ようこそ、日本のイチゴ生産の発祥の地へ!

080109-1-s.jpg

軽井沢に近い長野県小諸市大久保にある「こもろ布引いちご園」は、今月6日から一日開園となり、今日もいちご狩りを楽しむ家族連れでにぎわっているはずです。春のようなハウスの中では無数の「章姫」や「紅ほっぺ」といったイチゴたちが赤々と色づき、口に入れるとその甘さに驚かされることでしょう。

日本のイチゴ生産のはじまりの地
こもろ布引いちご園は信州でも雨がすくなく風光明媚な浅間山麓、千曲川と鹿曲川の渓谷に挟まれる標高800メートルほどの広い丘陵である御牧ヶ原台地にあります。名前の通り、奈良時代末に馬を朝廷に献ずる勅旨牧(御料牧場)に指定された土地なのですが、そこはまた、知る人ぞ知る「日本でいちばん最初にイチゴ生産がはじまった地」とも言われています。

080109-2.jpg小諸市と東御市の境付近には、現在も「いちご平」というバス停(写真右)がぽつんとあり、明治時代にこの地にイチゴが群生していたという記録もあるとか。

やがて御牧ヶ原の開拓がはじまり、大正時代にかけてこのイチゴが脚光を浴びました。小諸市周辺では製缶技術が発達していて、ジャム専用のイチゴ栽培が定着し、最盛期の昭和初期には数十ヘクタールに及びました。

静岡石垣イチゴもここから
品質の優れていたその「いちご平」の原種を、昭和14年に長野県農事試験場が御牧ヶ原1号及び2号と命名し、これが日本各地の試験場で品種改良の親株となったのです。特に日本の栽培イチゴであまりに有名な静岡県で品種改良がされ、石垣イチゴとして脚光を浴びることとなりました。080109-5.jpg

その後、露地栽培からビニールハウスをかける半促成栽培、そして今では生産イチゴの9割が加温ハウスで栽培する促成栽培が主流となりましたが、全国各地で品種改良を重ねたイチゴが平成10年、故郷の御牧ヶ原台地の入り口に作られたこもろ布引いちご園に帰って来たのです。

イチゴにもふるさとがわかるのか
「ここのイチゴの品質の良さは、故郷の気候条件を感知して原種のDNAが目覚めたのかもしれませんよ」といちご園を経営する農事組合法人・布引施設園芸組合の倉本強組合長はうれしそうに話します。

倉本組合長は10年前にパソコンや通信機器を製造するメーカーを退職し、55歳で農業に転身した経歴の持ち主。園芸組合は徹底的なデータ管理で秋冬イチゴの早出しに成功して、その育苗技術の高さから静岡県や、種苗メーカーに年間80万本の苗の供給をするまでになりました。去年1年間の苗の生産は優に100万本を越え、国内有数のイチゴ苗委託生産組織に育ちました。

080109-3.jpg

イチゴは苗が最も大切
イチゴを生産する上で、苗の品質ほど重要なものはありません。苗を植えてすぐ花が咲き、1番目の花房が実をつけているうちに2番目の花が咲きはじめると、次々と収穫することができるからです。布引施設園芸組合の生産する苗は、この出蕾率が高いことで、全国から注文が殺到するようになりました。

「注文が多くて、自分の施設に植える作業が遅れてしまい、やっと一日開園できるようになりました」と倉本組合長は笑います。

巨額の投資をともなう施設園芸は「真剣にならざるを得ない」挑戦の連続だったと言います。いちご園のスタート時は、イチゴが出荷される12月からやっと売上げがたちましたが、苗の委託生産が増えるに従って、9月から売り上げがたつようになりました。

苗とイチゴで生産する地域の分業へ
倉本組合長は、これからのイチゴ生産には苗を生産する地域とイチゴ生産をする地域の連携による産地間分業が大切と考えています。良い苗を作るためには、夜の気温が下がる地域での生産が必要ですが、7〜8月の夜温が20度以下になる地域は寒冷地で、冬場のイチゴ生産には暖房費がかかってしまいます。その点、暖地ではビニールをかけるだけで生産ができるのです。

080109-4.jpg

イチゴハウスの中を案内してもらうと、写真のような風変わりな機械がありました。これはイチゴの防除機で、高設のイチゴ棚をくぐらせるように一人で引いて行けます。内側に取り付けられた噴口にも角度がついていて、渦巻くように防除ができるという優れものです。倉本組合長の考案で、効率的で効果的な防除が可能になりました。

わずか10年で、いちご園の経営を軌道に乗せたことは驚きです。こうした取り組みが評価され、平成15年には長野県の「長野県知事賞 きらりと光る農業農村活動賞」を、そして今年は日本農業賞の長野県での受賞となりました。

「基本はイチゴそのものをしっかり見ることだね」と倉本組合長は教えてくれました。

かつていちご平に群生していたイチゴたちが里帰りし、そこに倉本組合長以下こもろ布引いちご園のみなさんの熱意が加わり、それがまた全国へイチゴ苗として出荷されて行くのです。

nunobikiitigo.gif

長野県小諸市大字大久保1173−1(あぐりの湯こもろ敷地内)
TEL:0267−26−2615
FAX:0267−26−2614 strawberry3.jpg
開園期間:6月末日まで
開園時間:午前10時〜午後3時
Webサイト: http://www.ichigodaira.com/

*あぐりの湯こもろの( 小諸市Webサイトでの紹介ページ)
1199804400000

関連記事

春の便りを探しにハウスイチゴ園を訪ねると
お出かけスポット

春の便りを探しにハウスイチゴ園を訪ねると

北信から南信までイチゴを食べに行きました
お出かけスポット

北信から南信までイチゴを食べに行きました

あんずの里でイチゴ狩り
お出かけスポット

あんずの里でイチゴ狩り

編集後記:元旦は日本一早いイチゴ狩りに行こう!
お出かけスポット

編集後記:元旦は日本一早いイチゴ狩りに行こう!

新着記事