由来の乳酸発酵を利用した漬物で、乳酸菌を豊富に含むことから腸内環境が整えられると言われています。
・「おかあさん奮闘!長野市大岡の手作り加工品」
・「地元を熱く!信州味噌『奏龍』のコラボ」
・「王滝村の『すんき』物語」
酸っぱさが魅力の「すんき」。
チャーハンやカレーに入れても美味しい
果物のアンチエイジング効果も!
野菜だけでなく、果物をたくさん食べるのも長寿の要因のひとつと考えられます。アンチエイジング効果が認められているポリフェノールを多く含むリンゴやブドウの名産地である長野県。ポリフェノールは皮に多く含まれているので、リンゴやブドウは皮ごと食べるのが大切です。リンゴは皮ごと食べたほうが品種の違いがよくわかると言いますし。ブドウの皮は固くて食べにくいことが多いですが、最近は皮ごと食べられる品種も人気です。中でも、長野県オリジナル品種の「ナガノパープル」は一押しですよ!
プルーンやスモモもお忘れなく。長野県では皮ごと丸かじりが基本です。
・「季節到来!リンゴの食べ方の基本を復習する」
・「 かわいいだけじゃないぜ!シナノピッコロ」
・「暑さの分だけ甘くなったナガノパープルです」
・「『ミラクルフルーツ』プルーンを生で召し上がれ」
菌食にも注目しましょう!
長野県は、きのこの生産量も全国1位(主要キノコ総計)。近年注目されているキノコの健康促進効果は、今どんどん研究が進んでいます。
ローカロリーでビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富なキノコ類はダイエットに最適。さらに、塩分摂取を抑えたり、腸内環境を整えたりと、健康づくりの強い見方です。
・「マイスターに聴く、きのこの機能と耳よりな話」
・「体に良く効く『えのき氷』はこうやって作る」
・「あなたもマイコファジストになりませんか!」
・「さんごヤマブシタケの美味しさと効能に驚き!」
地域との結びつき
他にも、長野県は人口当たりの公民館数が全国1位で、地域の結びつきや地域活動が盛んなことも、長寿県である要因のひとつと考えられています。齢をとっても仲間と一緒に何かができる、話し相手がいる、ということで生きがいが生まれているのかもしれません。
『長野県のおいしい食べ方』では、地域と一丸となった様々な活動についても取り上げてきました。
・「キャベツの収穫は、積雪150cmのその下から」
・「安曇野で大活躍!御用聞き車『あんしん号』」
直接健康長寿について取材したものはありませんが、今回過去記事を振り返ってみて、長野県の食には健康の秘訣がたくさん隠されていることが分かり、食と健康は切っても切れない関係だということを改めて認識できました。
ただ、「健康」を強く意識した食生活を送るのではなく、旬の物を、その本当の味が分かる調理方法で楽しく美味しくいただく、というのが健康への近道なのかもしれません。これからも『長野県のおいしい食べ方』では、みなさんに信州の"旬"をお伝えしていきます。