信州が生んだスローフードのひとつ凍りもち

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「凍りもち部会」副部会長の栗林みち子さん(左)と遠藤悠紀さん(右)


添加物など化学物質をいっさい使っていなくて、安心して食べられる加工品を求めている方も多いでしょう。長野県には冬のこの時期に、特定地域の風土を生かして作られるスローフードの「凍りもち(こおりもち)」という食品があります。

もともと郷土食のひとつですが、添加物を使わず、地元の素材を使って手作業で作られ、しかも保存がきく「凍りもち」は、赤ちゃんの離乳食や、いざというときの非常食、お年寄りの介護食としても召しあがっていただけます。頭を働かせればまだまだ食べ方は色々ありそうです。昔ながらの「知恵」が詰まったこの郷土食は、「安全な食」が求められる現代においては、よりいっそう価値あるものとして輝くかもしれません。

取材をしに伺ったのは長野県大町市常盤にあるJA大北の直売所「かたくり」にて、こだわりの方法で「凍りもち」づくりに励む「凍りもち部会」のみなさんです。年明けの1月7日からはじまった凍りもちづくりには、一冬で約2,100キロのもち米を使います。手の平サイズの長方形に切り分けられたもちは、おおよそ10個を一連にして合計6,000連が生産されます。

そのひとつひとつが、信州のお母さんたちの手作業によって作られていました。

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サクサクとした心地よい食感
副部会長の栗林みち子さんと遠藤悠紀さんにお話を伺いました。

原料のもち米はもちろん、県内でも有数の米の産地である大町市産の「もちひかり」です。毎朝、釜でもち米が焚かれ、午前中にもちつきが行われるのですが、「凍りもち部会」のもちつきは、昔ながらの方法で臼と杵を使います。

現在はもちつき用の機械も出回っているのですが、機械に頼らず杵と臼を使用する理由は、出来上がる凍りもちの「おいしさ」のためだといいます。臼と杵を使うことでもちの中に薄い層ができ、それがサクサクとした心地よい食感の凍りもちになるからです。

「機械では出来あがりが固くなってしまうので、もちに"サクッサクッ"とした食感がでないのよ」と栗林さんが教えてくださいました。

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完成するまでに2ヵ月かかります
もちはのして(伸ばして)食べやすい大きさの長方形に切り分けられた後、ひとつひとつ和紙で包まれます。このときに使われる和紙も「凍りもち部会」のお母さんたちの大切なこだわりのひとつ。部会のみなさんが自ら「安全なものを使おうよ」と、蛍光塗料を使用しない和紙をこのために特別に作ってもらいました。

自然なお米の甘さが感じられるこの凍りもちには、化学的な添加物などはなにひとつ入っていないため、「安心して食べてもらえますよ」と部会のお母さんたちは口をそろえます。

こうしてお母さんたちの優しさが詰まった凍りもちは、紐で一連にくくられた後、数日間冷たい水に浸されます。その後、夜のうちに風通しのよい場所に吊るされ、氷点下になる外気の下で凍らされます。この作業も身震いするような寒さの中で行われる、大変な作業です。

そして次の日の昼間、太陽の温度でゆっくりと解凍された凍りもちは、氷点下の夜がやってくると再び寒気にさらされて凍り、また翌日になって太陽に照らされ、解凍される――といった自然の「冷凍」と「解凍」作業のくり返しによって、ゆっくりと2ヶ月の月日をかけて乾燥させられてゆくのです。

この過程が凍りもちがおいしくできあがる一番のポイントです。こうしてもちから完全に水分が抜けきると、郷土が誇る伝統の保存食「凍りもち」が完成。そして完成から約1年間は「保存」が効きます。

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凍りもちは特定のところでしかできません
部会のお母さんたちは、小さな頃から凍りもちを食べてきました。「昔は農作業の"お子昼(「おこひる」=おやつといった意味)"に食べたものよ」

でもなぜ、凍りもちは大町市をはじめとした特定の地域でしか作れないのでしょうか? それはその地域に特有の風土に理由があります。

凍りもちづくりに最適な条件は主に4つ。

 1、1月〜2月に夜間の外気温がマイナス5度以下になること。
  (氷点下になることで、水を含んだもちが凍ります)
 2、降雪量が多すぎないこと。
  (多すぎると逆に気温が高くなり、もちが凍りません)
 3、風通しがよいこと。
  (もちを乾燥させるためには、風通しのよい場所が必要)
 4、お米がたくさんとれること。
  (米どころならではのお米を大切にする知恵から生まれました)

それではいよいよ大詰めです。凍りもちはどのように食べるのでしょうか? 最後に「凍りもち部会」作成のパンフレットをそのままご紹介します。かわいく楽しく、凍りもちの食べ方が学べますよ。

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『長野県のおいしい食べ方』で凍りもちのことを知ったのも、信州とあなたの縁、今も大地に息づく伝統の郷土食を、ぜひあなたも身近に活用してみてはいかがでしょうか?

凍りもちの販売について:

●現在直売所「かたくり」は冬期休業中ですが、ご注文は電話とファクスで受けつけています。直売所は3月中旬に再オープン。凍りもちは10個1連で1000円(予約は900円)で販売。予約は2月下旬まで。

(お問い合わせ)

JA大北直売所「かたくり」
ご注文はFAXでお願いします。
FAX 0261(23)3719


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または

JA大北ときわ支所
電話 0261(22)0209


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