食育・健康

心を育む。信州の学校給食から見えるもの

20130703kyusyoku01.jpg

校内に給食室が設けられる方式から、複数校の給食を一箇所で集中して調理する方式が増している現代、食事は温かい状態で運ばれてくるとはいえ、調理の際の香りや音、その様子など、食事への期待や興味を膨らませる、五感に訴える現場との接点は少なくなっています。
そんななか、県北部・上水内郡飯綱町学校給食共同調理場は、給食を作る様子が窓越しに見ることができるのが特徴です。
どんなところで、どんな風に給食が作られているか、児童生徒たちに理解して、知ってもらえるよう、調理場を身近に感じてほしいという願いのもとに、この調理場は誕生しました。


20130703kyusyoku02.jpg以前はそれぞれの学校で給食を作っていたという飯綱町。しかし建物の老朽化に伴って、飯綱中学校敷地内に共同調理場として給食を作る施設が併設されました。2012年4月より小学校4校、中学校1校のおよそ1000人分が年間約200日、場長さんをはじめ栄養士さん、調理師さんなど17名のスタッフによって作られています。

この日は、地元の農家が育てたアスパラガスがJAによって調理場まで運び込まれました。青々と新鮮そうなアスパラガス。これも本日の給食に使われるのだとか。

20130703kyusyoku03.jpg

ではさっそく調理場の内部を見に行きましょう。

地元の野菜を使い、できるだけ手作りで
そこはなんて広々としたスペースのつくりでしょう。フロアは、持ち込まれた野菜などを洗う部屋と、それを切って炒めるなどの調理を行う部屋とでは仕切られていて、着ている服や履物の色も異なり、誰から見ても一目瞭然。さらに仕分け室、和え物室、特別食(アレルギー体質の生徒のための食事)を作る部屋などいくつにも分かれ、徹底した衛生管理がとられている様子がわかります。

20130703kyusyoku04.jpg

しばらくすると、野菜を切る作業が始まりました。なんと、1000人分をも作る忙しい給食づくりも、野菜を切るのは機械ではなく手作業で行われているではありませんか。
そして、先ほど見たアスパラガスは、茹であげられ調理が進んでいる様子。けれど、何やら測定がされているのが気になります。じつはこれ、中心部まで加熱が行き届いたかの確認がされているのだそうです。

たくさんのカットされた野菜、そして鍋から沸き上がる湯気、調理場が活気を増すにつれておぼろげに見えてきた本日のメニュー。さてさて、今日の給食の献立は――。

〔米粉パン/牛乳/白菜のクリーム煮/とり肉ガーリック焼き/アスパラのみそドレッシング/美生柑〕

この日は中学生で822キロカロリー。給食では1日に必要な栄養摂取量の約3分の1をまかなう計算だそうです。

20130703kyusyoku05.jpg

「昔ながらの日本食の良さを伝えたい」
献立について、栄養教諭の田澤悦子さんが説明してくれました。
「飯綱町の給食では、週2日はパンを主食にしています。本日のメニューにあるように、県産米粉を使ったパンを出すことも多く、モチモチとした食感は生徒にも人気です。残る3日がご飯食。飯綱町のお米は特Aのおいしいお米で、給食にはその地元・飯綱産こしひかりを100%使用しています。ご飯を食べる容器には陶磁器を使っていますが、それは、昔ながらの日本食の良さを伝えたいという思いを込めて――。また、キノコも地元や県内産を100%使用して、今日の給食は60%ほどを県内産でまかなっています」

20130703kyusyoku06.jpg

およそ2ヶ月前に献立案がつくられて、1ヶ月前には決定するというスケジュールの献立づくり。地元の農産物を使うには、自然相手の野菜の生長ですから、その時期にならないと必要とする量の確保も確実ではなく、献立に取り入れるのに苦労する時期も多いそうです。そして、野菜よりも果物の栽培が盛んなこの地域では、地元特産のサクランボなどが今後のメニューに登場する予定なのだとか。

壁を賑わすのは、飯綱町の学校給食共同調理場を見学した生徒たちからのコメント。「これからは残さず食べます」「安全でおいしい給食をありがとうございます」などたくさんの声が寄せられていました。

20130703kyusyoku07.jpg

地元の新鮮なアスパラガス、いただきます!
さてさて相当にお腹も空いた12時50分。ようやく待ちに待った給食の時間がやってきました。
机も向かい合いで並び替えられ、配膳も完了。その後、係の人から本日のメニューに地元農家が育てた新鮮なアスパラガスが使われているとの説明があり、いよいよ「いただきます」の大合唱。勉強中の真剣な眼差しから一転、表情もほころぶ和やかな食事が始まりました。

20130703kyusyoku08.jpg

給食を通して様々なことを感じてほしい
毎日の給食について田澤さんは言います。
「和食の献立には和食の料理、洋風の献立には洋風の料理、で統一するようにしてあります。食事の基本を知り、給食を通じて献立の基本を身に付け学んでほしいと思っているからです。今後、一人ひとりが自分で料理を作るときや、購入する場合には、ふと給食を思い出し、栄養のバランスが良くなるような選択ができる人になってほしいと願っています。そしてまた、料理を作ってくれる人など、いろいろな人に感謝の心をもてるように......」と。

自分の好きな食べ物が簡単に手に入れられる現代。安心しておいしく給食を食べてもらいたいという多くの人の願いのもとに作られている給食は、子どもたちが生きていくうえでの糧となる、大切な食事の力を育む場でもあるのですね。

1372777200000

関連記事

長野県のおいしい病院食をバイキング!
食育・健康

長野県のおいしい病院食をバイキング!

弁当や総菜宅配で存在感 高原の農家食堂
グルメ・カフェ

弁当や総菜宅配で存在感 高原の農家食堂

標高1,000mの高原で食べられている極上の病院食
グルメ・カフェ

標高1,000mの高原で食べられている極上の病院食

今、スキー場メシがうまい・・・「ゲレ食バトル」開催中!
グルメ・カフェ

今、スキー場メシがうまい・・・「ゲレ食バトル」開催中!

新着記事