昨年(2016)年10月、「ながでんワイントレイン」に乗車したおりに、スタッフの方から「来春に地酒トレインを走らせる予定で、今ひそかに企画をしています」という極秘情報を入手しておりました。そしてこのほど正式発表されるやいなや申し込み、座席をキープ! めでたく北信濃の銘酒と共に「ながでん地酒トレイン」の車中の人となることができたので、レポートをしたいと思います。(この企画は昨年に続いて2回目なので極秘でもなんでもなかったのですが)
車両は、銘酒を堪能する絶好の空間でした
地酒トレインは仕事帰りにピッタリの18時33分に長野駅を発車しました。この列車は長野から志賀高原のふもと湯田中まで走る長野電鉄長野線のうち、長野駅-小布施駅間を往復します。
この地域は新潟県の有名米どころと水系が同じく(信濃川上流)、新潟県に負けず劣らず米のおいしさを誇る地域です。水と米が素晴らしければ日本酒醸造が発達し銘酒が生まれるのは必然。国税庁の資料によると、我が国の日本酒の酒造場は新潟県(89場)と長野県(81場)が飛びぬけて多く、兵庫や京都のような巨大メーカーはありませんが、個性豊かな酒蔵がたくさん点在しています。良質の米と水に恵まれて、素晴らしい日本酒を生み出すこの地域に生まれた私たちは幸せ者です。
さて列車に乗り込むと、すでにおいしいお弁当がテーブルに用意してありました。沿線の和食店が腕によりをかけたお料理です。見るからに日本酒に合いそうな見栄え、そして味も格別です。
出発と同時に乾杯。日本酒の銘柄は運行日によって違い、この日は長野市の今井酒造店と中野市の丸世酒造店のお酒がずらりとならび、どれも飲み放題です。私たちの車両でお酒を提供してくださるのは黒岩さん。普段は今回のようなイベント列車にかかわるお仕事を主にしているのだそうです。そして黒岩さんを強力にサポートするのは丸世酒造店の杜氏を務める関さんです。
社内を見渡したところおおむね仕事帰りと見受けられる職場つながりのグループが多く、金曜日ということもありリラックスして会話も弾んでいました。須坂市から来たという日本酒好きのグループは建設関連の会社の仲間です。「ワイントレインがよかったので、次は日本酒」と、駅でチラシを見て申し込んだとのこと。「お酒もおいしいし、お料理もサイコー」と皆さん笑顔でした。
スーツに身を固めた、いかにも日本酒好きのおじさま3人組も皆さん頬をほころばせています。お聞きすると沿線の食品製造会社にとお勤めということで、なかなか味にはうるさそうですが、そんな方にも今日のお酒は充分合格点のようですね。
長野県の日本酒は旨味が自慢
折り返し点となっている小布施駅でいったん下車し、おつまみを補充します。特設売り場で一番人気は「栗コロッケ」。栗の町小布施ならではの逸品です。それと野沢菜おにぎり。いずれもあっという間に売り切れてしまいました。駅前での抽選会で盛り上がった後は長野駅を目指して後半戦です。
丸世酒造店の関さんによると「うちは甘口なんだけど、後味がすっきりするお酒が特徴」とのことです。一方の今井酒造店さんも「甘味が特徴」とおっしゃっていましたので、図らずも共通しています。以前取材した「信州おさけ村」の鈴木店長によれば甘味とは旨味であり、長野県の清酒を特徴づける大切な要素のようです。
おおむね2時間の夢の旅が終わり、終着長野駅のホームに滑り込んだのは8時21分。ホームに到着すれば、ずるずると飲み続けることはできず、潔く席を立たなければなりません。日本の鉄道らしく時間通りにコトが運ぶところも、見方によれば居酒屋と違う魅力の一つかもしれません。
ところで列車に乗ってお酒を飲むという企てに、なぜこんなに人が集まるのでしょうか。電車に乗り、お酒を飲み、結局出発点に戻ってくる、それだけのことではありますが、走る電車のボックス席という非日常空間でのコミュニケーションが魅力なのかもしれませんし、やや自画自賛的にいえば信州のワインや日本酒がおいしいことも人気の要因のひとつだと思います。それに、きっと「列車」と「お酒」はとっても相性がいいのでしょうね。皆さんもひとつ病みつきになってみませんか。(つかはら)
この日提供された日本酒銘柄
今井酒造店(長野市):特別純米酒「手造りの酒」/風の露雪囲い/大吟醸「若緑」/純米吟醸「五岳」/特別本醸造生貯蔵酒「若緑」
丸世酒造店(中野市):大吟醸「手造り勢正宗」/純米吟醸「無ろ過生原酒」/純米酒「勢正宗 長野の星空」/純米吟醸「勢正宗 長野の山」/Winter carp 純米無ろ過生原酒
「ながでん地酒トレイン」は2月から4月にかけて、いずれも金曜日の夜に6回運行されるイベント列車です。
長野電鉄