新年を目前にして、お正月用品をどっさりとまとめ買いする人も多いと思いますが、その買い物の中に、しめ縄飾りは入っていませんか? 『しめ縄は買うもの』と思っている方、チャンスがあればしめ縄づくりに挑戦してみるのはいかがでしょうか。自分で作ったしめ縄はまた格別ですよ。良い年になる予感がプンプンしてくるから不思議です。多少の不恰好さもご愛嬌ということで。
ここ長野県北部・長野市豊野町では、県内でも早くからマコモタケの栽培がおこなわれているところのひとつですが、肥大した茎の食用部分を食べるだけでなく「通常捨てる葉っぱもなにかに利用できないか」としてはじめられた、マコモの葉を使ったしめ縄づくりが、今年もJAながの女性部豊野町支部のメンバーにより行われたので参加しました。
マコモのしめ縄で厄をはらう
しめ縄づくりには通常"藁(わら)"を用いますが、今回しめ縄づくりで用意されたのは、この"マコモ"の葉っぱ。しかし本来のしめ縄はマコモのしめ縄かもしれません。かの出雲大社の太いしめ縄はマコモを編んで作られています。
マコモは「真菰」と書きます。イネ科マコモ属の大型多年草で、日本列島では古代から神事に使われてきましたし、最近では「マコモタケ」として、根に近い部分の茎をやわらかく筍状に肥大させた茎の部分が食用にされていますし、その種子は日本でも「菰米」として、北米大陸では「ワイルドライス」として古くから先住民の食料にされていました。
簡単そうに見えるけれど
しかしこの大地のスピリットを集めたマコモの葉、藁に比べて幅が広くまるで葦の葉を長くしたもののようで、なんとも扱いづらいのですが、そんな葉に時々水分を含ませて、掌の中でうまくねじれるよう、さらに乾燥して葉が破けるのを防ぐようにして、ピッタリと合わせた両掌をすり合せながらその中で、葉をねじっては反対方向へ寄り合せ、またよじっては反対へ寄り合せを繰り返して、縄をなっていくという基本の作業。
講師の、スルッ、スルッ、スルッとものの見事なあっという間の出来上がりに、見ているだけでは簡単そうな動きも、実際やってみれば出来上がったと目の前にかざした途端、巻き方が逆でほどけてしまったりと初心者には悪戦苦闘の連続。コツを掴むまではちょっとした道のりですが、昔の人はなんとも器用で、馴れてくるにしたがい、この掌から様々な生活用品等を生みだしたものだと実感するひと時にもなります。
さらに、太いしめ縄の部分は大人が2人がかりで立ち向かい、立ち上がってねじってみたり、しゃがみこんで抑えてみたりと、3つの太い束を寄リ合わせるのはかなり力の要るもので、汗をかきながらのちょっとした全身運動は、まさに寒いこの時期にはピッタリの作業。
「一年に一度の講習では、なかなか上達の速度もゆっくりで、何年作っていても上手くいかないわ」
マコモの香りで心もおだやかに
そうつぶやきながらも、一年ぶりにまたこの青々としたしめ縄が飾れるとあって、参加者も一様にホクホク顔。厄をはらうとされて神事に使われるだけあって、藁に比べてこの青みがかった色合いは、とてもすがすがしさを感じさせ、さらにマコモ特有の爽やかな良い香りが、鼻腔(びこう)から全身に広がり、心をおだやかにさせてくれるのです。
目を近づけて良く見れば、もちろん欠点はいろいろとありますが、しかし自分で作ったものには達成感もひとしおで、そんなしめ縄に向かって手を合わせれば気分も良く、きっと良い年が迎えられると感じられるはずです。
わたしは新しい年をこのマコモのしめ縄で迎えます。
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