食育・健康

地元食材を使った、地域愛たっぷりの病院食

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「病院給食だから...なんて言わせない」ーー。
これは、小諸市にあるJA長野厚生連小諸厚生総合病院栄養科のキャッチフレーズです。
同病院では25年も前から地産地消メニューの提供に力を入れており、このほど第6回地産地消給食等メニューコンテスト「学校給食・社員食堂部門」で農林水産省食料産業局長賞を受賞しました。「地元の食材は地元の患者さんの治癒力を上げる」との強く温かな思いから作られるメニューは患者さんからも好評です。

食の安全への先駆的な取り組み
「病院食だから...」。
入院経験がある人は「...」の部分に入る言葉が浮かぶかもしれませんね。
かつて、病院給食の多くは「まずい・冷たい・早い(食事の提供時間のこと)の3悪」など、ひどいことを言われていたのだそうです。

「そんな言葉を言わせない!」。
同病院の転機になったのは1988年、今から26年前のこと。「食の安全」について、病院と労働組合、地域住民による「地域医療懇談会」での話し合いがきっかけとなりました。話題は収穫後の農薬散布・ポストハーベストなどにも及びました。 そこから生まれた結論が「患者さんに安全な食材を提供したい」「地元で安全な野菜を作っていただき、地元の農業を守りたい」「生産者と顔の見える関係を築きたい」という3者の思いでした。

「地産地消」という言葉が今ほど言われていない頃から始まった取り組み。地元で無農薬栽培をするグループから病院への野菜提供が始まり、生産者の高齢化などでグループが代わりつつも、地元生産者とのつながりが現在も続いています。
もちろん1年中、地元の食材というわけにはいきませんが「旬の時に旬のものを」との思いは続いています。
1年を通してジャガイモやレタス、ホウレンソウ、トマト、タマネギなど23種類の野菜が使われ、なかでもゴボウとシイタケ、ハクサイは通年で地元産が提供されています。

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地元産ハクサイをたっぷり使って

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食事制限のある患者さんには、一人分ずつごはんを計量し、おにぎりに

季節の食材を愉しむ
献立作りでも工夫を凝らしており、月2回は「お楽しみメニュー」を提供するほか、盛り付けや彩り、メッセージを書いた「添え状」にも心を込めています。

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5月13日の「お楽しみメニュー」は春の食材をふんだんに使った献立が提供されました。


メニューと地元産の食材を紹介します。

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◆たけのこご飯
タケノコ
◆豆腐のすまし汁
地元の豆腐店の豆腐
◆天ぷら
グリーンアスパラ・タラの芽・生シイタケ
◆鰹とウドのからし和え
ウド
◆アスパラ白和え
グリーンアスパラガス・絞り豆腐
◆いちご大福

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タ、タラの芽?
と思った人もいるでしょう。そうなのです。
入院中に旬の食材が食べられるとあって「今回の入院中にお楽しみメニューが食べられるかな?」と楽しみにしている患者さんもいるのだそうです。
古くから「身土不二(しんどふじ)」=「身体と環境(土)はつながりがある」 という言葉がありますが、身近な土地で、その季節にとれたものを食べるのが健康に良いという考え方があります。
「地元の食材は地元の患者さんの回復力を上げるという強い思いがあります」と病院の思いを代弁する栄養科の柳沢喜美子科長。

生産者とのつながりを大切に
年1回は「援農」と称し、病院職員が生産者の畑へ出向いて収穫や芋の選別をするなど、交流を続けています。こうした取り組みが強い信頼関係を構築し、安心安全な食材の提供にもつながっています。

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全国的な大雪に見舞われた今年2月には生産者の熱い思いを感じる出来事がありました。
1m近い積雪に覆われた小諸地域は、交通網が遮断され、流通も止まってしまいました。しかし、生産者のひとりは26棟すべてのハウスが雪で倒壊したにもかかわらず、雪の下からホウレンソウを掘り出し、何時間もかけて病院へ届けてくれたのだそうです。
同病院の基本理念は「医療は住民のもの」。「改めて地域の病院であることを再認識しました」と柳沢科長も胸を熱くしたと言います。

「旬の食材で元気が出る」
地産地消給食等メニューコンテストでの受賞は全国150件の中から選ばれました。地場産の食材を使っていることはもちろん、生産者との交流や、毎月1回発行している栄養科新聞「いただきます!」、地域での食育活動なども評価の対象となりました。

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月1回発行の栄養科新聞

生産者からの「いつかは私たちもお世話になるから」との思いや、患者さんからの「おいしかった」という声、そして栄養科の18人のスタッフが手作りで支える同病院の給食。
「手作りで、温かくて、旬の食材で元気が出る」ーー。
「小諸厚生病院の給食だから...」をキャッチフレーズにするなら、「...」には地域の人々の愛情がたっぷりこもった言葉が続くはずです。

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