中学生が制作!『白馬民宿ガイドブック』

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農業に関わる機会が少ない都会では、修学旅行で地方を訪れ、農業体験をする中学校が少しずつ増えてきているといいます。中学生が「農」や「食」について考えるいいチャンスとなりそうですね。農業が盛んなここ信州にも、食育に力を入れる中学校の生徒さんたちが毎年農村体験にやってきます。


そんな中学校のひとつが、東京都杉並区立和田中学校。今年も5月に3年生150人が北安曇郡白馬村を訪れ、グループに分かれて農家民宿に宿泊し、農作業などを2泊3日で体験しました。そして修学旅行でお世話になった民宿へのお礼を込めて、なんとなんと、生徒が自分たちの手で『白馬民宿ガイドブック』を制作してしまったというのです!

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提供:杉並区立和田中学校

東京の中学生が感じた白馬の魅力
「地元の食材や自家製の野菜を使った食事がおいしく、夢中で食べてしまいました。」「僕たちに家族のように接してくれました。」「野菜が苦手な私でも、すっかり山菜を好きになってしまうほど美味しい料理。」ページをめくる度、宿泊した生徒ならではの素直な表現が、一軒一軒の民宿の魅力を伝えてくれます。フルカラー34ページにわたり、白馬村岩岳地区とさのさか地区あわせて32軒の民宿を1軒に1ページを当てて紹介しているのです。

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こんな素敵なガイドブックを制作したのは、東京都杉並区立和田中学校の3年生です。和田中学校では2006年から、JA大北の「都市と農村の交流事業」と協力し、3年生の修学旅行で白馬村を訪問。4、5人のグループに分かれて農家民宿に宿泊し、田植えなどの農作業や田舎暮らしを体験しています(白馬以外の場所へ行く年もあります)。
でも、修学旅行で農作業をやるなんて、都会暮らしの子どもたちにとっては、かなり大変なことなのではないでしょうか?

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提供:杉並区立和田中学校

「修学旅行が農業体験で良かった」
「はじめは京都や奈良に行く他の学校の修学旅行が羨ましかったけど、農作業体験がとても楽しくて、修学旅行が農業体験で良かった」と話すのは、西岡伊吹くん。慣れない力仕事は大変だったようですが、それだけ農作業の苦労を感じたようです。「京都や奈良はいつでも行けるけど、農作業はめったに体験できないから」と語る迫田康佑くんは、初めて体験した田植えを「泥が温かくて大地の温もりを感じた」と、詩的に表現してくれました。

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提供:杉並区立和田中学校

地元の人との心温まる交流
楽しかったという声が多いもう一つの理由は、少人数に分かれて民宿に泊まる点です。冒頭の引用をもう一度読んでもらえればわかりますが、とにかく料理に感動している生徒が多いんです! 都会では珍しい山菜料理や、新鮮な地物野菜、お米が彼らの胃袋、いや心をつかんだのではないでしょうか。さらに、ホテルや旅館とは違った民宿ならではの宿の人とのふれあいも魅力。「お父さん」「お母さん」と呼んで、家族や親戚のようにリラックスした気持ちで泊まることができ、みんなの気持ちをほっこりさせているようです。

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子どもたちには体で感じる体験を
代田昭久校長は、「都会では、日本人の主食である米がどうやってできるのかさえ知らずに育つ子どもが多いのが問題です。だから、食や農に対する意識を持ってほしい。農家がどんな想いで、どんな苦労をして食べ物を作っているのか、体で感じてほしい」と、修学旅行への想いを語ります。
食育に力を入れている和田中学校では、修学旅行だけでなく入学時から毎年、食について学ぶ社会見学を実施しており、修学旅行はそれらの集大成とのこと。白馬村との交流も一過性のものではなく、旅行前に民宿の代表を学校に招いて話を聞くなど、村や農業について勉強しています。

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提供:杉並区立和田中学校

修学旅行が終わっても、交流は続く
11月1日には、和田中学校で収穫祭が行われました。白馬の民宿の代表者が、生徒が田植えをした田んぼで収穫されたお米を持って訪れ、お返しに生徒からは、完成したばかりのガイドブックが手渡されました。ガイドブックを受け取った民宿岩岳荘のオーナー松島芳明さんは、「上手に紹介してもらえて嬉しいね。子どもたちの民宿での楽しい雰囲気を思い出すよ。これをきっかけに、他の学校も白馬に学びに来てくれるといいね」と満足そうに話してくれました。

受け取ったお米をおにぎりにしたり、家へ持ち帰ったりして食べた生徒からは、「美味しかった。頑張ったぶん大切に食べようと思った」との声が。中には「少し田植えしたぐらいで農業やった気になるな」という厳しい言葉をお父さんからもらった、という女の子もいましたが(^_^;)

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提供:杉並区立和田中学校

生徒の気持ちの変化は、自分たちが作ったお米に対してだけではなく、農業や食への関心がより高まっていることからもわかります。3年生の担任の先生によると、修学旅行で農業に触れたことで、進学先に農業系の高校を選ぶ生徒がここ3年続けて出ているとのこと。生徒たちが給食の食材の産地を気にするようになった、とも言います。知識として勉強するだけでなく、実際に体験することが、食育にとっても最も大事なことなのでしょう。

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さてさて、完成した見事なガイドブックは、掲載されている農家民宿やJA大北、都内の教育機関などに置かれています。ガイドブックを見て、修学旅行での農業体験の比重を高くしたという高校も既にあるようです。今後の食育界に影響を与えていく存在になるかもしれませんね。

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