田畑に囲まれ、自然豊かな安曇野市内を軽快に走る一台の軽トラック。
車体に描かれた虹色のリボンのイラストも楽しげに、向かった先には「あんしん広場」の幟旗がはためいています。
広場に到着すると、待っていたかのようにどこからともなく人が集まり、あっという間に車を囲みました。
これは、移動購買車「あんしん号」。
荷台の扉を開けると、中にはパンやお茶菓子のほか、信州には欠かせない漬け物の素など、食品を中心にたくさんの品々が積まれています。
みんなの願い"近所のお店"が始動
今、昔ながらの"近所のお店"が、どんどん減少しています。郊外に建つ大型のショッピングセンターの影響で、急に物が足りなくなった時に労せず買いに行ける小さな商店が、閉店せざるをえない状況が各地で起きているのです。こういったお店には特別目新しいものはなくても、ほしいものが確実に手に入る安心感がありました。若くて元気がある現役世代は郊外で買い物をするほうが便利ですが、足腰が弱い人や車を運転して遠くまで行けない人、一人暮らしで気軽に買い物をお願いできる家族が近くにいない人など、高齢者の方にとっては歩いて行ける近所の店が生活に欠かせません。
ここ安曇野の地でも近所のお店が減っていく現象は止まりませんが、「なんとか日用品を近くまで届けてほしい」と、熱望する住民の声があり、昨年10月に、買い物弱者救済のための移動購買車「あんしん号」が、JAあづみから誕生したのです。
「どこからでもどなたでも」の安心ネットワーク
このあんしん号が店を開くのは、「あんしん広場」の開催地です。あんしん広場とはJAあづみの組合員や地域のお年寄りなどが集まって、勉強会や体操、折り紙に歌、お茶を飲みながらの情報交換などを行う交流会のことです。運営はJAあづみの組合員や地域住民が参加する生活互助組織「くらしのネットワーク"あんしん"」。「どこからでもどなたでも」を合言葉に、月に一度開催されています。いくつになっても元気に暮らそう、生きがいづくりを支えようというこの地域活動は、JAあづみ管内でなんと27箇所にも及んでいるのです。
この集いに加わることになった「あんしん号」の軽トラックは、「くらしのネットワーク"あんしん"」と、JAあづみふれあい市「安曇野五づくり畑」が連携して購入し、組合員の幸せづくりに役立ててほしいと寄付したものでした。
なんでもおまかせ!平成の「御用聞き」
あんしん号には、くらしのネットワーク"あんしん"のメンバーである運転手と助手が乗っています。事前にJAの店舗でお薦めの商品や注文を受けた品を吟味して買いそろえ、荷台に積み込むこともふたりの仕事です。
この時必要になるのが、車に積まれた「御用聞き帳」(写真中)。これには次に来る時に買って来てほしいと頼まれた商品などが書き留められており、そういった品物を忘れずに仕入れています。時には「●●円のお茶がほしい」という細かい要望が書かれていることも...。そんな場合でも値段に合う物を捜し求めてお届けするそうです。何という細やかな対応でしょう。さらに、あんしん号には食料品ばかりでなく介護用品もきちんと積み込まれてありました。
安曇野の里に咲く笑顔の花
車を囲みながら、それぞれに自分のお気に入りの品物を「これ美味しいんだよ」と、人に薦めるなど、あんしん号を中心にして会話の花が咲き広がっています。「近くに店舗がないから、こうして車が来てくれるとありがたい」「ここで買い物するのが楽しみ」などと話す皆さんからは笑みがこぼれ、のびやかな安曇野の風景とあいまって、ここに集まった人々の表情は明るく生き生きと輝いて見えました。
リンク
・JAあづみ