9軒のそば屋さんが集まり、その名も「そば集落」
"唐沢(からさわ)"
粗びき蕎麦 そば本来の香りと味が楽しめる
松本市の南西、東筑摩郡山形村の唐沢地区。唐沢は信州の他のそばどころとは少々様相が異なります。村内の数百メートルの道沿いに9軒のそば店があり、「そば集落」というネーミングにも、そばを観光資源にしようという地域の意思が伝わります。
ぷりぷりしたエビがおいしい
そば店の営業が注目されるようになったのは昭和40年代ごろからですが、もともとこの地域は水車で精白や粉挽(び)きをする地域として近隣で有名で、そばづくりの下地は十分でした。明治期にはそば店が開業していたとの記録もあるようです。
江戸末期、水車の仕事をしていた人たち(車屋)がお金を出し合って建立したのが、集落の入口付近にたたずむ双体道祖神です。銘に「竹田村車屋中」とあることから「車屋美人」と呼ばれています。
この地域では、そばを皿に盛って供するのがかつての伝統でした。今ではせいろやざるに盛って出す店が多くなりましたが、たまたま入った店が、皿に竹のすのこを敷いた上にそばを盛って出してくれました。
皿に盛ると水切れはよくないのですが、味に変わりはなく、逆にそばの乾燥を防いでいるように思います。個人的には皿そば、大賛成です。唐沢集落も、そば店に民家の雰囲気が残っており、集落全体に旅人をもてなす「こころ」を感じました。
唐沢そば集落入り口アーチと、その右側の大きな看板がお出迎え
〈周辺の絶景ポイント〉
周辺には至近の清水高原のほか上高地、乗鞍高原など名だたる観光地が多いが、ここではあえて地域のシンボルである双体道祖神「車屋美人」を。
〈車でのアクセス〉
長野道・松本ICから上高地方面に向かい、波田小学校前の信号を左折。通称日本アルプスサラダ街道を4-5分走ると現地へ。清水高原入口のアーチが目印。松本ICから15-20分。
〈Google マップ〉清水高原
ツナギは小麦粉ではなくオヤマボクチ
"富倉(とみくら)"
オヤマボクチのツナギが独特のなめらかさを生む
飯山市富倉。今では飯山市街地から車で簡単に行けますが、富倉地区は新潟県境近く、というより飯山方面からは峠を越えて新潟県側に少し下った場所です。豪雪地帯でもあり、冬には交通が途絶したこともあったとか。今では地区の下を北陸新幹線の飯山トンネルが通っています。
隠れ里のような富倉ですが、今では全国各地からそば好きが集まります。訪ねたのは月曜日、しかも雨の日だったにもかかわらず、神奈川から来たという4人連れと一緒になりました。
そばを註文する前に出てくるお通し!!(正確にはお通し+薬味ネギ)
富倉そばの特徴は、ヤマゴボウ(オヤマボクチ)の葉の繊維をつなぎに使っている点。のど越しの良さと歯ごたえが多くの人を魅了しています。オヤマボクチはもともと野生植物ですが、店では昔は山に採りに行ったオヤマボクチを、今では畑で栽培しているとのこと。もう一つ、富倉の名物が笹の葉に酢飯を盛り、山菜や刻んだ漬物、紅ショウガなどを載せた笹ずしで、ソバと一緒に注文する人もいます。
現在は2軒しかそば店のない富倉ですが、同地区出身者などが県内各地で富倉流のそばを提供しているケースもあり、富倉の名は結構知られるようになってきました。
笹ずし。行軍中の上杉謙信に供されたという話も
〈周辺の絶景ポイント〉
周辺には戸狩温泉、野沢温泉など温泉も多い。野尻湖は北信濃を代表するリゾート。バックは黒姫山
〈車でのアクセス〉
上信越道・豊田飯山ICから飯山市街地経由、国道292号を新潟県新井市方面へ。途中、富倉地区に分かれる山道入口に富倉そばの看板がある。豊田飯山ICから30分くらい。
〈Google マップ〉飯山市富倉