じわじわ熱い!若穂の新ジビエ料理に注目

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「一度でも『かたい・臭い・まずい』と思ったら、二度と食べてもらえない。だから、はじめに美味しいジビエ (*1) を食べてほしい」と話すのは、日本ジビエ振興会理事・料理講師の三田敬則さん。
フランス料理店などで「冬のご馳走」としても供されるジビエですが、信州でも、昔から自然の恵みのひとつとして食されてきました。近頃、そんなジビエの新たな魅力や可能性に注目が集まっています!
今回は、山の恵みと生命を頂くことに感謝しつつ、「信州若穂からジビエのおいしさを伝えたい!」と昨年スタートした「じわじわ熱い料理講座」をご紹介します。


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鹿肉(左)と猪肉、各2キロ

ジビエにぴったりの
「新調理システム」とは!?

長野市の最東端に位置する若穂は、自然豊かな里山が広がる地域です。訪れたのは、若穂川田地区にあるJAグリーン長野の若穂農産物加工センター。調理室では早速、机の上の大きな塊を囲み何やら始まりましたよ。同JA営農部に事務局をおく「若穂食のモデル地域実行協議会 (*2) 」主催のジビエ料理の講座です。でも、ちょっと他の料理教室とは様子が違います・・・。なんと、解体された鹿や猪肉の下処理から学ぶというのです。その上、独特な食感のジビエにぴったりの新しい調理システムを使うといいますから、ますます興味津々です (*゚▽゚*)

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調理の前によく洗う。「丁寧な下処理も重要」と三田敬則講師

ジビエ本来の美味しさを引き出す
そうはいっても、「『ジビエって、匂いもワイルドでちょっと・・・』という方も多いのでは?」と編集部員の不躾な質問に、講師の三田さんから冒頭の言葉が返ってきました。
「まず、ジビエの部位と素材の特性を知って」
「赤身とスジを一緒に調理すると、それぞれの良さを殺してしまう。かたいのはそのため」
鹿肉のスジにそって包丁を入れていく三田講師は、ジビエ本来の素材の美味しさを引き出す「真空低温調理法 (*3) 」の専門家で、「若穂地区の肉質の良さありきだけど、これなら絶対失敗しないので」とニッコリ。そう、新調理システムとはこの「真空低温調理法」のことだったのです。

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赤身・スジなど部位ごとに切り分ける三田敬則講師

同加工センターには真空プレッサーもスチコン(スチームコンベクションオーブン)もばっちり揃っていて、女性部の皆さんも設備を活かす料理バリエーションをいろいろ考えて試していたそうです。三田講師や新ジビエ料理との出会いは、もはや偶然ではなく必然というべきものですね。

地元の農産物や家庭の味を使った即興メニューも登場
三田講師は各部位の切り方や調理法などを説明しながら、みるみるうちに鹿肉を切り分けていきます。

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見事な手さばきで部位ごとに切り分けられる

「赤身はタレに漬けて焼いてもいい」「ショウガもよくあうけど、皮をむくのがポイント。真空低温調理法は土の中にいる嫌気性細菌が入るリスクを減らすことが重要」と三田講師がいえば、「塩麹と醤油麹をもってきたから漬け焼きも試してみよう♪」と、女性部の皆さんの経験や知恵もあいまって、和気あいあいと進みます。この料理講座が他の料理教室と違う点は、ジビエ以外の食材は、地元のものや参加者の家にあるものを持ち寄ることです。この日は、人参、玉ねぎ、長ネギ、ショウガ、りんご、柚子などといった農産物のほか、お手製調味料(塩麹・醤油麹)がずらり勢ぞろい。三田講師は、そこにある素材を見て何を使うかその場で決めていきます。どんどん即興メニューが広がります。

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醤油麹をもみ込む(手前は塩麹)

熱も味もじっくりじわじわ、がポイント
さて、今回のメイン「鹿肉のロティ (*4) 」の作り方をご紹介します。


鹿肉のロティ

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【作り方】
1. 鹿肉の「ももの赤身肉」に塩コショウをし、フライパンで表面を軽く焼く。
2. 真空パックするために一旦冷蔵庫で冷ます。※肉を寝かせることで旨味がアップする。
20140122gibier08.jpg3. 専用袋に鹿肉・バターひとかけ・ブラックペッパー少々を入れ、専用プレッサーで真空パックする。
4. スチコンに入れ、65℃で40分と入力してスイッチオン。あとは待つだけ・・・。


あら簡単! つきっきりでフライパンやオーブンとにらめっこ、な〜んて温度管理に気を使いながら焼くこともありません。三田さん曰く、「じっくりじわじわ熱も味も均一に入るので、やわらかくて美味しい。ジビエにぴったりの調理法でしょう」。

