巷では「新そば」ののぼり旗がパタパタとはためき、里は紅葉に彩られる季節となりました。
なるほど、錦に染まる晩秋の信州を目で楽しみ、そして、新そばを味わい、さらに旬のリンゴをせっせと手に入れてと、このところの休日が何となく忙しい理由に、ようやく気付かされましたが、 "そば"といえば一般には、細く長い麺を汁につけて食べる"蕎麦切り"を指すもので、そのそばは、練って、延し(打ち)、切って、茹でる、とじつに技術と手間がかかる行程を経てできあがります。昔の山間部の農村地帯などでは、年中行事や祭礼、人生や仕事の節目などを祝う特別な食事=「ハレの食」として食されていたそば。大事なおもてなしに欠かせないご馳走として、「そば打ちが一人前にできなければ嫁に行けない」と言われるなど、そば打ちは嫁入り修行のひとつでもありました。
人々の暮らしを支えるそばの力
そば切りがハレの食とされていた一方、日常食を 「褻(ケ)の食」といいますが、たとえば、熱湯で掻いた"そばがき"や、そばがきを焼いたもの、また、団子状にしてタレを付けて食べるそば団子など、短時間で手早く作れる調理法も確立されており、忙しい人々のお腹を満たしてきたのでした。
高原地帯の冷涼な気候を好み、米や麦が育たない痩せた土地であっても、肥料や手間が要らずに生長するのがそば。その生長のスピードといえば「そばは75日」ともいわれるほどです。干害や冷害など、水稲ができないとわかった時点で作付け可能なほど生長が早いので、幾多の飢饉の窮地をしのいでくれた救荒作物でもあります。風にそよぐ可憐な白い花には、じつは何とも逞しいパワーが秘められているのでした。
そして、世界を見回してみれば、中国雲南省付近を起源とするそばは、世界各地で食されており、クレープやパンケーキ、パスタにお粥、スープやデザートなど様々な調理法で料理され、親しまれています。このように、そばは世界的にもポピュラーな穀物といえそうです。
「食とくらしの伝承塾」が伝える北信州の味
今回は、そば切りだけじゃなく、もっと手軽に味わえるそば料理をご紹介しましょう。昔風にいうならば「ケの食」となるでしょうか。簡単に美味しく作ることができますから、日々の食卓でも重宝すること間違いなし。ぜひお試しください。 教えてくださったのは、JAながの(長野市)女性部の有志で運営する「食とくらしの伝承塾」メンバーの方々で、メニューは「そばすいとん」「そばサラダ」「そばういろう」「そば団子」の4品です。
そばすいとん 作り方
4人分の材料
・だし汁1リットル ・味噌60グラム ・季節の野菜(白菜1/8株、大根300グラム、人参小1本など) ・油揚げ1枚 ・えのき1/2株 ・ねぎ1/2本 ・そば粉80グラム ・熱湯160cc
1.季節の野菜などお好みの具材を煮込んで味噌を入れ、汁を作ります。
2.そば粉を鍋に入れ、熱湯を加えて掻き混ぜたら弱火にかけ、菜箸4本か、または木べらで素早くかき混ぜます(生地がだんだん硬くなり、混ぜる際に力が必要になりますが、頑張りましょう)。
3.鍋を火から下ろし、熱いうちに手に水をつけながら、ひと口大に小さく丸め、中心をくぼませたら、汁にさっと入れて温めたら出来上がり。
そばサラダ 作り方
4人分の材料
・そば(乾麺)1/2袋 ・野菜(好みのもの)適量 ・米油適量 ・お好みのドレッシング適量
1.鍋に水を入れて沸騰させたなかで、そばを半分に折って茹でます。
2.茹であがったそばをザルにあげて水分を切り、麺同士がくっつかないように米油をまぶします。
3.野菜を千切りなど食べやすい大きさに切り、そばと共に皿に盛ります。
4.食べる直前にドレッシングをかけて出来上がり。
そばういろう 作り方
1本分の材料
・そば粉100グラム ・牛乳300cc ・砂糖120グラム
1.そば粉と砂糖をボールに入れ、砂糖のダマを潰しながら粉と混ぜます。
2.さらに牛乳を少しずつ加えて混ぜ合わせます。
3.2をザルに通して裏ごししながら、空の牛乳パックに流し入れ、中が流れ出ないよう口をガムテープでしっかり締めて、牛乳パックを横にして電子レンジ(500W7分)にかけます。
●ポイント
・最初は出来上がりが緩く感じるかもしれませんが、冷めるとちょうどよく固まります。
・ひっくり返して盛り付けましょう。その日のうちであれば軟らかい状態のまま食べられます。
そば団子 作り方
4人分の材料
・そば粉80グラム ・熱湯160cc ・砂糖醤油など好みのタレ適量
1.鍋にそば粉と熱湯を入れ、菜箸4本を使って勢いよくかき混ぜ、弱火にかけたらそのまま菜箸か木べらで、さらに力強く混ぜ、焦げ付かないように水分を飛ばします。
2.生地が熱いうちに、手に水をつけながら小判形に丸め、中心部は軽く押し付けます。
3.フライパンに薄く油を敷き、生地をこんがりとキツネ色に焼き上げます。
4.お好みのタレを付けてお召し上がりください。
●ポイント
そば粉を一旦熱湯で混ぜてしまうと、追加して水分を加えることができないため、慣れない場合は、フライパンに粉と水を入れてから、弱火にかけて徐々に温めながら混ぜる方法もおすすめです。
ちなみに、そばは長く放っておくと「風邪をひく」などと言い、空気に触れることで乾いて硬くなり、風味が落ちてしまうため、調理したてのものをすぐに食べたほうが美味しくいただけるようです。
今回料理を教えてくださったJAながの女性部有志の「食とくらしの伝承塾」は、会員が16名。そのうち当番制で数名ずつが講師となり、うえまつ農産物直売所に買い物にみえるお客様を対象に、月1回直売所の敷地内で料理講習会を行なっています。直売所に並ぶその時期その時期の美味しい農産物を使って、アイデアを加えながら調理のコツなどを教えてくれます。
うえまつ農産物直売所には、毎日生産者さんから新鮮な朝取り野菜がたくさん持ち込まれています。ミネラルたっぷりで美味しい新鮮野菜を、毎日の健康づくりに役立ててみませんか。
◆うえまつ農産物直売所
〒380−0802 長野市上松3−1−2
電話:026−234−2427
営業時間:9:00〜18:00(1・2月は17:00終了)
定休日:1月1日〜4日
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