伊那谷に残る黒田人形浄瑠璃を観てきました

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桜の花びらがそよ風に乗ってゆらゆらと舞いちる暖かな日差しに包まれた4月日曜日の昼下がり、県南部伊那谷は飯田市上郷黒田にある下黒田諏訪神社境内にある人形専用の四間×八間の舞台で、黒田人形保存会のメンバーを中心に「黒田人形浄瑠璃」が奉納公演されました。

はじまりは320年前のこと
この黒田人形浄瑠璃、芝居・舞台ともに国の重要文化財に指定されているものですが、その歴史は古く、元禄年間(1688〜1703)に、村の僧侶が近所の子どもたちに人形の芸を教え、それが村中に知れ渡り、この地方では毎年春の例祭に御神楽の替わりにこの人形が奉納されてきました。

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その後、人形浄瑠璃発祥の地とされる淡路島からプロの人形遣いが訪れ、「この地にこのようなすばらしい人形浄瑠璃がある」と驚き定住して人々に人形を教え、それによって芸はさらに本格的なものとなっていきました。

その間、特に娯楽のなかった時代、財のある農民はこぞって人形を買いあさり、それは身上を潰す程で、見かねた幕府から人形公演禁止令が出されたこともありましたが、しかしそんな中にあっても、黒田の人々は人形芝居を行い、城内に引っ張られていったこともあったそうです。

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それは神前に捧げる季節の行事でした
飯田・下伊那地区にあった30〜40程の人形浄瑠璃が時代と共に衰退していくなか、元禄年間からおよそ300年間、ただの一度も途切れることなく現在まで脈々と続いているのは、この黒田の人形浄瑠璃だけとなっています。1974年、黒田の人形舞台が国の有形民俗文化財に指定されました。

黒田人形は、人形を3人で操るもので、本家の淡路島でもやらなくなった「三番叟(さんばそう)」の技・芸をはじめ、独特なものが伝承されています。そしてこの技を受け継ぐべく、地元・飯田市の市立高陵中学校の人形部の生徒たちによってもその技の伝習がおこなわれています。

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人形浄瑠璃は神前に捧げる季節の行事としておこなわれてきました。今年も、お清めの塩を撒いて人形浄瑠璃のスタートです。



毎年必ずおこなわれています
はじめは聞いても理解できるか不安でしたが、太夫1人による3役もの声色を変えた芝居と、1体の人形を3人で呼吸を合わせながら人間さながらの動きをする様に、すっかり魅了されてしまいました。

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ぜひ来年はあなたもこの心安らぐ飯田の地で、黒田人形浄瑠璃を観覧してはいかがでしょうか。黒田人形浄瑠璃の定期奉納上演は、毎年4月の第2土曜日の午後7時からと日曜日午後1時からです。また毎年8月に飯田市でおこなわれる飯田人形劇フェスタでも人形浄瑠璃が演じられる予定です。


参考サイト:

 ・黒田人形座

 ・いいだ人形劇フェスタ2010

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