新信州暦 朝夕の信州は秋の気配も深まって

eggplant.jpg昼間はまだ残暑も厳しく時折熱風も感じますが、朝夕はめっきり涼しく過ごしやすくなりました。昼間の熱気を感じながら、サッシを明けたまま寝てしまうと朝方寒さで思わずおきてしまうといったありがたくない体験ができるのもこのごろです。暑い盛りが過ぎると、夏の入道雲も秋のいわし雲にかわっていて、夕暮れにはよく澄んだ鈴虫の声が聞こえ、食卓にはおいしくなった秋ナスが並ぶようになりました。畑では冬に備える農作業もはじまっています。


天気も回復した先週のある日のお昼ごろに、松本市の南西に位置する東筑摩郡朝日村の畑を訪れました。いちばん暑い時間ですから、農作業をしている人の姿はまばらでした。それでも、レタスの植えつけや野菜への散水作業、加工用のトマトの収穫を汗だくになりながら行っている人の姿をときおり見かけました。mushibord.jpg畑の中の道を進んでいくと、珍しいものを見つけました。棒に串刺しになっている黄色い板状のものです。近寄ってよく見ると「ムシボード」と書かれていて、板には小さな虫が沢山くっついていました。今ではほとんど見かけなくなりましたが、昔、台所などにぶら下げハエをくっつけて捕った「ハエ取り紙」と同じ要領で、野菜に飛んでくる害虫などを捕獲する板でした。最近はこうした虫をつかまえるための粘着板が広まってきているようです。粘着版には黄色いものと青いものがあり、黄色の粘着版には黄色を好むアブラムシやハエの仲間たちが、青色の粘着版にはアザミウマという小さな虫が集まるのだとか。安心で安全な農産物の生産が言われていますが、薬品を散布して虫たちを一掃するのではなく、粘着版を利用することで農薬の使用を大幅に減らし、しかも作業の省力化にもつながっているのでしょう。


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子どもたちがわいわい騒ぎながら作業をしているところを通りかかりました。寄って行って話しを聞くと、そこは食育の一環で稲や野菜などを作っている小学校のスクールファームでした。ちょうど4年生が育てたキビ(地元では「ほうき草」と呼んでいました)を収穫しているところです。やや収穫時期が遅れたとのことで、キビは小学生の背丈の1.5倍ぐらい(170センチ前後)に育っています。「高くて取りにくい」などど話しながらも、子どもたちは一生懸命です。このキビから、実を採り除いて天日干しにし、しっかり水分が抜かれると、いわゆる「箒(ほうき)」の原材料になります。地元のお年寄りに教わりながら、子どもたちは11月ごろに箒作り体験を行うのです。電気掃除機が普及して、あまり使われなくなった箒ですが、珍しさもあってか結構「はける」とのことで、地元のJA祭などのお祭りで販売しているそうです。

uenaoshi.jpg朝日村の田園地帯ではネギの植えなおし(植え替え)をしている光景も見かけました。種類は伝統野菜の「松本一本ネギ」とのことで、ネギの白い部分を増やし、甘くておいしいネギを作るために植えなおしするのだとか。植えなおしは収穫までの間の7月下旬から8月にかけて年1回行うそうです。近ごろは農作業を見て季節の移り変わりや変化を感じることが少なくなってしまいましたが、ネギの植えなおしには、季節の移ろいを感じさせる風情が残っています。


youinoichi.jpgさて、今週末の県内の話題をお伝えしておきますと、南信の飯田市街で市内の農産物等を通じて市内各地を結び、活性化につなげる目的でスタートした生産者直売の野菜朝市「まち・むら結いの市」がはじまっています。今年で6回目。基本的には月の第2土曜日、午前9時から午後11時までの2時間で、飯田市銀座2丁目のサスタマ商店さん前の特設会場で行われてます。次回の朝市は9月12日です。機会があるなら、ぜひ足をお運びください。

saitokinenfes.jpg先日の日曜日には、長野市にある県信濃美術館で開催中の「〜トトロの森を描いた人〜男鹿和雄展」(最終日27日)が、開催期間中最後の休日とあってか大勢の人でにぎわいました。これにはJA長野県グループも応援しております。混雑ピーク時は約1000人の列が作られました。お疲れさまです。また松本市では8月17日〜9月9日まで「サイトウ・キネン・フェスティバル2009」が行われております。今年は小澤征爾さんが1985年の新日本フィルハーモニー以来、初めて松本で現代の作曲家のなかで天才と謳われるブリテン作曲『戦争レクイエム』を指揮します。

agrifes.jpgいよいよ信州に、芸術の秋、スポーツの秋、そして実りの秋がやってきます。今年の夏の厳しい気象条件の中でも、信州の農産物がおいしく実ってくれていることを祈りたいものです。

top-090826_small.jpg*巻頭のカバー写真を入れ替えました。ネギの植え直しを行う農家さんです。場所は松本市野溝、時間は午後三時頃。前年の秋に種をまき、一冬越して「きネギ」と呼ばれる時期(翌年の春4月中旬頃)に定植をし、7月下旬頃から8月のこの時期に、植え直し(植え替え)を行います。定植してあるネギの横に畝を作り、ネギを抜き取って畝に角度がつくように斜めに並べ、ネギの白い部分と青い部分の境目まで土を寄せます。この後何回かの土寄せを行うと、白い分が長く、曲がった松本一本ネギに育つのです。


