雪が積もったら、雪玉を作り友だちに向かって投げてふざける・・・。これは子どもの本能みたいなものです。雪国育ちで、雪合戦を体験したことのない方は、ほとんどいないのではないでしょうか。
今、この雪合戦を真剣勝負で行う大人たちがいます。そしてこのほど、その全国大会が白馬村で開催されました。
ウィンタースポーツの聖地で繰り広げられるスポーツ雪合戦大会
「日本雪合戦選手権大会」は今年で第4回をむかえ、一貫して白馬ジャンプ競技会場の着地点(ブレーキングトラックというらしい)で行われてきました。北安曇郡白馬村のこの場所で全国大会が開催される訳は、積雪量が安定していることに加え、1998年の長野冬季五輪で「NAGANO」が世界的に有名になり、とりわけ日本ジャンプ陣が金メダルの栄冠に輝いたその場所を「ウィンタースポーツの聖地」としてとらえたからにほかなりません。
この日本選手権を主催している一般社団法人日本雪合戦連盟では、この雪合戦を「スポーツ雪合戦」と呼んでいます。きちっとしたルールにのっとり、専用のコートで行われる本格的なスポーツなのです。同連盟の千田重光会長によると、連盟は24年前(平成5年)に発足し、最初は各地で競技会が行われていましたが、連盟の法人化を経て4年前から全国大会が開催されるようになったのだそうです。「年々プレーのレベルは上がっています」とのことで、さぞかし開催県の長野県はレベルが高いかというと「長野県のチームはまだ発展途上ですね」とやや辛口です。例えば広島県は地区予選に男女合わせて約100チームが参加するほどの人気で、昨年も男子女子ともに広島県のチームが優勝していますし、東北のチームも年々力をつけてきているといいます。
チームワークが勝敗をわける
さて、ゲームは7名ずつがコートで向かい合い、1セット3分間の3セットマッチで行われます。相手方7名全員に雪球を当てるか、敵陣のフラッグを抜くとそのセットの勝利が決まります。使用できる雪球は1セット90個と決められており、作戦に基づく様々な駆け引きをしながらゲームが進みます。
地区大会を勝ち抜いてきた精鋭同士の戦いは思いのほか激しく、3分間があっという間でした。
ところで、雪合戦の勝負は試合開始の合図の前から始まります。試合開始に決められたエリアで制限時間内に自チームの雪球1試合分270個を作らなければなりません。雪球製造機を使うので誰がやっても同じ雪球ができるように見えますが、よく観察するとチームによって工夫がありそうです。どの場所で雪を採取するか(雪質)にこだわったり、作り方に微妙な違いもありそうで、チームによっては出来上がった雪球を吟味して何度も作り直したりしています。
昨年優勝した広島県の男子チーム「雪村時代」は「もちろん今年の目標は連覇です」と自信をみなぎらせていました。週3回以上練習するという皆さんにとって雪合戦の魅力は「チームワークが勝敗を決めるところ」といいます。個々の力よりもメンバーの連携力が問われるスポーツのようです。
東京から参加したチーム「TEAM自由人」も勝敗の決め手にチームワークをあげました。他のスポーツをするわけでもなく、雪合戦一筋のこのチームが結成されたのは、なんと8年前。
雪上での練習はほぼできないので、体育館で疑似雪球を使って練習しているという筋金入りの雪合戦好きです。皆さんの目標は「先ず1勝!」。
岩手県から参加した女子チーム「めしべ」は打倒広島チームを掲げ、「目標はもちろん優勝です!」と気合十分です。雪合戦の魅力は「年齢を問わず熱くなれること」だそうで、優勝のポイントにはやはり個々の技術より「どれだけみんなが力を合わせられるか」をあげました。仕事を終えてからほぼ毎日練習しているというこのチームは、1日目の予選リーグを苦戦しながらも突破し、2日目のトーナメントを勝ち抜いて見事レディース優勝を勝ち取りました。おめでとうございます!
大真面目で取り組むオリンピック種目化
千田会長によると、昨年は中国から「雪合戦を教えてほしい」というオファーがあり、対応を始めたとのこと。対象人口が3億人というからびっくりですが、さらに驚くのは中国の皆さんも会長自身も、本気で雪合戦のオリンピック種目入りを目指していることです。
実際、目の前で繰り広げられているプレーのスピード感や本気度を見せつけられると、その夢もリアルに聞こえてきます。2022年に予定されている北京冬季オリンピックでは、さらにレベルが上がった世界基準のプレーが観戦できるのでしょうか。(つかはら)
(一社)日本雪合戦連盟の千田重光会長
賞品には地元白馬の特産品も選ばれています
■参考サイト
(一社)日本雪合戦連盟
大まかなルール説明(日本雪合戦連盟)