田植えを終えた水面が陽光を浴びてキラキラ光り、暑い夏の記憶を呼び覚まします。
7月ももう間近。
「ひと昔前、各家の田植えが終わるのは、今よりもっと遅くて7月頭頃だったんですよ」
と教えてくれたのは、県北部は上水内郡飯綱町の「食ごよみの会」のお母さんたち。
さらに、「その田植えが無事に終わったお祝いに作られたのが"笹餅"です」と言って、その笹餅とやらを教えてくれました。
農作業の区切りに食べる土地の味
田植えが終わったお祝いに、また、手伝ってくれた人たちへの労いとして作り、食べられてきたものが全国各地にあります。ある県では、稲の根が吸盤のように大地にしっかり根付くようにと蛸であったり、うどん県では、ご近所へうどんを振る舞ったりといった風習があるそうです。
米処のここ飯綱町では、ちょうど時期を同じくして青々とした笹が採れることから、その笹に餅を挟んだ笹餅を振る舞います。
昔は暮らしの身近にあった笹。その笹を採りに出かけるのは、もっぱら子どもの役目でした。
女衆はもち米を蒸かし、男衆は重い臼と杵で餅をつく。ようやく終わった田植え作業の疲れを癒す間もない一大イベントだったことでしょう。そしてできた笹餅は、田植えを手伝ってくれたご近所や、作業が終わったお祝いに親戚へとお裾分けされたそうです。
餅の中にあんこなどは入れず、笹をめくり、白餅に砂糖醤油を付けて食べるのがこの地域での食べ方。
つきたての餅は美味しいと、すぐに食べたい気持ちをぐっとこらえ、葉の殺菌効果を利用して1日~2日経ち、少し硬くなりかけの頃、ちょうど餅に笹の香りが付くのを待って食べるのだとか。
笹の爽やかな香りが鼻をくすぐり、弾力ある食感は噛むほどに米の味わいを楽しめる、素朴な餅。飽食の現代にあっても十分にその美味しさを感じられます。
おいしく、楽しく、「食ごよみ」を次世代へ
もし良い笹が手に入るチャンスがあったら、ぜひ作ってみてください。
その他の材料は、もち米(蒸かしたもの)。たったこれだけ。ただし、作り方にはいくつかのポイントがあります。
その1.笹は、2枚1組で柄の付いた状態のまま使います。柄の部分は持ち手にするので、長めに残して採取してください。
その2.餅はあらかじめ、水をつけながらピンポン球サイズにちぎって丸めておけば作業が楽でしょう。
その餅は、葉にくっつかずに食べやすいよう、葉の裏(産毛側)に置き、 葉からはみ出ないように小判型に薄めに成形したら、上に葉をもう一枚、産毛側を餅に接するようにして置きます。
以上でもう完成です。
伝統食を今に伝えているのは、上水内郡飯綱町の「食ごよみの会」の皆さん。
農と共にある飯綱町の大切な食文化に触れて、楽しんでもらいながら次の世代へ受け継いでいきたいと、毎月1回、この地域の伝統食を伝える活動を行っています。
また、「食ごよみの会」のメンバーが活動する、今春オープンしたばかりの農家レストラン「食ごよみ『日和(ひより)』では、地元食材を使ったお母さんたち手作りの優しい味わいの料理が楽しめます。
リンゴ畑に囲まれた「食ごよみ『日和』。秋にはたわわに実るリンゴを眺めながらの食事が、また楽しみです。(すし☆すぶた)
農家レストラン「食ごよみ『日和』
- 長野県上水内郡飯綱町大字倉井2894-1(飯綱町三水農産物直売所さんちゃん敷地内)
- TEL 026-213-8171
- ランチタイム 11:00~14:00
- カフェタイム 10:00~17:00
- 定休日 月曜日