ともかくも あなたまかせの年の暮 一茶
師走になりました。これからは文字通り年明けまで忙しい日々が続きます。12月に入って朝は零度以下と寒い日が続きますが、空気が澄んでいるせいで山の稜線がくっきりと見え、寒さを忘れるくらいに気分のいいマウンテンカントリーの初冬の景色です(上の写真は初冬の八ケ岳)。松本市の松本城(国宝)では、昨日、恒例の冬囲い(雪の重さや寒さから植物を守る)が行われました。
このところ秋から冬に向けた変化を各地で目にします。諏訪湖周辺では、木々の落ち葉や背丈をゆうに越える葦の枯草が秋の終わりをつげています。最近の寒気の影響で、山々にも雪化粧がみられ、車のフロントガラスには霜が凍りついて、走り出すまで時間がかかります。風通しの良い場所では北風の音が「ゴォー ゴォー」と寒さとともに運ばれてきます。今月は各地でスキー場のオープンがあります。
仕事で東京に出かけて帰ってくると、ただ寒いだけではないキリッとした空気に、「あぁ、長野の空気はいいな」と感じさせられます。よく晴れた冬の夜の信州は身を切るほどに冷え込みますが、月明かりをはじめイルミネーションなどの光がことのほか美しく見えます。郊外や夜遅くには、また山間部にいけば、満天の冬の星空の世界に引き込まれて平和を感じます。
この時期ならではのタイヤ交換風景もみかけられるようになってきました。雪道への準備、特に標高の高いところでは、朝晩道路が凍る可能性がでてくるからです。冬用タイヤへの交換を、汗をかきながら、自らの腕力を使い行う光景を目にします。
またこの季節の風物詩として、田舎の軒先では、自家用の干し柿があちらこちらで垂れ下がっています。昔は、どこの家にも柿の木があって、秋の終わりに柿の実をとったものでした。そのとき必ずひとつだけは柿の木に実を残したそうです。その残された最後の柿の実は鳥たちが食べたりしましたが、それはまた「柿の木の守り」だとも言われました。また春先までの長い期間目を楽しませてくれるシクラメンの花も、たくさん店頭に並びはじめています。そしてたくさんのきのこが出回るシーズンにもなりました。野菜の種類が減るこの季節にはきのこをたくさん食べて体に栄養を与えましょう。きのこをおいしく食べるためのJA中野市のきのこ料理のレシピが参考になります。
木曽町と東京農大の連携協定締結にあわせて、木曽地方の伝統漬物「すんき」をテーマにしたシンポジウムが先月末東京の同校の世田谷キャンパスで開かれました。赤カブの葉を、塩を使わないで乳酸発酵させる「すんき」は、最近の研究でアレルギー症状を抑える可能性をはじめさまざまな特徴や機能が解明されてきています。
飯田下伊那地方のそば打ち愛好会でつくる「飯田そばの会」は、特産化を目指している「信州大(しんしゅうおお)そば」(通常のそばよりも実の大きい四倍体のそば品種)の新そば祭りを開いて、特製の「鴨そば」を披露しました。飯田の新しい名物になるでしょうか?
飯田市上村、飯田市南信濃村では、遠山郷に古くから各神社に伝わる霜月まつりもはじまりました。千年以上も昔に宮廷で行われた祭事を模した湯立が原形のまま行われている古式ゆかしい行事で昭和54年に国重要無形民俗文化財に指定され、12月を通して毎年多くの観光客で賑わいます。
*巻頭のカバー写真を入れ替えました。昨日(12月2日)に撮影した茅野市に広がる田んぼです。来年に備えての「野焼き」がおこなわれていました。野焼きは、畑の害虫を駆除し、来年のイネの生長を促すと言われています。また、草がのびて、そこに雷が落ちることによる火災を防いだりもしてくれます。農家はこのほか冬支度として、農機具の整理をしたり、畑を耕したり、大根を洗って干し、漬物の準備など行なっています。後ろの山々の背後にそびえる八ヶ岳も、すっかり雪化粧をしていました。
●ここ数日1日に1分ずつ日の出が遅れていっています。長野市の今日の日の出は6時42分でした。日没は午後4時32分。午後5時には青い夜がベールのように降りてきます。西の空にひときわ明るい星がふたつ輝いていることでしょう。宵の明星である金星と、木星です。このふたつの星は太陽と月をのぞけば夜空のなかで最も明るく輝く星として知られています。
明日4日は日本のスキーのふるさととされる1976年下高井郡野沢温泉村に野沢・日本スキー博物館が開館した日です。野沢温泉村にスキーが伝えられたのは、明治45年、1912年のことで、信州のスキーの歴史はここからはじまりました。
6日の土曜日は上弦の月。7日は二十四節気のひとつ「大雪(たいせつ)」です。暦便覧には「雪いよいよ降り重ねる折からなれば也」とあります。本格的な冬の到来で、体を温めるものがほしくなります。この日、上伊那郡宮田村(みやだむら)では、「中央アルプス山ぶどうの里ワイン祭り」が開催されます。宮田村の山ぶどうワインは「紫輝」といい、中央アルプス山麓宮田村の栽培農家が丹誠込めて作ったヤマソービニヨン種を醸造して作られたオリジナルワインで、ほのかな山ぶどうの香りと、カベルネのもつ豊かな味わい、さらにアルプスの嶺々が夕焼けに染まる様に赤紫に輝く色あいが特徴のワインです。さらに宮田村では、このワインを使用して調理した紫輝彩丼(しきさいどん)という丼御膳を村内12の店舗で味わうこともできます。
長野県の冬の特徴 長野地方気象台のウェブサイトより