はじめて食べる人は、あまりの辛さに必ずむせかえる。それが、今回紹介するおしぼりうどん。おしぼりうどんとは、釜揚げうどんの一種で、長野県埴科(はにしな)郡坂城町や千曲市など、長野市から上田市にかけての地域(さらしなの里)で昔から食べられてきた郷土食・ローカルフードのひとつで、このうどんの主役は「うどん」そのものというよりは、むしろ、そのつけ汁にする大根の方。
「ねずみ大根」と呼ばれる坂城町で穫れる小ぶりの地大根で、この大根は辛味値が普通の大根の2倍以上もあります。おろしたてを絞った(だからおしぼり)汁は、それは辛いのなんのって。しかし一方、ねずみ大根は、ビタミンCも豊富で、糖度も多くふくまれるため、辛さの後に、なんとも言えない旨味を感じるのです。汁には、辛味を中和して大根との相性も良く生臭さを消してくれる味噌と、薬味として刻んだネギやかつおぶしなどを入れます。寒い冬に、おしぼりうどんを食べると、熱々のうどんと辛いつけ汁で、体の芯から暖まるのです。
もうじき完成ねずみ大根パウダー
坂城町では、地域の伝統野菜であるこのねずみ大根で地域おこしをしようと、さまざまな取り組みをはじめました。生産農家の種からF1種をつくり「からねずみ」という名前で品種登録をし、24人の栽培者が「ねずみ大根振興協議会」を組織して、特産品としての栽培振興をはかっています。
ねずみ大根の収穫体験や、沢庵漬け体験、おやきや焼酎の試作などにも取り組んでいます。また、大根のまま保存できる期間が限られていることから、通年利用できるように、ねずみ大根のパウダーも試作してる。辛味成分がしっかり残るので、実用も近そうだとか。
また、町内でおしぼりうどんを出す店が増えたことから、町ではおしぼりうどんを積極的にPRすることにしています。
このおしぼりうどんを食べて来た地域は、古くから二毛作地帯で、うどんも地粉でうちます。農業改良普及センターや地元のJAでつくるユメセイキ産地化推進会議は、のどごしがなめらかでもちもちした食感の小麦「ユメセイキ」の生産振興とブランド化をすすめるため、「信州の夢」うどんの認証をすすめています。
また、かつてこの地域で生産されていた小麦「伊賀筑後オレゴン」の復活をすすめ、伝統食であるおしぼりうどんとして出す店も出て来ました。おしぼりうどんを核に地域の人々がまさに知恵をしぼっているわけです。
辛い地大根でつくる「おしぼりうどん」レシピ
■材料(2人前)
- 生うどん2玉
- 辛い地大根(小ぶりのもの2本、中くらいの青首大根なら1本)
- 味噌少々
- かつおぶし
- 刻みネギ
■作り方
- うどんをゆで、ざるに上げる
- 大根を乱切りにしてジューサーで汁を絞る
- おわんに汁を入れ、味噌とかつおぶし、刻みネギで味を整える
- うどんをつけてをいただく
おしぼりうんどんやねずみ大根について詳しい千曲市の高村商店のWebサイト
坂城町でおしぼりうどんが食べられる店
●かいぜ
坂城町中之条2366−3
TEL:0268−81−3595
うどんのほか、おしぼりそばも。月火曜定休。
おしぼりは通年。
参考:雑誌「うかたま」(農文協刊)の紹介サイト
●びんぐし亭
坂城町大字網掛3000
TEL:0268−82−0567
ねずみ大根の沢庵、ドレッシングなども。水曜定休、おしぼり5月頃まで。
農産加工グループ「味ロッジわくわくさかき」のお母さんたちの店。
●びんぐし湯さん館
坂城町大字網掛ふ2001番地4
TEL:0268−81−7000
ホームページ
日帰り温泉の食堂でおしぼのうどんが食べられる。第2・4水曜定休。
●こづちや
坂城町坂城6713−1
TEL:0268−82−7000
火曜定休。
●武新館八重
坂城町大字中之条1313
TEL:0268−82−2762
月曜定休
千曲市でおしぼりうどんが食べられる店
●古波久
千曲市上山田温泉1−44−4
TEL:026−276−2787
観光客に人気の店、休業不定。
●古炉奈
千曲市上山田温泉1−10−2
TEL:026−276−0953
ホームページ
創業100年手打ちうどんの店。休業不定。
●あんずの里物産館 レストラン・アグリピスタ
千曲市屋代507−1
TEL:026−274−7712
ホームページ
ユメセイキのうどんをおしぼりで食べられる。水曜日定休。
●手打ちそば処 こだま
千曲市杭瀬下1502
TEL:026−274−4118
ホームページ
ユメセイキのうどん、おしぼりは冬期のみ。月曜定休。
●食考房 七草
千曲市大字八幡958−6
TEL:026−274−3228
ユメセイキのうどん、おしぼりは冬期のみ
参考図書 信州の郷土料理(高野悦子著/信濃毎日新聞社)、イロリ端の食文化(今村龍夫著/郷土出版社)、信濃の食文化(今村龍夫著/共立プラニング)