食育・健康

ハムづくりの体験から子どもたちが学ぶこと

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長野県の北に位置する長野市信更の信田小学校で、昨年12月末、「食育」の一環で1年生から6年生までの全校児童50人とその保護者、教職員が参加しての「ハムづくり」(畜産物加工体験教室)が行われました。大人でも難しいと感じるあのハムづくりです。

「食育」という言葉はみなさんも一度や二度は聞いたことがあるでしょう。いろいろな実体験をとおして「食」に関する知識と「食」を選択する力を自分のものにし、健全な食生活を実践することで人間を育てることを意味します。本来は家庭でこれを行っていたのですが、社会の急激な変化がこれを難しいものにしつつあります。

健康を損なうかもしれないファーストフードの急速な広まりと食生活の変化に対応し、食を通じての地域理解と伝統文化継承の必要を認識し、そして自然の恵みや勤労の大切さの理解を図る目的から、2005年(平成17年)に食育基本法が、その翌年に食育推進基本計画が制定されました。

今では学校教育においては積極的に「食育」に取り組み、子どもたちに食に関する正しい知識を身に付けさせることが重要視されています。そしてこの「食育」には、対象となる世代に応じて、小学生から大学生までさまざまな形がありますが、なかでも小中学校の子どもたちに、調理体験を通じて、食の大切さ、命の大切さを教える取り組みが多いようです。

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今回の畜産物加工体験教室を主催したのは社団法人長野県畜産会。安全で安心な国産畜産物の消費拡大と畜産物加工体験を長野県の各地で行っており、今回のハム作りは畜産物の加工体験を通じて食べ物と命の大切さを学ぶ目的で行われました。

本格的なハム作りに挑戦
ハム作りと聞けば大人でも難しいと思うのですから、子どもたちにもかなり難易度は高そうで、不安に思うかもしれませんが、大丈夫。きちんとハム作りの先生がついているから子どもたちでも安心です。指導は元・長野県畜産会常務の小山武彦先生です。ハムの作り方を教わりながら、子どもたちは各テーブルごとに調理を進めます。

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ハムづくりを指導する小山武彦先生と手造りの燻煙器

まず、全員で既に県東部にある佐久穂町のJA佐久浅間「きたやつハム」でつけこんだ豚肉のブロックを布で巻き、形を整えながらタコ糸で締めます。各テーブルでは子どもたちが「ドンドン!」とテーブルに布でくるんだブロックを打ち付けて丸くしていきます。タコ糸で縛るのがまた大変。スプーンを使いながら糸を縛りあげます。友達同士、または大人に手伝ってもらいながら30分ほどでハムらしい形にして燻煙器につるします。つるす時は「うまいハムが出来ますように」と手を合わせる子もいます。そうやって乾燥させたのち、いよいよ燻煙します。

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たこ糸で縛ったものを燻煙器につるす

燻煙後ふたを開けると、途端にものすごい煙が出てきます。子どもたちは茶色になった肉のブロックから出るいい香りに包まれて、煙がたちこめる箱の中をのぞき込み、涙を流しながら茶色に焦げた布を見て自分のハムがあるかを確認。「俺のあったー!!」「本当のハムみたいだ!」と」歓声をあげます。そうしてさらに燻煙したブロックを70度の温湯に入れ、加熱処理を2時間行います。本格的なハム作りです。無事に完成となるのでしょうか?

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燻煙後温湯で2時間殺菌

待ち時間には農家の講話も
加熱処理2時間の待ち時間の間に、子どもたちは上高井郡高山村の酪農家、前田祥子さんと宮川恵子さんから酪農の仕事の話しを聞きました。飼育の際の衛生管理のこと、酪農農家が育てる家畜を愛情をもって育てていることなど、これまで知らなかった話しです。

子どもたちからは「1日どのくらいのおっぱいがでるのか」「どの位で大人になるの?」など、質問が飛び交いました。「人間は動物たちから命をもらって生きている。命の大切さを感じていつも感謝しながら食べてね」と話す酪農家さんの言葉に、皆が真剣に聞き入っていました。

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そしておいしいハムができあがりました
加熱処理2時間後、今度は冷水で20℃以下になるまで20〜30分間冷却して、ついにハムの完成です。テーブルに完成したハムが並び、自分が作ったハムを見つけて「自分でハムを作るなんて考えられなかったのですごくうれしい」「早く家に帰って皆で食べたい」「目玉焼きとハムでごはんで食べたい」「パンにハムとチーズをのせて焼いて食べたい」とご満悦で、全員が自分のハムを袋に入れ持ち帰りました。一緒に参加した保護者も「貴重な体験ができて子どもたちも大人にとっても良かった。是非自宅でも作ってみたい」と同じく満足顔。

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学んだことを家族で分けあって
このようにして体験したいくつもの驚き、感動、嬉しさの積み重ねが、ゆくゆくは子どもたちの食に対する正しい知識を育んでゆくのでしょう。上手に作れたハムをその夜は食卓に並べながら、家族みんなで学んだことを共有しあってくれたことでしょう。


関連サイト:

 ・JA佐久浅間「きたやつハム」のホームページ

 ・内閣府の食育推進室が作成した食育に関する様々な資料

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