神棚・仏様の準備
なぜブリの尾を飾るの?
今回ご紹介するのは、長野県の安曇野で伝わる行事と季節の料理です。長野県安曇野市豊科の望月邦子さん(74)のお宅にお邪魔し、お年取りの準備やお正月料理のお話を聞きました。
水田が広がる安曇野
安曇野は水田が広がる昔からの米どころ、望月さん宅の前にも水田が広がっています。安曇野の多くの家庭の餅つきは12月28日か30日。「お飾り(お供)の一夜飾りはいけないと言われているので、我が家では28日にお餅をつくの」と邦子さん。
鏡餅づくりも習わしがあり、最初のうすから奇数の数だけとり、神棚・仏様にお供えします。おいべっさま(恵比寿様)には鏡餅といっしょにブリの尾を飾ります。ブリの尾に串を刺して飾り、「来年は、頭やもう少しいい所がほしい。そのためにお金が稼げますように」と願って飾るそうです。
この地域では、昔から年取りには「出世魚」ブリを年取り魚として多くの家庭で1本買いました。最近は、ブリは高級魚になり1本買う家庭は少なくなっているようで、尾を飾る家庭もめずらしくなっているようです。「ブリを1本買う家庭でない限り尾は手に入らないので貴重なんだよ」。
昔は冷蔵庫もなかったので、1本買ったブリは家の北裏(直接日が当たらず涼しい場所)に吊るし、正月の雑煮から若年の頃(1月14日)まで大事に食べました。刺身、塩焼き、あらは鰤大根にといろいろ使いました。
鰤大根
望月家の神棚には、今年元旦に片目を入れたダルマがあり、お年取りまでには邦子さん手づくりの松飾りと新しいお札の入れ替えが行われ、お年取りの日にダルマに目を入れて新しい年を迎えます。
お役を済ませたお札とダルマ、松飾りは、来年の三九郎(どんど焼き)の時に、近所の子供たちが集めにきてくれ、おたき上げして一年の無事を祈ります。
立派な門構えの望月家
準備前の神棚
正月元旦は、早く起きて顔をあらい神棚や仏壇にお参りして、お正月を迎えます。昔は、家族皆揃い新年のあいさつを交わし、新しい年に初めて汲んだ水(若水)でいれたお茶に、豆、栗、柿、せんべい、饅頭などえんぎ菓子でお茶をいただきました。その後おせち料理をいただきながらお屠蘇で祝い、鰤雑煮を食べて新しい年の幸を祈りました。