食育・健康

安全安心を脅かす放射線被ばくのことを学ぶ


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先週の新信州暦でも長野県内の水道水や農産物(ホウレンソウ)では、放射性物質が不検出となったことをお伝えしたところですが、安心・安全な農畜産物を誇りにしてきた農業者にとって、今回の福島原発事故は看過できない問題です。諸外国からの国産農畜産物の禁輸措置や輸入農畜産物の増加のニュースを聞くことは本当につらいものです。安心して生産できること、そしてそうやって作られたものを食べることが当たり前という一日が早く訪れることを願います。

このような状況において、放射能汚染についての問い合わせが長野県内でも高まってきています。この声に応えるため、先月30日、長野県佐久市にある長野県厚生連佐久総合病院において「放射線・被ばく勉強会―原発事故と放射線被ばく―」が開催されました。

原発事故問題の一刻も早い解決が望まれますが、政府ではまだかなり−−数ヶ月から数年の−−時間を要するとのこと。3月27日からはNHKも「各地の放射線量」というサイトを立ちあげ、東日本の代表的な都市の放射線量を毎日公表するようになっており、そこには長野市も当然含まれています。長野県のおいしい食べ方編集部も、正しい情報を身につけ、読者と共有すべく、勉強会に参加してきました。

やはり関心の高さを表す400名ほどの参加者
勉強会が開かれた佐久総合病院は、東日本大震災でも、いち早くDMAT(災害派遣医療チーム)およびドクターヘリを現地に派遣。長野県医療救護班として3月中旬から宮城県の石巻赤十字病院へ医療チームを派遣されるなど、地域・農村医療にかかせない中核病院です。

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勉強会には、関心の高さから会場がほぼ満員となる400名弱の参加者がありました。同病院、放射線治療科部長の鹿間直人氏および診療放射線科技師、医学部物理士の前島友和氏のおふたりから聴いた話を、編集部の素朴な疑問形式に再構成してお伝えします。

(*おことわり:平成23年3月30日現在の状況をふまえた勉強会資料・講義をもとに長野県のおいしい食べ方編集部が執筆しています。放射線への具体的な対応について、詳しくはお近くの専門医にご相談いただくか、都道府県市町村のホームページまたは記事末の参考ページをご覧ください)

Q1 Bq(ベクレル)とかSv(シーベルト)って一体何なの?

A1 ベクレルは、放射能(放射線を出す能力)の単位で、1秒間あたりの数と考えるとわかりやすい。放射性物質は寿命があり、物質ごとに半減期が違ってくる。ヨウ素131の半減期は8日なので、これを蛍6匹にたとえると、うち3匹は1回光った後、8日後に死ぬということになる。このベクレルでは人体への影響がわからないので、これを表すシーベルトという人体への影響を表す量にして表示する。

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Q2 ニュースなどで「通常の○○倍の放射能が検出されましたが、健康に影響はないレベルです」とはどういうことですか?

A2 ○○万という数字に惑わされてはいけない。単位を見ることが大事。シーベルトに対して、ミリシーベルトは1000分の1、マイクロシーベルトは百万分の1。ちなみに私たちは自然界からの放射線を年平均約2.4mSv(ミリシーベルト)受けている。その中には、私たちの身体を作るカリウム40という物質も含まれている。また人工放射線として、医療関係では、胸部レントゲン1回(0.05〜0.3mSv)、CT検査1回(7〜20mSv)、放射線治療(約50,000mSv)被ばくしている。また規制値は、健康面に万全を期した低いレベルで設定されている(365日食べ続けても問題ないように設定)ため、影響はないということになる。一時的に高い数値が出ても一瞬の高い数値は怖くない。放射線量と時間の積(面積)が問題となる。