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猪(上段)と鹿(下段)を低温加熱で蒸し焼きに

簡単で新鮮!
真空低温調理法の即興レシピ

調理を待つ間に、本日の即興メニューのご紹介を♪


「麹の漬け焼き」
参加者の池田清子さんお手製の塩麹・醤油麹に、鹿・猪肉を漬けてフライパンで焼くだけ。シンプル料理ながら肉と麹パワーの相性抜群! 噛むほどに旨みと香ばしさが口いっぱいに広がり、癖になる味です。

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20140122gibier12.jpg「鹿肉のスープ」
「猪肉のスープ」

鹿・猪肉を野菜と一緒にスチコンで蒸し焼きにして、濾したスープ。透き通った黄金色で、味もまさに金メダル級! あっさりと上品な味わいです。



20140122gibier13.jpg「りんごの柚子コンポート」
専用袋に一口大のりんごと甘酢・砂糖・柚子を入れ、真空低温調理(85℃で20分スチコンで加熱)。くた〜っとしすぎない、ほど良い食感と爽やかな甘みに、一つ、またひとつと止まらない逸品です。


美味しさとアイディアが広がるアツい試食会

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さあ、お楽しみ、メイン料理の試食会です。
ほんのりピンク色でサシのない赤味は、驚くほど柔らかくてジューシー♪ 昔から猪・鹿汁を豚汁風に食べていたという皆さんも、「癖がないし、こんなにしっとりなんて驚き」「りんごや柚子とよくあう」「ワインにもいいね」と大好評です。
「まず他の女性部員(若穂女性部147名)にこの味を伝えて、家庭や地元に広げたい」「他のメニューも考案して飲食店においてもらおう」「おつまみも開発したい」と、今後の計画におおいに盛り上がりました。

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付け合わせのりんご柚子コンポートやお手製のお茶請けと共に試食

これまで女性部とともに、蓼科のフレンチレストラン「オーベルジュ エスポワール」で、本格ジビエコース研修会やシチュー試食会を開催してきた同JA営農部、同協議会の橋本寿雄事務局長も、「若穂の恵まれた農産物を活かしたメニュー開発には女性部の力が重要」「定期的に料理講習や試作を重ね、JA女性部の加工品として直売所やA・コープ、飲食店に提供していけたら」と、消費拡大のバックアップ体制にも余念がありません。
「ジビエの美味しさを伝えたい!」そんな熱い心意気が、まるで低温真空調理されたかのように、じわりじわりと伝わり浸透してくるようでした。

「若穂ジビエ」が味わえる長野市内の飲食店
「善光寺寄り道参道」とも言われる、長野市の「しまんりょ小路」にある加盟店7店(ジビエの鹿マークあり)では、すでにいくつかのジビエ料理が味わえます。2014年1月23日には、しまんりょ会と女性部合同の料理講習会も行われます。女性部開発のメニューが並ぶ日も近いかもしれませんね。どうぞお楽しみに♪

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塩麹で漬けて焼くだけでもぐんと美味しくなる

*1) ジビエ(jibier - 仏語):狩猟などで捕獲した野生鳥獣の食肉。フランス料理の高級食材というイメージがあるが、「もみじ(鹿)鍋」や「ぼたん(猪)鍋」などは、マウンテンカントリーならではの伝統的食文化でもある。

*2) 若穂食のモデル地域実行協議会:同地区JAグリーン長野・若穂ジビエ振興会・長野市・同市街地の飲食店等が、増加する野生鳥獣害を減らすため捕獲したイノシシ・ニホンジカの活用と、ジビエ食文化発展のため設立。捕獲・加工販売・料理メニュー開発・誘客を一体的に進める活動は全国的にも珍しく、2013年度に農林水産省が創設した補助事業「食のモデル地域構築計画」で、ジビエ関連としては唯一認定を受ける(全国66の計画内)。新鮮で良質な食肉加工・安定供給と、地元農産物を使った新たなメニュー開発で、ジビエを広く伝え消費拡大を図る。

*3) 真空低温調理法:食材や調味料を専用の包装フィルムに入れ真空状態にし、スチームコンベクションオーブン(スチコン)で低温加熱する調理法。食材によるが、60℃〜95℃の低い温度で20分〜3時間かけてじっくり調理するため、加熱に弱い栄養素(ビタミン等)も壊さず、香りや風味を逃さず、酸化も防ぎ、均一な仕上がりが容易に可能。

*4) ロティ(roti - 仏語):オーブン等で焼くローストのこと。または、ローストした肉料理のこと。

◇あわせて読みたい
・「生態系に思いを馳せる八島湿原学習ツアー
・「自然を讃え野生を頂くジビエのおいしい世界

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