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summernightsky.jpg今日26日は旧暦の7月7日、七夕の節句です。いろいろ人間界の都合でこれまでも七夕がありましたが、今日の七夕が伝統的な七夕であります。晴れているので夜空の星もきれいに見えるでしょう。中天近くの天の川あたりにひときわ輝く3つの星が見えるはずです。夏の大三角と呼ばれること座のベガ、はくちょう座のデネブ、そしてわし座のアルタイルです。よけいなことを考えないで夜空を眺めるのにふさわしい季節となりましたね。明日27日は上弦の月。

dragonfly.jpgそして28日は二十四節気のひとつの処暑の2番目の候、1年を72の気候に分けたときの41番目の候で「天地始めて寒し」の日。空は高く、青い空に秋の雲が浮かびはじめています。昼はまだ暑いかも知りませんが、天も地もクールダウンしつつあり、過ごしやすい日々がしばらく続くでしょう。霧のなかから陽が昇る信州の高原は、訪れる人の数も減って、たくさんのトンボたちが空を舞い、ススキも伸びて、秋がぐっと深まりつつあって、ひとりで静かに風の声を聞きながら物思いにふけったりするのには最適の季節です。

vegetables.jpg8月31日はなんの日かわかりますか? 「野菜の日」です。なんで野菜の日かは、恥ずかしくていえません。1983年(昭和58年)に全国青果商業協同組合連合会が野菜の栄養価やおいしさを見直してもらおうと制定した日だそうです。おいしくなった秋のヤ・サ・イをたくさんめしあがれ。

shinshu_miso.jpgその翌日はもう9月。9月1日はいわゆる「二百十日」の日。立春の日から数えて210日目。江戸時代あたりから、八朔(旧暦8月1日)や、二百二十日とともに、農家の三大厄日とされ、嵐が来ると恐れられるようになったが、今では根拠はないとされていますけれど・・・。9月1日はまた関東大震災の日です。1923(大正12)年9月1日午前11時58分に発生した日本の歴史を変えた大地震が起こりました。長野県は被害をほとんど受けませんでしたが、関東地方の味噌蔵がほとんど壊滅したために、救援物資として信州から味噌が送られたことがきっかけで、信州味噌の味と名前が一気に拡大したと、信州の味噌屋さんは話しています。


anomnight.current.small.gif「エルニーニョ現象は冬までは持続する可能性が高い」と気象庁が発表したのは7月のことでした。沖縄地方、九州・中国地方で豪雨があったり、梅雨明けした直後から梅雨のような状態が続いたりと、今年の夏はさまざまな気象異変が続きました。こうしたことはエルニーニョ(神の子)と呼ばれる自然現象と関係がある可能性が強いです。そこでエルニーニョとはなにかをもう一度復習しておきましょう。最近ではエルニーニョは「エルニーニョ・南方振動」という言葉で表現されるようになりました。ウィキペディアにはこう書かれています。

エルニーニョ・南方振動(-なんぽうしんどう、英語:El Niño-Southern Oscillation、ENSO、エンソ)とは、大気ではインドネシア付近と南太平洋東部で、海面の気圧がシーソーのように連動して変化し(片方の気圧が平年より高いと、もう片方が低くなる傾向にある)、海洋では赤道太平洋の海面水温や海流などが変動する自然現象の総称。大気に主眼をあてた場合には単に「南方振動」と呼ぶこともあり、一方、海洋に着目する場合には「エルニーニョ現象」(もしくは、単に「エルニーニョ」)と呼ばれる場合がある。エルニーニョ現象と南方振動は、当初は別々に議論されていたが、研究が進むにつれて、両者が強く関係していることが明らかになり、「エルニーニョ・南方振動(ENSO)」という言葉が生まれた。

赤道の下あたり一帯の太平洋の水の温度が高くなって東にむかつて移動しはじめるとそれに連動して海面の気圧が変化し、太平洋の北部では海面の温度が低下し空気が冷えて、太平洋のまん中で冷たい空気と暖かい空気がせめぎ合いとなり、その間を日本列島の上を通って流れるジェット気流、ハワイなどでは貿易風と呼ばれる風が強くなり、ジェット気流はアメリカ大陸西海岸近くで上下ふたつに分かれるなど、ひとつの現象がつぎからつぎへと新たな自然現象を引き起こして地球全体の気象に影響を与えているのです。エルニーニョはとりわけ日本列島を含む地球の北半球の冬に与える影響がとても大きいとされます。

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いったいエルニーニョ・南方振動がどんな気象変化をわたしたちに与えるのかははっきりとはわかっていません。今年起こっているエルニーニョ・南方振動によって、オーストラリアなど地球のさまざまなところに干ばつが起きて、農業危機なるものを引き起こしつつあります。日本列島の東北地方で今年梅雨明け宣言が出されなかった今月の14日、気象庁は、「エルニーニョ現象」が太平洋高気圧の張り出しを弱らせた上、偏西風を南下させ寒気を呼び込んだのが、日本列島のこの夏の天候不良の原因と発表しています。ある気象学者は「エルニーニョが本格化している。今後もぐずついた天候が続き集中豪雨が起こる可能性がある」とか「今年の冬のあいだじゅうエルニーニョは強大化するだろう」と発言しています。今年の冬は暖冬になって冬物が販売不振に陥る可能性もありそうです。

indexarrow.gif 長野県の秋の特徴 長野地方気象台のウェブサイトより

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