「木心」を知る本物の臼職人

木臼

お正月やもちつきイベントには欠かせない「臼」と「杵」。長野県安曇野市に手作りで臼と杵を作る職人さんがいます。

「木心を知らないと、物づくりはできない」

木臼

安曇野市は県中部に位置し、北アルプスに面しています。
雪をかぶった北アルプスと青空を背景に、臼杵作りに精を出しているのは、この道40年の小林健男さんと職人の方々です。
小林さんは以前サラリーマンでしたが、転身し臼作りの道を歩み、作ってきた臼は数千個にものぼります。

木臼

「木心を知らないと、物づくりはできない」と話す小林さんの臼づくりは、木材を選ぶところから始まります。小林さんが使用する木はケヤキで、水に強く耐久性が高いのが特徴です。また、直径45~60cmで且つ、樹齢100~150年の木を使用しています。若すぎても、老いすぎても良い臼は作れないと、樹齢にもこだわって選びます。もちろん県内産の木材を使用しています。

木臼

原木は切倒されてから丸太の状態で2年間乾燥させ、輪切りにし、チェーンソーで荒彫りをしてから、大ちょうな・手ちょうな・丸かんな等の道具で仕上げていきます。

木臼

あら彫り後

木臼

大ちょうなで掘る

木臼

丸かんなで仕上げる

木臼

臼職人さん愛用の道具たち

臼は「みかん彫り」という方法で彫られていきます。みかん彫りの「みかん」とは果物のみかんのことを意味し、臼の穴をみかんのように、上と下がすぼまるような曲線で彫り上げます。このみかん彫りには、杵でついた時に餅が臼の中でくるくる回るようにするためや、杵を引き上げたときに餅が外に飛んでいかないようにする工夫がされています。

木臼

使い手の想いに応えるものづくり

木臼

にっこり「手かけ」

木臼

微笑の「手かけ」

この側面にある切り込みは、言わば臼の"くち"で、「手かけ」と呼ばれるもの。臼を倒しやすくするためのものです。本来、臼は持ち運ぶようなものではないため、通常手かけはひとつで十分ですが、地域によっては2つが主流もあるそうで、お客さんの注文に応えています。訪れた日は、東北地方から注文を受けた臼を作っている最中でした。他と比べると、口角広めな感じがしますよね。

「にっこりするようにね! 表情がでるように」、口の大きさ、形、またどの辺りに入れるかによって、臼一つひとつの個性が出るように作っています。「ものづくりはひとつとして同じものがないところに魅力がある」と小林さんおっしゃいます。

木臼

臼を仕上げる小林さん

小林さんは、文字通り北は北海道から南は沖縄まで、全国47都道府県、各県に臼を送り出してきました。作り手もそうですが、お客さんにも想い入れがあるようで、熱心な方は北海道であろうと九州であろうと、実際に来て注文していくのだそう。
「これまで受けた注文は控えてあるから、どのように使われているか訪ねてみたい」と、作り手ならではの夢を教えてくださいました。

最後に、今後の目標をお聞きしました。「ものづくりは挑戦だから、さらに良いものをつくらないと! と思っている。さらに、さらに、と追求していきたい。体力の続くかぎり続けていきたい」と力強くおっしゃいました。

木臼

臼の製作は10月~1月にかけて行なわれ、2月頃から注文を承るとのことです。
臼杵は完全注文製作ですので、お求めの際は小林木工所へご連絡くださいね。

小林木工所
長野県安曇野市堀金烏川3640-4
TEL・FAX 0263-72-2944

この記事を書いた人

ジャスミン

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