うまいトマトジュースはトマト作りから違う

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「子どもの頃の夏ってこんなに暑かったっけ?」――十数年前を振り返りそんなことを考えていると、岐阜県と埼玉県で史上最高気温を更新したとの報せ。各地で続く猛暑日。この国の夏はいったいどうしたのでしょうか? 歩くだけで疲れてしまう暑さに「元気がいいのはセミの声だけ」では困りものです。

さて、そんな猛暑を乗り切るために愛飲する人も多いのがトマトジュース。汗だくで帰ってきてひらいた冷蔵庫に、トマトジュースがあったなら、そりゃあゴクリと飲み干してしまうでしょう。で今回は、この厳しい残暑を乗り切るためのトマトジュースの原料となる加工用トマトのお話を。

普通のトマトとの違い
「加工用トマト」というからには、当然ながら「普通(=生食用)のトマト」とは違いがあります。加工用トマトはその名の通り、トマトジュースやケチャップなどに加工されて使われるのですが、国産品はそのほとんどがトマトジュースとなります。

生食用がピンク系トマトといわれているものであるのに対し、加工用は真っ赤に熟す赤系タイプの品種が用いられます。しっかりと熟すため、リコピンのほか様々な栄養素が生食用よりも豊富に含まれているのが特徴です。

では、その加工用トマトはどのように作られているのか?

県内でも有数の産地であるJAあづみの管内を訪ね、生産者の鹿川 伝(しかがわ でん)さん(70)にお話をうかがってきました。

ベテランの畑を拝見
鹿川さんは加工用トマトの生産にかれこれ20年以上にわたって携わっているベテラン。冒頭の写真はその畑です。一見して分かるように、生食用が支柱を使って茎を上に伸ばすのに対し、加工用のトマトは地面をはわせるように栽培します。

こうすることでトマトたちは太陽の光をより多く浴びることができるからです。その上、鹿川さんの畑がある安曇野市や隣接する松本市などは日照時間が長く、昼と夜の温度差が大きいなど加工用トマト栽培に適した気候なのです。

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トマトにはじまり
トマトに終わる日々

加工用トマトの収穫はいまがピーク。真っ赤に熟したトマトが次々と収穫されています。そして「じつはこの収穫作業が一番大変なのだ」と鹿川さんは言います。

「1アールあたりで8トンも収穫できるから、大変な力仕事。担い手クラブのメンバーなどと協力して収穫しているよ」

鹿川さんは現在、朝4時に起床し、5時には畑に出ているのです。そして、夕方の6時まで作業を続けています。その言葉どおり「帰ったら風呂に入って寝るだけ」で、まさにトマト漬けの毎日。

トマトの声に耳を傾けて
ところで、鹿川さんのお話に出てきた「担い手クラブ」ってなんなの? と思われた方もいるでしょう。担い手クラブとは、加工用トマト栽培の作業を共同で行う目的で昨年発足したグループのこと。10人ほどのメンバーが分担して作業を行うことで栽培面積の拡大を目指しているのです。同時にまた、鹿川さんがクラブのメンバーに栽培指導行い、不足する加工用トマト栽培の後継者育成をも目的としています。

鹿川さんはトマト栽培のコツを「トマトの声を聞くことだ」と語ります。「トマトの木を見て何を欲しているか、何をしてほしいかが分かるようにならないといけない」と。鹿川さんは20年以上の経験の中、トマトの声に耳を傾け続け、いまトマトになにが必要かが分かるようになったのです。

おいしいトマトジュースになるtomato_truck.jpg
JAあづみの管内では、およそ50ヘクタールで加工用トマトが栽培されています。今年の計画では3958トンの収穫が見込まれます。収穫されたトマトは長野興農などのトマトジュース製造メーカーに全量が契約出荷されることになります。トマトたちがおいしいトマトジュースになる旅は、このようにしてはじまっていました。

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