野菜など農産物をつくった人が直接調理をして提供する「農家食堂」は、究極の地産地消の一つでしょう。JA女性部を中心に、真心込めた〝手作り〟の味で既存の飲食店にない魅力を伝えようと工夫しています。そんな「農家食堂」をシリーズでお伝えします。
「おいしかった」を励みに 介護施設に併設で盛況
「たんぽぽカフェ」志和の会(伊那市)
最初に紹介するのは伊那市東部の美篶地区にある「たんぽぽカフェ」です。地元の介護施設「たんぽぽの家」が、その一角に設けた交流施設です。
毎週水、木曜日に昼食を提供しているのがJA上伊那の女性組織・生活部会のメンバーを中心とする「志和の会」です。
メンバーの自宅で取れる野菜などで手作りの心温まる食事をワンコイン(500円)で提供、毎回、大盛況です。訪ねた日は開店から1時間ほどで予定していた40食余が売り切れてしまいました。
笑みが漏れる準備作業(右から3人目が代表の酒井さつきさん)
同会代表でJA上伊那のカルチャーリーダーを務める酒井さつきさんによると、4年前の開設のいきさつは「施設の代表が知り合いだった関係で、地域の人が気軽に入れる食堂開設の誘いを受けたんです。JAの訪問日に合わせて地区の全戸(約800戸)にチラシを入れ、有志を募ったら、60代を中心に20人ほど集まりました。みんな、生きがいづくりのボランティアですよ」とのこと。
毎回、4人のメンバーで調理から配膳、接客までこなすのが基本。月末に全員が集まってミーティングを開き、都合に合わせて当番表を作成するそうです。メンバーのほとんどが農家のため、冬場を除き、食材の手配はお手の物ですが、日ごとに決まるリーダーが担う献立作りは、「(当たると)前日は頭がいっぱいになってしまう」と苦笑するメンバーも。そんな重圧も「『おいしかった』の声で晴れる」と口をそろえます。
和気あいあいとした空気は、客にも伝わるようで、「(この食堂は)雰囲気がいい」と通う常連がたくさんいます。各種会合向けの弁当にも対応しており、3、4月は年度末や花見の需要で大忙しでした。丁寧なつくりの弁当がきっかけでカフェに通うようになった人もいて、相乗効果を上げています。
「たんぽぽカフェ」の営業は午前11時半~午後2時。盛況のため予約を入れておくのが無難。志和の会が開く水、木曜日のほか、月、火曜日は施設を運営するウェルケア、金、土曜日は「和みそばの会」が運営。日曜日は不定期で子ども食堂も開き、志和の会も協力しています。
問い合わせ:「たんぽぽの家」TEL 0265-74-5158
住所:長野県伊那市美篶4854-1