北アルプス山麓のそばの里
新行(しんぎょう)
地区内ではソバの花が満開(2016年8月23日)
大町市美麻新行。かつての美麻村新行地区は信州の他のそばどころと同様、知る人ぞ知る地域でしたが、各地で「そばまつり」が盛んになるようになって全国的に注目されるようになりました。つまり「新行そば」は全国のそば通に支持されているそばなのです。
新行そばの強みは伝統のソバ栽培を背景に、質の良い地粉をふんだんに使っている点。加えてそば店がソバのことをよく知っていること。当然といえば当然ですが、ソバは毎年出来が異なり、豊作年だからといって味が良いとは限りません。そこを判断しないと舌の肥えた客、それが遠来の客ならなおさらがっかりさせてしまうことにもなりかねないのです。
盛りそば 長野市や松本市からの常連が多いのもうなずける香りと歯ごたえ
こちらは大盛り。男性でも十分な量
地区内の店を訪れたときも、常連と思われる男性が「そばがき」を食べられるか尋ねていました。秋近しとはいえ8月下旬です。そばがきは、そば切り以上に香りが命。「そばがきOK」を聞いたその男性は盛りそばと併せて注文していました。
地区内にはあちらこちらで秋ソバが白い花を咲かせていました。大町温泉や仁科三湖へのアクセスも良く、少し足を延ばせば白馬や安曇野も。周辺に見どころが多い同地区のそばは、観光客も引きつけています。
〈周辺の絶景ポイント〉少し足を延ばせば白馬連山を望む大自然も(北安曇郡小谷村・栂池自然園)
〈車でのアクセス〉長野市からは国道19号から白馬長野有料道路・安庭IC経由、県道31号(大町街道/通称オリンピック道路)に入り、白馬村方面へ。青具の信号を左折して10分ほど。松本市からは国道19号の塔の原信号(安曇野市明科)から県道51号で大町市街地へ。県道31号に入って15分ほど。
〈Google マップ〉大町市新行高原
独特の歯触りとのど越しが魅力
須賀川(すがかわ)
リゾートの一角という雰囲気に満ちている(2016年9月1日)
下高井郡山ノ内町須賀川地区は高社山(高井富士)の東麓、北志賀高原の入り口にあります。
この地域も山村の食文化を残しており、そば打ちでも、北信濃一帯にみられるヤマゴボウ(オヤマボクチ)の葉の繊維をそばのツナギに用いるのが特徴です。独特の弾力のある歯触りとのど越しがたまりません。
ある店で静岡から来たという年配の男女8人組と一緒になりました。同窓会メンバーとのことですが、「オヤマボクチをツナギに使っているそばを食べに来た」とのこと。結構事前調査もしているようでした。
のど越しの良いそば
もう一つ、大根の千切りを軽くゆで、そば粉を入れてかきまぜる「はやそば」も須賀川の名物。ゆるいそばがきという感じで独特の食感です。おなかはすいているけど、お酒も早く飲みたい、という向きにはぴったり。いや、これは私事ですが。
「はやそば」。薄めの出汁を少し杓子(しゃくし)に取り、はやそばをすくって食べる
須賀川地区は、観光客にも注目されている北志賀高原の一角という地の利もあって、新しいそば店もできています。そうしたそば店は必ずしもこの地域伝統のそばづくりとは限らぬものの、そばどころとしてのすそ野の広がりを感じさせます。地元の熱心な取り組みも、今後の発展を予感させます。
〈周辺の絶景ポイント〉志賀高原は四季を通じて楽しめる自然豊かな観光スポット。湯田中、渋など温泉郷にも近い。
〈車でのアクセス〉上信越道・信州中野インターから国道403号を木島平村方面へ。須賀川地区までは同インターから25分前後。途中の夜間瀬の信号からは10分ほど。
〈Google マップ〉山ノ内町須賀川