みなさんはアワ、キビ、ヒエといった雑穀に、どんなイメージをお持ちでしょうか。
米、麦といった主要な穀物以外のものだから「雑穀」と呼ばれるわけですが、希少性や健康・栄養面から改めて評価が高まっています。生物多様性の確保や気候変動対策の面からも注目を集め、FAO(国連食糧農業機関)は2023年を「国際雑穀年」としているくらいです。
食べるだけじゃない、ソルガムの活用
そんな雑穀のひとつにソルガムがあります。タカキビ、モロコシ(トウモロコシではありません)、コーリャンなどと呼ばれることもあるイネ科の1年草です。
コーリャンと聞けば、満州開拓に駆り出された人々の苦難を思い出されるのは、筆者の年のせいでしょうか。
ノーベル文学賞を受賞した中国人作家、莫言の代表作に『赤い高粱(こうりゃん)』があり、『紅いコーリャン』として映画化もされています。
話がずれました…。
そのソルガムが注目を集めています。
乾燥に強く、荒れ地でも栽培できる特性を生かして、中山間地に広がる耕作放棄地の解消に役立て、地域活性化の起点にする一方で、高い栄養価やグルテンフリーといった健康効果のある食品として利用するだけでなく、茎葉の利用を含めゼロカーボン社会に向けた活動にまでつなげようとする構想です。
ソルガムで地域を元気に!成果報告会
信州大学工学部の天野良彦教授らが長野市などを巻き込んで「信州そるがむで地域を元気にする会」という団体をつくって活動しています。本年度の成果報告会に合わせてソルガムを利用した製品を手掛ける団体を集めてマルシェも開くというので、のぞいてきました。
開会あいさつをする天野教授
報告会は本メルマガでも活躍している料理研究家の横山タカ子さんの記念講演「一汁三菜の食材の選び方」に続いて、4つの報告がそれぞれに取り組む企業、団体からありました。タイトルを並べます。
「食ビジネスにおけるソルガムの可能性について」
「信州産ソルガムを通じて農福連携に挑戦中」
「バイオマスエネルギー活用によるCO2排出量削減の取り組み」
「ソルガムを軸とする自然循環と経済の発展が両立した地域社会の実現」
主力商品となるソルガムの実は抗酸化力のあるポリフェノールを多く含み、リラックス効果が期待できるGABAなど健康面でも注目されています。穀物だけにお茶から酒、めん、クッキーなど、さまざまな料理に活用でき、グルテンフリーで小麦アレルギーの方にも朗報です。
茎や葉は建材やキノコ栽培の資材にも有望ですし、バイオマスとしてエネルギーにも使えます。栽培に手間がかからないといいますから、耕作放棄地が広がる中山間地にはもってこいでしょう。
では普及を阻む要因はどこにあるのでしょうか。
活動報告のトップバッターとして登場したソルガムの加工販売などを手がける長野市のベンチャー企業「AKEBONO(あけぼの)株式会社」の井上格社長に聞きました。井上社長は、長男が小麦アレルギーだったことも事業をはじめるきっかけになったと言います。
結局「多くの人がソルガムを買って食べてくれるようになること」に尽きるようです。
地域活性化のためとはいえ「栽培してもらっても売り先がなければベンチャー企業として仕入れるには気が重い」と率直に語ります。ECサイトでの需要が落ち着いたこともあって、今月から「縁-enishi-」と名付けた実店舗を信州大学工学部近くにオープンし、販売を始めます。
多様に展開するソルガムのマルシェ
クッキーやパン、発泡酒の食品にはじまり、燃料となるバイオブリケットや草木染の製品まで、多彩な応用の一端がうかがえました。
マルシェの様子
ソルガムへのイメージを改めた次第です。
来年度は、各家庭でソルガムを育てて食べてもらう、という狙いの活動を展開するようです。
ソルガムを軸とした地域活性化の試み——期待しましょう。