やってきた人たちみんなが自然と笑顔になって、心が温かくなるような、そんな場所があります。そこにはユニークな「かかし」も集まってきていて、訪れた誰もが笑顔で帰って行く特別な場所なのだがという風のしらせを聞きつけ、いったいどんな「かかし」がいるのだろうかと胸ふくらませ、快晴の空の下、北安曇郡池田町に向かいました。おかげで素敵なかかしたちと出会えただけでなく、みなが幸せになれる場所づくりの秘密を知ることもできました。写真を見てほっこりしてください。かかしと普通の人間の見分けが、あなたにはつきますか?
堀之内かかし村にようこそ!
北安曇郡池田町。南北に伸びる県道51号線を走っていると、お、お、いましたいました。案内役のかかし君です。遠目に見ると、本当に人が立っているように見えます。案内通りに進むと、堀之内(ほりのうち)地区に入り、そこには49体(人?)ものかかしが集まった、"堀之内かかし村"がありました。
この日、かかし村では"かかしあげ"が行われていました。かかしは田んぼを見守る、田の神さまのご神体と考えられ、今年も無事に収穫出来た一年の労に感謝して神さまたちが山に帰るのを見送る神事が"かかしあげ"です。
つまり、この日が、今年のかかしの役目の終わる日でもあります。ということもあって、一帯のかかしが大集合していました。なかには新作のかかしもあり、そのユーモア溢れるコンセプトに訪れた人たちも関心することしきり。
かかしの楽団が昭和浪漫溢れる懐かしいレトロな歌謡曲を奏でる中、かかし村の村長さん−−本物の人間−−である、松澤範明(まつざわのりあき)さんにお話をうかがいました。
リアルで面白いやつがいい
「こんなに人が来てくれるなんて、嬉しい誤算だね。最初は思いつきで作ってみただけだから」と松澤さん。聞けば何年か前に思いつきで自分の田んぼにおばあちゃんのかかしを座らせてみたそうです。すると「動かないおばあちゃんがいる!?」と思った車がしばしば停まるようになって、「これは面白い!!」とイタズラ心と好奇心に火が着いた松澤さん。他にもリアルで面白いかかしを作るようになり、面白がった集落の仲間も加わって、いつのまにかユーモア溢れる"かかし村"が、ぞろぞろと出来あがっていったとのこと。
本当におかしい
とまあそうこう話しているうちに、更に人が集まって来ました。かかし村は大盛況です。もう誰がかかしで誰が人間なのか分かりません。かかしカメラマンの前を横切って、「あ、すみません。」とか言っている人もいました。見に来た人は「一体一体がユニークで本当におかしいよね。あと、服装が懐かしくて癒されるよ」と笑顔で話しています。
「面白いって言って賛同してくれる仲間がいて、見た人は驚いたり感心したり笑ったりしてくれる。みんなニコニコして帰ってくよね。それが一番楽しい。メンバーもみんな楽しんで、好きでやってるから、それがいいんじゃないかな」と松澤さん。なるほど、作る側が心から楽しんでやっているから、訪れた人が笑顔になれるものが出来たんです。
絆を結びなおす
農村においても集落や隣近所の結びつきが希薄になっている現代、堀之内集落では、かかしを作ることで、集落的な結びつきを取り戻したという話も聞きました。自分たちも楽しめることを一緒に(決して強制はせずに)やることは、深くて長続きする絆を生む近道なのかもしれません。
堀之内かかし村はまた来年!
堀之内かかし村、今年はこれでひとまず見納めとのこと。次にかかし達に会えるのは、「美しい日本の歩きたくなるみち500選」に長野県トップで選ばれた「安曇野北アルプス展望のみち」を擁する池田町をあげての来春5月に予定されているイベント「第5回いけだまち北アルプス展望ウォーク」の頃だそうです。
かかし村はウォーキングコースの休憩地点となる予定で、それに会わせて設置されるかかしたちは、毎年参加者から大絶賛とのこと。北アルプスの展望が素晴らしい池田町を、ユニークなかかしとの出会いを楽しみに歩いてみるのも楽しそうです。どうか来年の予定に入れておいてください。
参考サイト:
・安曇野・池田町 里山ウォーキングガイド
・安曇野北アルプス展望のみち
・池田町観光協会
・信州池田町観光情報
・堀之内かかし村 松澤村長こと「自動車屋 のりちゃん」のブログ