小さなワイナリーの作った折紙付きのワイン

silver_copper_awards.jpg今年5回目を迎えた国産ワインコンクール(JAPAN WINE CONPETITION 2007)で、大手のワイナリーが上位を占める中、創業3年目の小さなワイナリーが銀賞と銅賞を獲得しました。そのワイナリーは長野市の北東に位置する中野市にあります。ワイン専用のブドウの生産からワインの醸造、販売までを一貫して行う小さなワイナリーで、その名を「(有)たかやしろファーム」といい、コンクールでは、たかやしろファームの「2005 シャルドネ シュールリー」(写真左)が欧州系品種白部門銀賞に、「2005 シャルドネ」(写真右)が同銅賞に輝きました。これはいうまでもなく快挙ですよね。

北信濃、志賀高原。すぐ近くに美しくそびえたつ独立峰火山の高社山(こうしゃさん/1361m)は古くから信仰の山とされ、土地の人から「たかやしろ」と呼ばれて愛されてきました。信州百名山のひとつでもあるその山にちなんで「たかやしろファーム」と命名されたこのワイナリーは、3年前、土地の果樹農家4人が集まり、価格低迷から自分たちが作ったブドウの付加価値を高め、地域の遊休農地を活用し、なにより自分たちが世界水準のワインを飲んでみたいとの夢を見てオープン。代表の武田晃さんをはじめ、中野市竹原地区の果樹農家4人が取締役を務め、5人の社員が力を合わせて、今日までワインづくりに励んできました。現在はワインのほかにも、シードル、ジュース、ジャムなども作って販売しています。冬の初めのよく晴れた日に、かすかに雪をいただいた高社山を仰ぐ農園とワイナリーまで出かけて、統括マネージャーの武田敏弘さん(26)に、お話しをうかがいました。


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注目の千曲川ライン
ワイン専用種ブドウは、一般的に雨が少なく水はけの良い土地での栽培が良いとされています。長野県でいえば千曲川ラインが注目されているようです。たかやしろファームが自社栽培するブドウ園は、中野市の竹原地区を中心に、若宮地区、大俣地区などですが、まさしくこのラインに位置します。「良いワインを造るためには、良いブドウ作りが基本で、そのためには適地適作が重要です。それから、栽培のしやすさや収穫量なども考えて品種の選定をしています」と敏弘(としひろ)さん。

たかやしろファームは、約6haの農地でワイン専用品種を自社生産しており、そのうち最も多いのがシャルドネで収穫量が約9トン、続いてメルローが約8トン。試験栽培のものも含めて、現在約17種類を栽培しています。

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ワインのできるまで
農場の方は、3〜4月に剪定作業、枝が伸びる6月に誘引や摘房作業が最も忙しい時期。収穫は9月中旬からドイツ系の白ブドウがスタートし、11月上旬のカベルネソーヴィニヨンまで続きます。

収穫するとブドウの風味がそこなわれないように、すぐに搾汁して発酵タンクに充填します。ワイナリーの1日あたりの処理量は最大で3トン。白ワインなら翌年の夏、赤ワインは翌年の秋に瓶詰めをして販売します。熟成させたワインは、品種によっては、さらに寝かせて熟成させます。

販売は、直販が7割を占めますが、まだまだ販路拡大が課題だそうです。価格帯は1,000円〜3,000円。「ブドウは中野市産のものを使い、地産地消をしていきたい、価格もできるだけ安くして、地元の人たちに飲んでもらいたいというのがわたしたちの考えなのです」と敏弘さん。

サンふじでシードルを!
取材にうかがった時、たまたまワイナリーではシードルの瓶詰作業をしていました。シードルとはりんごジュースを発酵させた発泡性のアルコール飲料で、言ってみればりんごのスパークリングワイン。地元中野市産のサンふじを原料に、この時期にジュースを搾り、タンクに貯蔵します。

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発酵は気温が上がる春先からはじまり、その後、たまった滓(おり)を取り除いて、瓶に詰めます。さらに瓶の中で2次発酵して、飲み頃になるそうです。たかやしろファームでは、ガスを充填することはせず、発酵過程でできる二酸化炭素のみでシードルを作っています。

シードルは、まだ一般的に馴染みがない飲み物ですが、フランスではワインと同じように原産地呼称規制の対象となっていて、各種のワイン・コンクールでもシードル部門があります。

リピーターの数も増えて
ほかにも、りんごや桃、プルーンといった地元産果実を使ったジュースやジャムなどを、保存料やペクチンなどを使わずに、製造もしています。たかやしろファームのまるごと絞りりんごジュースは、軽井沢のホテルブレストンコートや箱根の富士屋ホテルで採用されており、口コミで評判を呼びリピーターも増えて、製造は拡大しています。

売るために嘘をつく必要がない
ワイン業界は難しい専門用語が多く、「正直のところ自分にはあまりよくわからない」と笑いながら話します。「ブドウの生産からワインの醸造まで一貫して携わっているから、お客さまに素直に対応できます」と、自然体。売るために嘘をつく必要もないし、自分が経験し、理解していることをお客様に伝えるのだそうです。「仕事が忙しい、キツイというのは当然ありますが、それは抜きで考えるようにしています。とにかく、良いものを作っていきたい」

真摯なものづくりに情熱を傾ける若者に、ワイナリーの将来性を感じました。残念ながら試飲できなかったので、おすすめのワインをセレクトいただいて、お土産に買って帰りました。それは、彼の言葉通りの素直でおいしいワインだったと、書き記しておきます。

arrow2.gif 第5回 国産ワインコンクール Japan Wine Competition 2007 審査結果

有限会社 たかやしろファーム&ワイナリー
signbord.jpg長野県中野市竹原1609番7号
TEL:0269−24−7650
FAX:0269−24−7652
営業時間 9:00〜16:30
定休日 不定休
E−mail: info@takayashirofarm.com

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