Q3 野菜から出た現在の放射線量は、人体にとって影響はどうなのですか? 摂取制限もされていますが。

A3 個人と集団に分けて考える必要がある。ホウレンソウ(基準値2,000ベクレルのもの)を、毎日100g摂取したとしても50年間でCT検査1回分である。某県で15,020ベクレルという値が出たが、個人レベルでは、発ガンのリスクからしてもおそれる心配はない。しかし、集団で考えるとリスクは0%ではないので、政府としても摂取制限を呼びかけた。甲状腺ホルモンのもとになるヨウ素を、我々は、普段海草などで取り入れている。成人に達すると飽和状態にあるので、ヨウ素131を摂取したとしても問題はないが、二十歳になるまでは、放射線量に依存して甲状腺がんのリスクが増加する。特に乳幼児についてはリスクがより高いため、注意が必要となる。なお、妊婦さんが基準値(100mSv)の水を飲用してもお腹の子への影響はなく、また授乳中のお母さんがその水を飲んだとしても母乳中には一部しか含まれないことが分かっているため、特別な水を探す必要はありません。


Q4 今後も食べていいのか不安です。

A4 レントゲンやCTなど医療被ばくには限度はない。それは病気発見というメリットの方が大きいから。同様に食物には身体にメリットがある。規制値は安全なので、食べるなといわれてから食べなければいい。また日本人の日常生活における死亡リスクと比べると、喫煙、自動車事故の方が多い。あらゆる死亡リスクを無視して放射線だけをむやみにこわがる必要はない。もちろん「余分な放射線は浴びない方がよい」という原則はある。


Q5 被災地からきた方たちを受け入れる場合の放射線への注意点は?

A5 現在の状態では、福島第一原発付近から移動された一般の方については、放射性物質の汚染の心配は全く問題ない。服の埃をはらい、シャワーを浴びてもらい、温かいおもてなしを。


Q6 放射性物質は、検査しない限りどの程度の量になっているのかわからない。必要な検査ができているのかどうか不安です。

A6 放射性物質を特定して、計測しているのではなく、出ている放射線を測っている。増加している放射線については、各県がモニタリングしている。また放射線の原子はすでに調べつくされ、原子ひとつづつの半減期やエネルギーなどもわかっている。


Q7 結局、今の放射線量は安全なのか?

A7 現段階においては、不妊や白内障といった確定的影響は全く問題ない。また発ガンなど確率的影響も無視できる範囲にある。

今回のお話を聴いて、あまり過剰に反応せずに、正しい知識を得て冷静な対応をとるべきことを学びました。食料自給率の維持向上(野菜産地の維持)という面からも、風評に惑わされないことが今わたしたちに求められています。

長野県内の農業者にとってもこれから、露地での野菜栽培や水稲は種など、本格的な農作業の時期となります。一刻も早い原発事故問題の解決が望まれますが、今の状況を見るに、簡単に終息しそうにはありません。誰もが国産農畜産物を、放射線量のことで頭を悩ますことなく、安心して食べられる日が来ることを、強く待ち望んでいます。そして少なくともこの問題がわたしたちに生き方を問いかけていることは間違いありません。

参考サイト:

福島第一原子力発電所事故による農畜水産物への影響▼今般の東京電力福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が検出されたことに伴う農畜水産物の安全性確認結果、出荷規制などの情報に関する農水省のポータルサイト

社団法人日本医学放射線学会

財団法人原子力安全研究協会

専門家が答える「暮らしの放射線Q&A」日本保健物理学会の会員を中心とした有志により運営


あわせて読みたい:

福島県民医連(福島県民主医療機関連合会)齋藤紀医師講演「正確に学ぶ放射線・人体への影響」

放射性核種(セシウム)の土壌−作物(特に水稲)系での動きに関する基礎的知見社団法人日本土壌肥料学会

放射能汚染された野菜畑の処置について(緊急提案)生井兵治[筑波大学元教授・植物遺伝育種学]


自分の環境を知りたい:Update | 2011/04/13

全国の放射能濃度一覧

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