長野県の山でひたすら炭を焼き続けて30年

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薪ストーブといえば「薪」ですが、日本古来の囲炉裏(いろり)や火鉢(ひばち)といえば「炭」ですよね、炭。からだを暖め、心を癒してくれる炭。水を浄化し、悪臭を取り、肉や魚やごはんををおいしくしてくれる炭。風呂に入れたり、畑に入れたり、家の床下に入れたりして、人や植物などいろいろなものに力を与えてくれる炭。燃やして出るCO2は成長する木が吸収してくれるなどエコロジーとリサイクル社会を拓くとして見なおしが進む炭。

炭といえば、いわずと知れた「備長炭」が有名ですが、わが長野県内にも、それに負けないぐらいの質の良い炭を焼く、いわゆる「炭焼き職人」さんがいるのです。

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炭を焼き続けておよそ30年
長野県の上水内郡飯綱町普光寺(ふこうじ)地区で炭を焼く佐藤秀隆さん(50)は、土地の人ではなく新潟県松代町(現十日町市)出身。とにかく炭焼き職人になりたくて22歳のときに勤めをやめ、職人のいる長野県に仮住まいをしながら、炭焼きの技と心を学んできました。

当初は木の伐採など山の世話をしながら山中を転々として炭を焼いていたのですが、1989年、普光寺地籍の遊休農地を借りうけ、そこに手づくりの炭焼き窯を設置。現在は窯を3つ造り、念願の「炭焼き職人」として、忙しい毎日を送っています。

自然のなかでの仕事が楽しい
木炭に変わるオガライトや炭輸入の影響から、国内の炭焼き職人はめっきり減っており、また、国産木材が輸入に押されて伐採や改植が減り、森林整備がおろそかになるなか、木材を利用する佐藤さんは貴重な存在です。

「やめた方がいいよ。苦労だから」と、指導を受けた師匠からはいわれたそうですが、「とにかく自然が大好きで、山と木に囲まれた自然の中で仕事がしたかったんです」と佐藤さん。「いい炭ができたときがものすごくうれしいしね・・・」

奥さんと二人三脚で炭を焼く
昔から炭焼きは、冬場の仕事とされてきましたが、佐藤さんは通年で炭焼きを行っています。一回の炭焼きは6日間と、時間がかかりますが、奥さんの信子さんとともに二人三脚で作業に励んでいます。

炭を焼く仕事とはどういうものか
炭焼きの作業は、まず、近くの山の中に入り、佐藤さんの気に入ったいい木(ナラ)を見つけて購入するところからはじまります。1回につき1.5〜2トンほど伐採して、それを小屋まで運んできて、そこで薪割りをします。

一番大きな窯には、全部で1.5トンの材木が入ります。400−500度ほどにもなる窯の中に、生木を立てて入れていきます。窯が熱くなると、冬場でも汗だくになるほど暑いのだとか。

まずは1−2日間、口焚きをします。生木は水分があるので蒸気が出るからです。水分が出きって木が乾燥してくると、なんとなく甘酸っぱい(?)煙が出てきます。これを「炭化」といいます。

炭化がはじまると火が出てきますので、窯の入口を粘土や煉瓦で小さい空気穴を残してふさいでしまいます。

そのまま3−4日ぐらいすると、今度は白かった煙が青っぽくなってきます。まるで生きもののようですね。これは炭化が終わりに近づいているということを教えているのだそうです。

すべては窯のご機嫌次第
このように順調にすすめばいいのですが、湿気の状態などによって途中で火が消えてしまうこともあったり、空気を入れすぎて割れてしまったりと・・・失敗することもないわけではありません。

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最初に火をいれてから6日めで、ようやく窯出しになります。ほとんど夜中に出すことが多く、窯に左右されながらの生活だそうです。

焼きあがった炭は壊れやすいので細心の注意を払います。出したばかりの炭は約950度もあります。炭にも黒炭と白炭があって、佐藤さんが焼いているのは白炭。白炭は素灰(スバイ)といって、熱い炭を消火するのに使う灰をかけて冷ましていきます。そのように素灰をかけるのが、白炭の大きな特徴なのです。また、白炭は黒炭に比べると堅くて火持ちがいいそうです。

いい炭は音でわかる
いい炭は、打ち合わせると「カンカン」とほとんど金属音に近い音がします。いい炭かどうかは、この音で判断するのです。

「窯から出してみるまでどんな炭ができているかわからないから毎回楽しみですね」と佐藤さん。窯質、木の湿り具合、天気、焼き方、煙の出る角度・・・などによって、毎回微妙に違った炭ができるのだと。「なかなか思いどおりの炭ができないところがおもしろいよね」

直接注文してください
佐藤さんの炭は、焼き鳥店など業者へも販売しており、使いやすくて長持ちのするいい炭だと評判も上々です。最近では、灯油が高いことも影響してか、火鉢や薪ストーブを使う人が増えてきており、燃料として直接注文してくる人が多くなったといいます。

「いいものを作りたくてこだわりすぎても、販売が伴わなければ何もならない。炭のよさを見直してほしいし、もっとPRしていきたい」と笑顔で話してくれました。

佐藤秀隆さんは、炭のほかにも、木酢液や薪、きのこの原木も、販売しています。お問い合わせは電話か手紙で。

佐藤秀隆(さとうひでたか)
〒389−1206 長野県上水内郡飯綱町普光寺1214−31
026−253−7076

1202828400000

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