信州の郷土食といえば「おそば」や「おやき」が代表的ですが、意外と知られていないのが「こねつけ」。戦国時代の信州の武士たちの常用食として用いられていたそうで、NHK大河ドラマ「真田丸」でおなじみの"真田一族"も食べていたのだとか。
今回はそんなこねつけもちのお話です。
そもそも「こねつけ」とは?
「こねつけ」は、主に長野県北部(北信地方)で昔から食べられてきました。地域によっては、「こねつけやきもち」ともいいます。昔、水田地のない(あるいは少ない)土地では米は貴重でしたので、余ったごはんも無駄にせずおいしく食べよう、という先人の知恵から生まれた郷土食のひとつです。特別に作るものではなく、炊いたごはんが少し残ってしまったときなどに作ります。材料はいたってシンプル。一般的には、ごはんと小麦粉、味付けは味噌。素朴な味わいが魅力です。
「真田丸」人気に沸く長野市松代町へ♪
「こねつけ」を製造・販売している、株式会社おやきや総本家松代店へおじゃましました。
お店の場所は、「真田丸」人気に沸く長野市松代町。松代観光案内所・真田宝物館と同じ敷地で、真田邸門前にあります。「こねつけ」はもちろん、おやきも販売していて、作りたてを店内で食べることもできます。電子レンジが置いてあり、温めることもできます。
おやきや総本家では、小中学生を対象にした「おやき道場」を開催し、おやきの普及にも力を入れている
体にもおいしい郷土食を現代に
株式会社おやきや総本家の市川武邦会長にお話をお聞きしました。
おやきや総本家松代店で「こねつけ」の販売を始めたのは、15年ほど前。昔から食べられてきた体に良いものを、現代でもおいしく食べてもらいたいと思い、商品化できないかと試行錯誤しました。
家庭で作る場合は表面に味噌をつけることもありますが、これでは味噌が手についてしまったりして、ちょっと食べづらいので、中に入れることにしました。こうすると、手にもって歩きながら気軽に食べてもらうことができます。ただの味噌ではなく、「くるみみそ」を使っているのが「みそ」です。
米と小麦粉は地元産(松代町周辺)、くるみは東御市産と、材料のほとんどに信州産を使用した、地元のおばちゃんたちによる手作り。"真田こねつけもち「真田丸」"と命名し、販売しています。
※"真田こねつけもち「真田丸」"は(株)おやきや総本家の登録商標です
初の「こねつけ」を食す!
早速、私たちも"真田こねつけもち「真田丸」"をいただきました。
皮がもちっとしていて、中に入っているくるみみそが甘じょっぱいけど濃くなくて、おいしい。ぺろりとたいらげてしまいました。ひとつ食べただけなのに、おなかは満足です。
このもちもち感は、うるち米だけでなくもち米を少し入れているから、とのこと。
実は、お恥ずかしいのですが、私は生まれも育ちも北信地方です、が「こねつけ」を聞いたことも見たことも、ましてや食べたこともありませんでした・・・。我が家では、もっぱら「おやき」「にらせんべい」を食していました。が、「こねつけ」も、おいしいですね♪
幸村も食べた? 真田の里のこねつけ物語
市川武邦会長によると、こねつけの歴史は、今から500年前に遡ります。
戦国時代、大阪夏の陣が始まるころ、徳川方に味方して戦に備える真田信之公の元を密かに訪れた立派な武将がいた。その武将こそ、後の世にその名を残す真田幸村公である。
豊臣方についた幸村公が今生の別れを告げるため、兄の元を訪れたことを知り、兄弟は静かに別れの盃を交わすのだった。
深夜のこととて米を炊くわけにもゆかず、残っていた冷飯を丸めて味噌で味をつけた餅を土産に持たせたという。 真田こねつけ餅には、そんな兄弟のせつない物語があったといわれている。 (
おやきや総本家のHPより)
"真田こねつけもち"を作ってみよう!
"真田こねつけもち"の作り方を見せてもらいました。
●おやきや総本家松代店での作り方
1.ご飯と小麦粉(半々の量)に水を加え、こねる(だいたい、耳たぶ位の柔らかさ)。
2.卵くらいの大きさに分け、くるみみそを入れ包む。
3.トレイに並べて蒸し機に入れ、18分ほど蒸す。
4.鉄板に薄く油を引き、片面を薄い焼き色がつく位に焼く。
六文銭の焼印をつける。
5.こねつけもちを冷ましてから、包装する。
●家庭で作るときのポイント
・こねつけを蒸す時は、家庭用蒸し器を使って20分ほど蒸してください。※電子レンジでは、ムラになってしまいます。
・表面を焼くときは、フライパンに薄く油を引いてから、薄い焼き色がつく位を目安に焼いてください。